レストラン訪問記:奈良市(奈良駅)「アコルドゥ」(★)
秋の奈良といえば、個人的には正倉院展ははずせず、そのついでにこちらで食事を楽しんできました。大通りから一本入った場所にあり、思いがけない発見もあったりして収穫が多い訪問となりました。


お店外観と表札
奈良といえば、関西に初めてやってきたミシュランの調査対象地域として以前は紙媒体で評価が出ていましたが、ミシュランの退潮に伴い、最新版はWebでの評価のみというある意味屈辱的な扱いを受けている、全国でもまれに見る受難の地であります。
そんなミシュランから失礼な扱いを受けていても、美味しいお店はどんどんできているようで、今回こちらに伺って、そのレベルの高い料理を賞味できて、良い出会いだったと思いました。また、美食とは関係なく、奈良に流れているゆっくりとした空気感も変わらず好きです。私にとってはまさにまほろばの地です。
このように記事作成時に書きましたが、最新情報として、来年5月にミシュラン奈良2022特別版が発刊されるとの発表がつい先日ありました。こちらの評価も含めて楽しみです。

テーブル越しの眺め
御覧のように、卓上にはテーブルクロスがないカジュアルな仕様です。また、椅子はやや小さめで、肘掛けがないのが少し残念でした。
私の知人に言わせると、スペインのモダンスパニッシュ「ムガリッツ」のお料理を見事に再現しているお料理とのことでした。
ムガリッツに行ったことがない私にはその言葉の真偽は当然分からないのですが、全体として洗練された、美味しいお料理だったと思います。あくまで私の主観ですが、二つ星狙っていると言っても、恥ずかしくない高いレベルのお料理だと思います。

卓上のナプキンと大和橘水
さて、卓上に無造作に置かれたナプキンが、テーブルクロスのない卓と相まって、これまでのガストロノミーとは違うという主張をしているように感じました。そして、最初に提供されたのが、食前酒ではなく、日本最古の柑橘という大和橘の葉を煮出したお水でした。柑橘というよりは、薬草の風味がしますが、自然な香りから始まる食事は悪くないです。

グラスカヴァ
飲物メニューは提示されませんでしたが、サービスの方が最初に飲物を聞きにきます。ペアリングも魅力的ではありましたが、ランチの後にまだ用事があったことから、アルコールは控え目にして、食前酒だけ頂くことにしました。
グラスのカヴァは一種類とのことで、カクテルについて尋ねましたが、特に用意はないようでした。それでも、御提案いただいたカヴァは、繊細かつ濃厚でシャンパンにひけをとらない美味しさで満足できました。


旬と結崎ネブカ
シェリー風味の“ヌタ”
結崎ネブカと軽く炙った旬の鰹のお刺身を合わせたマリネ料理でした。つけ合わせは、鰹の上のマイクロネギ、辛子のチップス、シェリー酒を使い乳化させて作ったというぬたです。
最近流行りの和食シリーズの一皿がここでも提供されたという感じがしました。これも、洋皿に盛られた和食でしたね。
やや生臭さを感じますが、いい塩加減で旬の戻り鰹を美味しく頂けました。固有種というネギの結崎ネブカが美味しいです。シェリー酒を使ったぬたも、酸味が抑えめで品が良く、いいお味でした。

全粒粉のパン
ここで最初のパンが提供されました。温めて提供されます。全てのパンが熱々での提供でした。その姿勢は素晴らしいですね。
合わせて提供されたのは、アンダルシア地方のオリーブオイルです。もちろんこちらも良いお味でした。
パンは全粒粉ですが、独特の製法でしょうか、単純に焼いただけとは違い、もちもちに焼かれていて食べやすく、美味しかったです。


かぼちゃの月 菊と胡麻
かぼちゃのスープが鰹に続きます。繊細かつ濃厚なスープで、美味しいです。菊の酢漬けも、味といいその慎ましい見た目といい、スープの良いアクセントになっています。酢漬けと共に、アマランサスというハーブも添えられていました。また、スープは満月を表現しているとのことで、美観も良いですね。
さらに、満月にかかった雲のような白い筋のトリュフソースが良い香りで、スープをワンランク上げてくれていました。高知の「primavolta」さんで頂いたのと同じ南瓜のスープで、スープの質として拮抗していましたが、こちらの方がトリュフソースがあったおかげで、一歩ぬきんでて上をいった印象でした。一つ星の洗練を感じた一皿でした。


秋の実りと生きるモノ(鶏と豚のテリーヌ)
大和肉鶏と大和ポークのテリーヌで、生きているものの象徴とのことです。梨のピュレ、はちみつ、ドレッシング、砕いた木の実、栗が添えられています。
サラダの下に隠れているテリーヌですが、上質でとても美味しいです。甘いソース類が多いのですが、いずれも自然のものなので優しくて、いい調和をもたらしてくれていました。

