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レストラン訪問記:奈良市(奈良駅)「アコルドゥ」(★)

秋の奈良といえば、個人的には正倉院展ははずせず、そのついでにこちらで食事を楽しんできました。大通りから一本入った場所にあり、思いがけない発見もあったりして収穫が多い訪問となりました。


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お店外観と表札

奈良といえば、関西に初めてやってきたミシュランの調査対象地域として以前は紙媒体で評価が出ていましたが、ミシュランの退潮に伴い、最新版はWebでの評価のみというある意味屈辱的な扱いを受けている、全国でもまれに見る受難の地であります。

そんなミシュランから失礼な扱いを受けていても、美味しいお店はどんどんできているようで、今回こちらに伺って、そのレベルの高い料理を賞味できて、良い出会いだったと思いました。また、美食とは関係なく、奈良に流れているゆっくりとした空気感も変わらず好きです。私にとってはまさにまほろばの地です。

このように記事作成時に書きましたが、最新情報として、来年5月にミシュラン奈良2022特別版が発刊されるとの発表がつい先日ありました。こちらの評価も含めて楽しみです。


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テーブル越しの眺め

御覧のように、卓上にはテーブルクロスがないカジュアルな仕様です。また、椅子はやや小さめで、肘掛けがないのが少し残念でした。

私の知人に言わせると、スペインのモダンスパニッシュ「ムガリッツ」のお料理を見事に再現しているお料理とのことでした。

ムガリッツに行ったことがない私にはその言葉の真偽は当然分からないのですが、全体として洗練された、美味しいお料理だったと思います。あくまで私の主観ですが、二つ星狙っていると言っても、恥ずかしくない高いレベルのお料理だと思います。


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卓上のナプキンと大和橘水

さて、卓上に無造作に置かれたナプキンが、テーブルクロスのない卓と相まって、これまでのガストロノミーとは違うという主張をしているように感じました。そして、最初に提供されたのが、食前酒ではなく、日本最古の柑橘という大和橘の葉を煮出したお水でした。柑橘というよりは、薬草の風味がしますが、自然な香りから始まる食事は悪くないです。


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グラスカヴァ

飲物メニューは提示されませんでしたが、サービスの方が最初に飲物を聞きにきます。ペアリングも魅力的ではありましたが、ランチの後にまだ用事があったことから、アルコールは控え目にして、食前酒だけ頂くことにしました。

グラスのカヴァは一種類とのことで、カクテルについて尋ねましたが、特に用意はないようでした。それでも、御提案いただいたカヴァは、繊細かつ濃厚でシャンパンにひけをとらない美味しさで満足できました。


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旬と結崎ネブカ
シェリー風味の“ヌタ”


結崎ネブカと軽く炙った旬の鰹のお刺身を合わせたマリネ料理でした。つけ合わせは、鰹の上のマイクロネギ、辛子のチップス、シェリー酒を使い乳化させて作ったというぬたです。

最近流行りの和食シリーズの一皿がここでも提供されたという感じがしました。これも、洋皿に盛られた和食でしたね。

やや生臭さを感じますが、いい塩加減で旬の戻り鰹を美味しく頂けました。固有種というネギの結崎ネブカが美味しいです。シェリー酒を使ったぬたも、酸味が抑えめで品が良く、いいお味でした。


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全粒粉のパン

ここで最初のパンが提供されました。温めて提供されます。全てのパンが熱々での提供でした。その姿勢は素晴らしいですね。

合わせて提供されたのは、アンダルシア地方のオリーブオイルです。もちろんこちらも良いお味でした。

パンは全粒粉ですが、独特の製法でしょうか、単純に焼いただけとは違い、もちもちに焼かれていて食べやすく、美味しかったです。


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かぼちゃの月 菊と胡麻

かぼちゃのスープが鰹に続きます。繊細かつ濃厚なスープで、美味しいです。菊の酢漬けも、味といいその慎ましい見た目といい、スープの良いアクセントになっています。酢漬けと共に、アマランサスというハーブも添えられていました。また、スープは満月を表現しているとのことで、美観も良いですね。

さらに、満月にかかった雲のような白い筋のトリュフソースが良い香りで、スープをワンランク上げてくれていました。高知の「primavolta」さんで頂いたのと同じ南瓜のスープで、スープの質として拮抗していましたが、こちらの方がトリュフソースがあったおかげで、一歩ぬきんでて上をいった印象でした。一つ星の洗練を感じた一皿でした。


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秋の実りと生きるモノ(鶏と豚のテリーヌ)

大和肉鶏と大和ポークのテリーヌで、生きているものの象徴とのことです。梨のピュレ、はちみつ、ドレッシング、砕いた木の実、栗が添えられています。

サラダの下に隠れているテリーヌですが、上質でとても美味しいです。甘いソース類が多いのですが、いずれも自然のものなので優しくて、いい調和をもたらしてくれていました。


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玉ねぎパン

全粒粉のパンがなくなった後は、お代わりを問われることなく、温かいこの玉ねぎパンが置かれます。ガストロノミーレストランのサービスとはそういうもの、いちいち聞いたり、あるいは聞きもせずスルーしたりといったことはありえないのです。もちろん、当たり前と思うのも違うと思うので、きちんと各種パンを準備して提供するお店の姿勢は素晴らしいとほめたいと思います。このパンも、玉ねぎがほのかに香る美味しいパンでした。


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大和まなのジェノヴェーゼ
温かなミルク


ジェノベーゼパスタが提供されました。料理に変化があって楽しいですし、合間にパスタを提供できるのも、自由なモダンスパニッシュならではで良いと思います。

もともと細麺が好きですし、良いお味でしたので、セモリナ粉100%で、素麺と同じ製法で作られたというパスタを使ったこちらのお料理も好きでした。麺の歯触りが良くて美味しかったです。奈良・葛城高原産のモッツァレラチーズも温かくて優しい風味をもたらしてくれて良いアクセントになっています。

ただ、丁寧な仕上げに時間がかかるでしょうから難しいとは思いますが、提供の時点でややぬるくなっていたのは残念でした。

また、そうめんと同じ製法と言いながら、質問をすると、そうめんの製法を知らなかったようで、しどろもどろになってしまったのはいただけませんでした。しれっと知ったかぶりするよりは誠実さがあるとも言えますが、説明する以上は、そんな複雑な工程ではないのですから、最低限のことは知っておいて欲しいと思いました。


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ソパ・デ・アホ
魚のロースト


魚は、キアラ(アオハタ)のローストでした。皿をしっかり温めて提供してくれました。

スペインの郷土料理、「ソパ・デ・アホ(=ニンニクスープ)」の現代的解釈という形にして、魚料理として提供されていました。すなわち、スープにパンくずや卵黄を入れるのがオリジナルの形とのことでしたが、ここでは、大和まなを使った緑色のパン粉と玉子を魚の皮目のところに塗ることでその風味を取り入れて、たっぷりめのニンニクスープがソースも兼ねるようなお料理に仕上げられていました。スープはニンニクだけではなく、チョリソーの出汁が出ていて、味わい深かったです。

お魚については、ボリュームがありながらしっとりとした火入れが施されていて、旨味がしっかりあり美味でした。「Uozen」で感動した魚はマハタでしたが、似た系統のお魚で、思い出していました。スープも出汁がしっかり出ていて、旨味たっぷりで良かったです。郷土料理風でありながら、繊細かつ美味な一皿で、それら背反する要素が同居していて素晴らしい一品でした。このお料理で、二つ星が狙えるお店と感じた次第でした。


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バターパン

第三のパンは、バターパンとのことでした。こちらも提供時、本当に熱々でした。ハイジの白パンのイメージ、あるいは肉まんやあんまんの生地といっても良いかもしれません。白米が美味しいように美味しいのですが、残念ながらバターの要素はどこにも見出せませんでした。


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サフランのアロスと大和肉鶏
深まる秋と景色


メインは大和肉鶏という鶏肉を使った料理でした。つけ合わせとして、奈良県大宇陀の今が旬というサフランと、奈良県産のらっきょうの酢漬けが添えられていました。

鶏肉は、硬いというか歯応えある身質です。こちらは、鶏肉を焼いただけのお料理としか受け取れず、とびきりの旨味を感じたということもなかったので、正直なところ凡庸な料理と感じて感動は全くありませんでした。