玉ねぎパン
全粒粉のパンがなくなった後は、お代わりを問われることなく、温かいこの玉ねぎパンが置かれます。ガストロノミーレストランのサービスとはそういうもの、いちいち聞いたり、あるいは聞きもせずスルーしたりといったことはありえないのです。もちろん、当たり前と思うのも違うと思うので、きちんと各種パンを準備して提供するお店の姿勢は素晴らしいとほめたいと思います。このパンも、玉ねぎがほのかに香る美味しいパンでした。



大和まなのジェノヴェーゼ
温かなミルク
ジェノベーゼパスタが提供されました。料理に変化があって楽しいですし、合間にパスタを提供できるのも、自由なモダンスパニッシュならではで良いと思います。
もともと細麺が好きですし、良いお味でしたので、セモリナ粉100%で、素麺と同じ製法で作られたというパスタを使ったこちらのお料理も好きでした。麺の歯触りが良くて美味しかったです。奈良・葛城高原産のモッツァレラチーズも温かくて優しい風味をもたらしてくれて良いアクセントになっています。
ただ、丁寧な仕上げに時間がかかるでしょうから難しいとは思いますが、提供の時点でややぬるくなっていたのは残念でした。
また、そうめんと同じ製法と言いながら、質問をすると、そうめんの製法を知らなかったようで、しどろもどろになってしまったのはいただけませんでした。しれっと知ったかぶりするよりは誠実さがあるとも言えますが、説明する以上は、そんな複雑な工程ではないのですから、最低限のことは知っておいて欲しいと思いました。


ソパ・デ・アホ
魚のロースト
魚は、キアラ(アオハタ)のローストでした。皿をしっかり温めて提供してくれました。
スペインの郷土料理、「ソパ・デ・アホ(=ニンニクスープ)」の現代的解釈という形にして、魚料理として提供されていました。すなわち、スープにパンくずや卵黄を入れるのがオリジナルの形とのことでしたが、ここでは、大和まなを使った緑色のパン粉と玉子を魚の皮目のところに塗ることでその風味を取り入れて、たっぷりめのニンニクスープがソースも兼ねるようなお料理に仕上げられていました。スープはニンニクだけではなく、チョリソーの出汁が出ていて、味わい深かったです。
お魚については、ボリュームがありながらしっとりとした火入れが施されていて、旨味がしっかりあり美味でした。「Uozen」で感動した魚はマハタでしたが、似た系統のお魚で、思い出していました。スープも出汁がしっかり出ていて、旨味たっぷりで良かったです。郷土料理風でありながら、繊細かつ美味な一皿で、それら背反する要素が同居していて素晴らしい一品でした。このお料理で、二つ星が狙えるお店と感じた次第でした。

バターパン
第三のパンは、バターパンとのことでした。こちらも提供時、本当に熱々でした。ハイジの白パンのイメージ、あるいは肉まんやあんまんの生地といっても良いかもしれません。白米が美味しいように美味しいのですが、残念ながらバターの要素はどこにも見出せませんでした。


サフランのアロスと大和肉鶏
深まる秋と景色
メインは大和肉鶏という鶏肉を使った料理でした。つけ合わせとして、奈良県大宇陀の今が旬というサフランと、奈良県産のらっきょうの酢漬けが添えられていました。
鶏肉は、硬いというか歯応えある身質です。こちらは、鶏肉を焼いただけのお料理としか受け取れず、とびきりの旨味を感じたということもなかったので、正直なところ凡庸な料理と感じて感動は全くありませんでした。


実り、終わりゆくもの。
自然に熟して落ちたという柿を味わい、楽しむためのデザートです。左にひかれているソースはサワークリーム、アイスクリームは白味噌と柚子の風味とのことでした。
全体を食べ終えると、柿のタルトを食べた食後感になるとの説明があったが、最後に納得できました。「タルト」のパーツとなった、構成要素の柿のスイーツ達もそれぞれに美味しかったです。お洒落な趣向が好きでした。

月ヶ瀬のお茶三種
こちらは食後のお茶にも力を入れているようで、特に奈良県月ヶ瀬のお茶類(緑茶・ほうじ茶・春摘み新茶の紅茶)については、茶葉まで見せてくれて説明をしてくれたので、力を入れているのかなと思っていました。
ただ、お店で栽培しているハーブを管理している滋賀県の方が送ってくれるというハーブを使ったフレッシュハーブティーがあるとのことでしたので、迷わずそちらをお願いしました。