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実り、終わりゆくもの。

自然に熟して落ちたという柿を味わい、楽しむためのデザートです。左にひかれているソースはサワークリーム、アイスクリームは白味噌と柚子の風味とのことでした。

全体を食べ終えると、柿のタルトを食べた食後感になるとの説明があったが、最後に納得できました。「タルト」のパーツとなった、構成要素の柿のスイーツ達もそれぞれに美味しかったです。お洒落な趣向が好きでした。


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月ヶ瀬のお茶三種

こちらは食後のお茶にも力を入れているようで、特に奈良県月ヶ瀬のお茶類(緑茶・ほうじ茶・春摘み新茶の紅茶)については、茶葉まで見せてくれて説明をしてくれたので、力を入れているのかなと思っていました。

ただ、お店で栽培しているハーブを管理している滋賀県の方が送ってくれるというハーブを使ったフレッシュハーブティーがあるとのことでしたので、迷わずそちらをお願いしました。


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フレッシュハーブティーと小菓子(奈良県産ブルーベリーの焼きマシュマロ)

「Uozen」以来となる本物のフレッシュハーブティーで大満足できました。香りが強く、美味しいです。ひだをつけたような加工を施したカップでしたが、飲み口が薄くて飲みやすかったです。

お代わりをお願いしましたが、一杯のみとのことでした。どうしてもということならば、追加料金を払えば良いのでしょうが、どうしても潤沢に提供してくれるフランスでの美食体験を思い出してしまうので、そのあたりにはどうしても不満をもってしまいます。

小菓子は一つだけで、ブルーベリーのマシュマロを軽く焼いたものでした。甘みが強めですが、優しい食感で美味しいです。

食事を終えて、基本的に満足できたのですが、いくつか気になった点を挙げておきます。

まず、サービスの中に体臭が強い方が一人いて、サービスから外せとは申しませんが、客の前に出すのであれば、きちんと消臭対策をして、ソムリエやシェフのチェックをパスする必要があるでしょう。せっかくの美食を楽しむ場で、皿を持ってくるたび、下げるたびに、その体臭をかがされる客の身になって欲しいものです。客に対して強い香水をつけての来店を遠慮するように要請するお店があるように、サービスマンに体臭をさせないことは、最低限守るべき店のマナーでしょう。これは強くお願いしたいと思いました。次にも同じ思いをしたら、三度目の訪問はないでしょう。

一枚ずつ、次に出る料理をサービスが開けていくカードタイプのメニューは、客が次に何か出てくるか分からず、サプライズになって、面白いのですが、サービスマンが毎回カードを触るので、どうしてもカードが曲がったり、汚れたりしてしまうことがあって、あまり良い気がしませんでした。また、コロナ禍の昨今、接触回避の観点からも、このスタイルは今一つよろしくない印象を持ちました。

最後は、川島シェフが出てきてくださり、ソムリエール(もしかしたらメートルドテル)と共にお見送りしてくれて、感じが良かったです。

この時に少しお話する機会がありましたが、ミシュランの星を意識するかという問いに対して、頑張りますとのことでしたので、星は意識するではなく意識されているように感じました。短い会話でしたが、シェフの謙虚な姿勢が垣間見えて、好感が持てました。

また奈良市界隈で食事をする機会があれば訪れたいと思いつつ、気持ち良くお店を後にしました。


(いただいたもの)

ランチコース(一種類のみ)

飲物
・ 食前酒:グラスカヴァ
・ お水(フリー)


ウェルカムドリンク:大和橘水

旬と結崎ネブカ
シェリー風味の“ヌタ”
(鰹のマリネ)

全粒粉のパン アンダルシア地方のオリーブオイル

かぼちゃの月 菊と胡麻(南瓜のポタージュスープ)

秋の実りと生きるモノ(鶏と豚のテリーヌ)


玉ねぎパン

大和まなのジェノヴェーゼ
温かなミルク
(ジェノベーゼパスタ)

ソパ・デ・アホ
魚のロースト
(アオハタ)

バターパン

サフランのアロスと大和肉鶏
深まる秋と景色

実り、終わりゆくもの。(柿のデザート)

食後のお茶(フレッシュハーブティー)と小菓子(ブルーベリーの焼きマシュマロ)

(以上の記載は、飲物、ウェルカムドリンク、パンとオリーブオイル、食後のお茶と小菓子、括弧内の記載以外は、頂いたメニュー表を転載したものです。)




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レストラン訪問記:銀座六丁目「スリオラ」(★★)

モダンスパニッシュを標榜する二つ星店へ。現在は交詢社ビル内に移転して営業されています。交詢社ビルというと昔(改築前)は一階にピルゼンというチェコビールを出すビアホールがありましたが、現在はあまりにこぎれいなビルになりすぎてしまいました。

さて、今回行った「スリオラ」について。二つ星ともなるとかなり期待は大きいのですが、今回の訪問でその期待に答えられるお店ではないことがはっきりとわかりました。

その点では収穫がありましたが、期待に比してあまりいい体験ができず残念な思いもまた強く残りました。ここはガストロノミーを楽しむ店ではありません。高い値段でスペイン郷土料理を味わうカジュアル店ですね。

お料理についてはスペイン料理としていただくと香り高い料理もあり、またデザートはとても完成度が高くて満足のいくものでしたが、シェフの力量については二つ星に値するものか大いに疑問がありました。

料理以外の点でも色々と気になりました。まず店の造りがよくないです。

入って左手が普通のテーブルがしつらえられたサル、右手が比較的大きめのカウンター席になっています。一人客は基本カウンター席に案内されるようで、当たり前のようにカウンター席に着席させられました。

この日は幸い客もほとんどおらず通るのはサービスマンだけでしたが、それでも食事中ずっと背後に人の気配がしていて全く落ち着いて食事がとれませんでした。これまでの経験からして、ガストロノミーレストランでの食事は心穏やかに落ち着いて食事できる環境があるのが基本でしたので、これにはとても違和感があり、それが最後まで消えることがなく、食事の楽しみが半減していました。

また、こちらのサービスもひどいものでした。シェフ、支配人それぞれの力量不足がそのままサービスの質に反映されていると考えましたがおそらくはずれていないでしょう。

シェフはカウンター奥で調理をしたり、差配をしているのですが、こちらへのあいさつが今ひとつちゃんとできない感じで伏し目がちだったりして、客商売で客の面前に出ている以上は開き直って自分の役割をきちんと演じきって欲しいと思いました。

またカウンターから見える奥の台の上に電話の子機が置かれていましたが、こちらの青いランプがずっと点滅を繰り返していました。客から見てどう思うか考えないのでしょうか。とても細かいことですが、客にくつろいでもらう、非日常を楽しんでもらう意識が低いことの一つの象徴のような事象と感じました。

サルとカウンター席がいわば別室になっているため、サービス上は二つの別のレストランが存在することになっていて、それぞれの専属のサービス責任者が存在することになります。支配人はサルのみを担当してカウンター側には全く来ないため、カウンター席は支配人の目の届かない状態で一人のカウンター専従のサービスマンにサービスが委ねられることになります。

そうなるとカウンター専従のサービスマンの質が高ければ問題ありませんが、この日カウンター専従だった女性サービスマンはおよそサービスには不向きの全く愛想も、コミュニケーション能力もない方で、こちらは各所で不愉快な思いをさせられました。

予約はおそらく店のサイト経由でしたが、注文を取る際に、(私が)コースを選んでいなかったので今選んで下さいというような言い方でコース選択を求めてきました。あたかもこちらのミスでコースを選んでいなかったような口ぶりに聞こえ、もしかしたらそこまでの意識はなかったのかもしれませんが、こちらにはそう受け取られかねない言い方で、口の聞き方を知らないのだなと思わずにはいられませんでした。そもそも店の予約サイトではコースを選ぶところなどなかったはずです。

またこちらではとても美味しいパンを提供してくれていましたが、パンの提供はすべてこちらが手でとる形をとっていて、初めての体験で驚きました。おしぼりが提供されているとはいえ、油がついているパンなのです。なぜサービスマンが皿に置くという普通のサービスができないのでしょう。その理由がわかりませんでした。スペイン料理とフランス料理でそれほどの違いがあるものでしょうか。