フレッシュハーブティーと小菓子(奈良県産ブルーベリーの焼きマシュマロ)
「Uozen」以来となる本物のフレッシュハーブティーで大満足できました。香りが強く、美味しいです。ひだをつけたような加工を施したカップでしたが、飲み口が薄くて飲みやすかったです。
お代わりをお願いしましたが、一杯のみとのことでした。どうしてもということならば、追加料金を払えば良いのでしょうが、どうしても潤沢に提供してくれるフランスでの美食体験を思い出してしまうので、そのあたりにはどうしても不満をもってしまいます。
小菓子は一つだけで、ブルーベリーのマシュマロを軽く焼いたものでした。甘みが強めですが、優しい食感で美味しいです。
食事を終えて、基本的に満足できたのですが、いくつか気になった点を挙げておきます。
まず、サービスの中に体臭が強い方が一人いて、サービスから外せとは申しませんが、客の前に出すのであれば、きちんと消臭対策をして、ソムリエやシェフのチェックをパスする必要があるでしょう。せっかくの美食を楽しむ場で、皿を持ってくるたび、下げるたびに、その体臭をかがされる客の身になって欲しいものです。客に対して強い香水をつけての来店を遠慮するように要請するお店があるように、サービスマンに体臭をさせないことは、最低限守るべき店のマナーでしょう。これは強くお願いしたいと思いました。次にも同じ思いをしたら、三度目の訪問はないでしょう。
一枚ずつ、次に出る料理をサービスが開けていくカードタイプのメニューは、客が次に何か出てくるか分からず、サプライズになって、面白いのですが、サービスマンが毎回カードを触るので、どうしてもカードが曲がったり、汚れたりしてしまうことがあって、あまり良い気がしませんでした。また、コロナ禍の昨今、接触回避の観点からも、このスタイルは今一つよろしくない印象を持ちました。
最後は、川島シェフが出てきてくださり、ソムリエール(もしかしたらメートルドテル)と共にお見送りしてくれて、感じが良かったです。
この時に少しお話する機会がありましたが、ミシュランの星を意識するかという問いに対して、頑張りますとのことでしたので、星は意識するではなく意識されているように感じました。短い会話でしたが、シェフの謙虚な姿勢が垣間見えて、好感が持てました。
また奈良市界隈で食事をする機会があれば訪れたいと思いつつ、気持ち良くお店を後にしました。
(いただいたもの)
ランチコース(一種類のみ)
飲物
・ 食前酒:グラスカヴァ
・ お水(フリー)
ウェルカムドリンク:大和橘水
旬と結崎ネブカ
シェリー風味の“ヌタ”
(鰹のマリネ)
全粒粉のパン アンダルシア地方のオリーブオイル
かぼちゃの月 菊と胡麻(南瓜のポタージュスープ)
秋の実りと生きるモノ(鶏と豚のテリーヌ)
玉ねぎパン
大和まなのジェノヴェーゼ
温かなミルク
(ジェノベーゼパスタ)
ソパ・デ・アホ
魚のロースト
(アオハタ)
バターパン
サフランのアロスと大和肉鶏
深まる秋と景色
実り、終わりゆくもの。(柿のデザート)
食後のお茶(フレッシュハーブティー)と小菓子(ブルーベリーの焼きマシュマロ)
(以上の記載は、飲物、ウェルカムドリンク、パンとオリーブオイル、食後のお茶と小菓子、括弧内の記載以外は、頂いたメニュー表を転載したものです。)


お店外観と表札
奈良といえば、関西に初めてやってきたミシュランの調査対象地域として以前は紙媒体で評価が出ていましたが、ミシュランの退潮に伴い、最新版はWebでの評価のみというある意味屈辱的な扱いを受けている、全国でもまれに見る受難の地であります。
そんなミシュランから失礼な扱いを受けていても、美味しいお店はどんどんできているようで、今回こちらに伺って、そのレベルの高い料理を賞味できて、良い出会いだったと思いました。また、美食とは関係なく、奈良に流れているゆっくりとした空気感も変わらず好きです。私にとってはまさにまほろばの地です。
このように記事作成時に書きましたが、最新情報として、来年5月にミシュラン奈良2022特別版が発刊されるとの発表がつい先日ありました。こちらの評価も含めて楽しみです。

テーブル越しの眺め
御覧のように、卓上にはテーブルクロスがないカジュアルな仕様です。また、椅子はやや小さめで、肘掛けがないのが少し残念でした。
私の知人に言わせると、スペインのモダンスパニッシュ「ムガリッツ」のお料理を見事に再現しているお料理とのことでした。
ムガリッツに行ったことがない私にはその言葉の真偽は当然分からないのですが、全体として洗練された、美味しいお料理だったと思います。あくまで私の主観ですが、二つ星狙っていると言っても、恥ずかしくない高いレベルのお料理だと思います。