またこのサービスマンは基本的に私の真後ろに立っていて、こちらがわざわざ振り向かないと何かをお願いできないのでとても不便でした。客にサービスするのが仕事である以上、一人しかいない客であった私の視界に入るところに立つなど、こちらがストレスを感じないですぐに合図できる場所にいるべきでしょう。

最後のお茶はフレッシュのハーブティーでしたが、お代わりをシェフに所望したところ、この女性サービスマンはかったるそうにお代わりを作っている上、カウンターの中にしつらえられた冷蔵庫などの開け閉めもがさつでこちらの体に響いてきました。蕎麦屋「流石」でも同じ体験をしましたが、とても不愉快です。

このサービスマン、どうしてこの仕事をしているのか不思議な感じの人でした。おそらく英語ができるとか、どこかの学校出だとかそういうくだらない理由で雇われているのでしょう。基本的な対人関係についての能力(つくり笑顔でもいいので笑顔ができることだけで十分です)や相手を思う気持ちがない人間はサービスの仕事についていて欲しくないです。

その点でいうと、「ル・ボークープ」のおそらく学生アルバイトの若い女性サービスの方の方がはるかにサービスマンとして上だと思いました。(過去に勤めていたあるいは今勤めている)店の格とか、外国語能力とか、年齢とか客からしたらどうでもいいことです。

その日私自身はサービスを受けることがなかった支配人の力量に問題があると感じたのは、若い調理スタッフが厨房でできた料理をサルの方へ運んでもらうためにサービススタッフに声を掛けるのですが、その時彼は料理を載せた大きな盆を両手にもったままです。つまり若い調理スタッフの彼のつばがもれなくサルの料理には飛び散っているということです。一見の客でも瞬時に気付く失態のはずですが、これが当たり前のように何度も繰り返されているということはそのおかしさに気付いていないということで、サービスマンとしての意識が無いに等しいと思わずにはいられませんでした。シェフが目の前にいるところでそれを繰り返していますので、そこに気付かないシェフの意識の低さもまた同様に問題でしょう。

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最後に料理について補足すると、デザートは手作りのチョコ三種のサービスまで含めて素晴らしいと思いました。デザートは、レモンの香りがしっかりとするソルベが絶妙の溶け具合で盛りつけられていました。とても細やかな仕事だと感じましたし、フロマージュブランのクリームやヘーゼルナッツも含めていいバランスでした。チョコレート三種も手間がかかるでしょうに、それぞれが個性ある味でとても楽しめました。

一方で、スペインらしくて美味しいと書いた料理については、確かに烏賊墨の風味が香るイカのお料理はスペイン料理らしい美味しさを感じました。

しかし、よく考えてみるとここでスペイン料理らしいという場合のスペイン料理とはモダンスパニッシュでもなんでもなくてスペインの郷土料理のことで、わざわざ高いお金を出してこの店に食べに来るまでもなく町場のスペインバルなどでいくらでも美味しいものを楽しめると思うと、この店に来る意味はほとんどないことに気付きます。

神戸で訪れた「カセント」でいただいた洗練されたお料理と比べるとやはりかなり劣ると思わずにはいられませんでした。

まずピンチョスとして出された米粉のチップスに振られた塩の量が尋常ではなく相当しょっぱい味に仕上がっていました。シェフは皿が出て行くときに目で確認していましたが、一度味も見直した方がいいでしょう。部下を信頼しすぎるのは危険です。

次にハガツオの刺身を使ったタルタルですが、焼き茄子のムースはいいのですがそこに入った焼き茄子が十分に水気を含んだもので、タルタルの味を薄めて料理を不味い物にしてくれていました。シェフのセンスを疑った一品でした。

奇しくも同じ二つ星の「フロリレージュ」でも焼き茄子を使ったアミューズがありましたが、「フロリレージュ」ではムースだけでしっかりと濃厚な味を演出していたのでこの点だけを見てもシェフとしての力量は歴然です。

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さらにいうと、パンコントマテと題されたお料理ですが、甘いワインのキューブであったり、酸味ある野菜であったりが盛られていてご覧のようになんとなく目には鮮やかでした。しかし、そこにかけられたアーモンドとにんにくで作ったという白いスープ(アホブランコ?)が何の味気もないもので食べただけでは何かわかりませんでした。さらには、その個性の薄いスープのせいか様々な味の食材がまとめられることもなくすべてがちぐはぐにそこにあるだけという感じになってしまっていて、この日一番痛い料理でした。また、これはスープを食べさせるための料理だったと思いますが、それを平らな皿に注ぐセンスもわかりませんでした。食材の一つとして使われていたカマスのお刺身単体では美味しかったので非常に残念でした。

訪れたのは平日でしたが、この日の客は自分を入れて三組だけで、同じく二つ星の「フロリレージュ」が平日でも満席の賑わいであったことを考えるとやはり店の勢いには明らかな差があると思わずにはいられませんし、それに理由があることも十分にわかった気がしました。


(いただいたもの)

ランチコース(メイン一皿)

ピンチョス(スナック):米粉のチップスとオリーブオイル入りミニパン

タパス:ハガツオと焼きなすのタルタル

前菜1:アホブランコ カマスで巻いたパンコントマテ

前菜2:アオリイカとホタテを詰めたピキジョピーマン イカスミのカルド

メイン(一皿選択で○を選択):

コチ(串木野産)の炭火焼き クルブラネロとピペラーダ

イベリコ豚プルマのプランチャ カボチャとイディアサバルチーズ

○スパイスを効かせた仔牛胸腺肉のフリッタ ロメスコソース

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サプライズ:小さなお米料理

デザート:レモンのソルベテ クリームチーズとオリーブオイル

お茶と小菓子:自家製チョコレート(三種)とフレッシュミントティー




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Ca Sento*** (Kobe) カセント(神戸・元町)★★★

少し遠い道のりをはるばる神戸へ。かつて住み暮らした地域でもあって、ここに至るまでに懐かしい地名がちらほら。震災をはさんでいるため大きく変わったものと思われます。

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最近台頭しつつあるモダンスパニッシュの旗手のようなお店なのでしょうか。神戸ミシュランに載ってから三ツ星のお店でずっと気になっていました。
今回たまたま予約が取れたこともあり、ほんの少しの変更はありつつもちゃっかり美食体験をしてきてしまいました。
店先ではちょうど季節のミモザの黄色い花がきれいに咲いていました。

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スタートはドラピエという作り手のシャンパン。"Blanc de noir"(ブランドゥノワール=赤いぶどうから作った白いお酒ということ)で、辛口で飲み応えがある美味しいシャンパンですね。「ドザージュゼロ(=補糖なし)」というのもまた酒飲みの心をくすぐります。

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今回、最先端の驚きの調理法といったものは見られず、むしろお野菜主体のコースの中で、地味な野菜ながら香り立つものがいくつもあって、それが一番印象に残りました。百合根(左写真のコーンの中)、牛蒡(中写真のスープの下)、玉葱(右写真の黒い棒状のもの)、赤葫(右写真の白皿の中)…百合根と牛蒡はピュレ状で、玉葱と赤葫はグリーシーニにしたりシートにしたりスナックのように焼いたものでした。こういうところにシェフの技を感じます。

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また、コース中盤にはタパススタイルで複数のお皿を同時に色々と楽しむことになるのですが、これもまた初めてで楽しい体験です。全く違ったそれぞれ美味しい食材の競演がすてきでした。ガスパチョ、鴨血のブダン、アブラメのモホソースなどなど。

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一番のヒットはタパスに入っていたフォワグラサンドと、熟成した?シェリー酒との組み合わせ。フランスでいうと"vin de paille"(ヴァンドゥパイユ)のような濃厚でいぶしたかのような深みある甘みのお酒。ほんの少量でしたが、味を楽しむ分にはこれで十分でした。右写真の琥珀色のワインがそれです。

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お昼は軽めに野菜がメインとなる少し変わった構成。
ご覧のお料理は下に調理されたお野菜がしかれ、上には色々な葉物があって、焦がしバターソースがかかっています。そこにサービスの方がエメンタールチーズの軽いソースをスープよろしく注ぐ趣向で、サラダ+スープのような不思議なお皿でした。
上の写真がソースを注いでいるところ。左が原形、右が葉っぱを食べ尽くした状態です。

野菜主体のコースはフレンチを食べ慣れた人だともしかしたら物足りないかもしれませんが、最近のヘルシー志向の潮流からするとこれもありなのかもしれませんね。

おじやがお料理の最後に出されるのですが、和食の〆の要領でしょうか。
スペインのお米料理というとやはりパエリヤですが、ここではおじや。
丁寧にだしをとったと思われる濃厚なビスク風のソースにたっぷりの甲殻類やたこなどとお米が入っています。上品かつ食べ応えのある味で、お代わりが自由です。

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美味しいのですが、3杯頂いて終わりにしました。適度なところでやめておかないと美味しい味が台無しかなと思ったので。とにかく濃厚で食べ応えがあるおじやでした。

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さきほど、フォワグラに合わせたシェリー酒について触れましたが、ワインはタパスに合わせて三種類ほどごく少量で出して頂いて、皿に合わせてマリアージュを楽しむとても良い体験になりました。
お値付けも本当に真っ正直な感じで、思っていたよりもはるかに低価格での提供でした。このワインのデギュスタッションコース?はソムリエの方とのおしゃべりから提案して頂いたのですが、お酒を楽しまれる方は色々な味が楽しめるのでお勧めです。

サービスは若い感じですが、きちんとしていますね。予約の時の電話の段階でとても感じが良く、良いお店なのだろうなと想像できました。実はお料理の知識が少し足りていないと感じる場面もあったのですが、まだお若い方なのでこれからさらに良いサービスできるようになっていくとよいなと思いました。

小さなサルのため、カウンター越しに料理人が立ち働く姿が見えるのですが、サルと調理場の連携がとてもよく、また調理場は気持ちよいくらい統率がとれている感じで、さすがと思いました。

最後、シェフにもごあいさつさせて頂いたのですが、5月に改装されて、一卓だけテーブルが増えるとのこと。またトイレが男女別になったり、調理場が大きめになってガラス張りで外から見えるようにするとのことでした。それから、こちらはこのクラスのお店では珍しくサルの様子が外から見えるのですが、手前のガラスのところがウェィティングスペースになるとのことで、この点も少し変わりそうです。

お野菜がメインだったこともあって大満足とはいきませんでしたが、お野菜の色々な香りを楽しむことができ、夜のメインはどんなものがたべられるのだろうと期待が高まったのも事実。
その点ランチはディナーへのうまく誘導する位置づけなのかなと思ったりしました。そう考えるとシェフは本当によく考えてメニューを組んでいるのだなとも思います。

質を落とさず、いいものを提供しつつ、値段は抑えめにして、それでもランチはランチなりの満足をしてもらう。なかなか難しいことですよね。
ディナーへの訪問はしばらく先になりそうですが、またの機会を楽しみにしたいと思いました。


(いただいたもの)

1.つきだし:百合根、松葉蟹、レモングラスなど入ったミニコーン(カレー砂にうずめて)

2.ピンチョス:ブリオッシュ生地、バルサミコ酢に漬けた新タマネギ、ほたるいか
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3.スープ:ごぼうのフラン、野生のルッコラ、焼いたホタテ半分入り

4.タパス
・ガスパチョ
・アブラメのモホソース(下に)空豆のピュレ
・赤ニンニクのテュイル、新タマネギばさみ、ルッコラ
・ブダン(河内鴨の血を使用)
・ブリオッシュ生地に載せたスペイン産アンチョビ
・フォアグラサンド
+焼き玉葱のグリッシーニ
+米粉と小麦粉のパン

5.メイン:サラダ+スープ(エメンタールチーズ)

6.海鮮おじや →えび、いか、たこなどたっぷり。濃厚なビスクスープ。

7.デザート1:りんごのコンポート(カラメリゼして)、ミントと青リンゴのアイス
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8.デザート2:はっさく、濃厚なミルクアイス
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プティフール:テュイル、マシュマロ、酒粕のトリュフチョコ、洋梨のコンポート入りチョコ
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お茶:フレッシユハーブティー(ベルベーヌ、レモングラス、カモミール)
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お酒(いずれもグラスで)
・シャンパン:ドラピエ(ブランドノワール)
・ワインのデギュスタッションコース:白、赤、シェリー(甘口)→いずれもスペインのもの
・シェリー酒(辛口)
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カセントスペイン料理 / 県庁前駅元町駅(JR)元町駅(阪神)


テーマ : こんなお店行きました
ジャンル : グルメ

ぷらてーろ(神楽坂)



神楽坂の裏路地を入ったところにまたもスペイン料理店ができています。場所は毘沙門天から北町にかけての裏路地になります。

古民家を改造したためか、入り口は普通の一軒家の引き戸で、京都の町家にありそうなアプローチ。
ご近所には同じようなピザやさんもできていて神楽坂の繁栄が偲ばれますね。
店内は現代らしいモダンかつシンプルな空間。中華の芝蘭と同じ臭いがします。

この日、ランチ利用でしたが、1時過ぎの入店のためかお客はあまりいなかったのですが、途中から女性中心に複数のグループが来店していました。

ランチメニューは標準値をわずかに下回るセットが充実。前菜、メインとそれぞれ四皿ずつほどから選択可能です。
他にはさらにリーズナブルな雑炊セットや、少し本格的なパエリヤランチもあります。予算とお腹の具合に応じてどうぞ、という感じでしょうか。

パエリヤランチは是非いただきたかったのですが、お二人からということなので、この日はランチセットを注文。
前菜は、魚貝類のマリネ(店の誤字あえて残します…)(写真下)、メインはチキンのトマトソース煮込み(写真上)。食後のお茶もついてきます。

値段が値段なので味をどうこう言いようもありませんが、値段の割には頑張っているそんな感じでした。
ただチキンは塩味がきつすぎますね。

それからどうでもいいサービスをするおじさんがなかなかしんどかったのです。この値段で文句を言う方が間違っているのでしょうか。
しかし、もう少し志欲しいところ。一応お金をもらって仕事しているのですから…。

店の中は新しく、飲み放題もあったり、パエリヤが食べられたりするので夜にまた一度来てみようかなとは思っています。


(いただいたもの)

ランチセット

前菜:魚貝類のマリネ(写真下)
メイン:チキンのトマトソース煮込み(写真上)
食後のお茶:紅茶

ラ・クッチャーラ(神楽坂)

神楽坂・毘沙門天のはす向かいにできた新しいビルの二階にあるスペインバル。本多横丁の入り口に立つビルなので、超好立地です。
最近スペインバルが神楽坂にもちらほらできているようです。

こちらはカウンター主体の小さいお店。お店の売りは鉄板を備えたカウンターになるのでしょうか。お料理もそこそこ揃っていて、スペインバルとしては最低限のアイテムはある感じでした。

この日はカウンターに座りましたが、座高が高い椅子で、少し落ち着きません。また、カウンターには冷房が直撃する場所が二つあり、落ち着いて食事、ということならテーブル席をお勧めします。

お料理はまずまずのできでしょうか。少し素人っぽさが残る感じがしなくもないのですが…。
有機野菜の鉄板焼きはお味はともかくも、お値段が少し張る感じ。また、飯蛸のフリットなどはイメージと違い少しがっかりでした。

ワインはボトルで数種類揃っていますが、カヴァがグラスで二種類しかないのは少し物足りない感じがいたします。

この日は一番辛いカヴァのボトルで始め、その後はメルローを使ったフランスの赤ワインをこれまたボトルでいただきました。この赤はとてもリーズナブルで楽しめました。

お盆の真っ最中でしたが、この日お店は満員。予約がしっかり入っていたようで、テーブル席を確保したい方は早めの予約が必要なように思います。
ただ、個人的には次回の訪問は微妙、な感じですね。店員さんは若々しく、みな丁寧ではありましたが。

次回神楽坂のスペインバルに行くとするなら、二、三軒隣のエル・プルポもしくは、毘沙門天の裏あたりの新店ぷらてーろあたりを目指してみたいと思っております。
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Author:VV George VV

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Michelin au moment de la
visite.

長期フランス滞在中、さる”グランドメゾン”(高級料亭)での午餐を契機に”ガストロノミー・フランセーズ”(フランス流美食)に開眼。
爾来、真の美食を求めて東奔西走の日々。

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* お店の名前脇の★はミシュランガイドでの星による評価(訪問時のもの)に対応しています。

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