卓上のナプキンと大和橘水
さて、卓上に無造作に置かれたナプキンが、テーブルクロスのない卓と相まって、これまでのガストロノミーとは違うという主張をしているように感じました。そして、最初に提供されたのが、食前酒ではなく、日本最古の柑橘という大和橘の葉を煮出したお水でした。柑橘というよりは、薬草の風味がしますが、自然な香りから始まる食事は悪くないです。

グラスカヴァ
飲物メニューは提示されませんでしたが、サービスの方が最初に飲物を聞きにきます。ペアリングも魅力的ではありましたが、ランチの後にまだ用事があったことから、アルコールは控え目にして、食前酒だけ頂くことにしました。
グラスのカヴァは一種類とのことで、カクテルについて尋ねましたが、特に用意はないようでした。それでも、御提案いただいたカヴァは、繊細かつ濃厚でシャンパンにひけをとらない美味しさで満足できました。


旬と結崎ネブカ
シェリー風味の“ヌタ”
結崎ネブカと軽く炙った旬の鰹のお刺身を合わせたマリネ料理でした。つけ合わせは、鰹の上のマイクロネギ、辛子のチップス、シェリー酒を使い乳化させて作ったというぬたです。
最近流行りの和食シリーズの一皿がここでも提供されたという感じがしました。これも、洋皿に盛られた和食でしたね。
やや生臭さを感じますが、いい塩加減で旬の戻り鰹を美味しく頂けました。固有種というネギの結崎ネブカが美味しいです。シェリー酒を使ったぬたも、酸味が抑えめで品が良く、いいお味でした。

全粒粉のパン
ここで最初のパンが提供されました。温めて提供されます。全てのパンが熱々での提供でした。その姿勢は素晴らしいですね。
合わせて提供されたのは、アンダルシア地方のオリーブオイルです。もちろんこちらも良いお味でした。
パンは全粒粉ですが、独特の製法でしょうか、単純に焼いただけとは違い、もちもちに焼かれていて食べやすく、美味しかったです。


かぼちゃの月 菊と胡麻
かぼちゃのスープが鰹に続きます。繊細かつ濃厚なスープで、美味しいです。菊の酢漬けも、味といいその慎ましい見た目といい、スープの良いアクセントになっています。酢漬けと共に、アマランサスというハーブも添えられていました。また、スープは満月を表現しているとのことで、美観も良いですね。
さらに、満月にかかった雲のような白い筋のトリュフソースが良い香りで、スープをワンランク上げてくれていました。高知の「primavolta」さんで頂いたのと同じ南瓜のスープで、スープの質として拮抗していましたが、こちらの方がトリュフソースがあったおかげで、一歩ぬきんでて上をいった印象でした。一つ星の洗練を感じた一皿でした。


秋の実りと生きるモノ(鶏と豚のテリーヌ)
大和肉鶏と大和ポークのテリーヌで、生きているものの象徴とのことです。梨のピュレ、はちみつ、ドレッシング、砕いた木の実、栗が添えられています。
サラダの下に隠れているテリーヌですが、上質でとても美味しいです。甘いソース類が多いのですが、いずれも自然のものなので優しくて、いい調和をもたらしてくれていました。

玉ねぎパン
全粒粉のパンがなくなった後は、お代わりを問われることなく、温かいこの玉ねぎパンが置かれます。ガストロノミーレストランのサービスとはそういうもの、いちいち聞いたり、あるいは聞きもせずスルーしたりといったことはありえないのです。もちろん、当たり前と思うのも違うと思うので、きちんと各種パンを準備して提供するお店の姿勢は素晴らしいとほめたいと思います。このパンも、玉ねぎがほのかに香る美味しいパンでした。



大和まなのジェノヴェーゼ
温かなミルク
ジェノベーゼパスタが提供されました。料理に変化があって楽しいですし、合間にパスタを提供できるのも、自由なモダンスパニッシュならではで良いと思います。
もともと細麺が好きですし、良いお味でしたので、セモリナ粉100%で、素麺と同じ製法で作られたというパスタを使ったこちらのお料理も好きでした。麺の歯触りが良くて美味しかったです。奈良・葛城高原産のモッツァレラチーズも温かくて優しい風味をもたらしてくれて良いアクセントになっています。
ただ、丁寧な仕上げに時間がかかるでしょうから難しいとは思いますが、提供の時点でややぬるくなっていたのは残念でした。
また、そうめんと同じ製法と言いながら、質問をすると、そうめんの製法を知らなかったようで、しどろもどろになってしまったのはいただけませんでした。しれっと知ったかぶりするよりは誠実さがあるとも言えますが、説明する以上は、そんな複雑な工程ではないのですから、最低限のことは知っておいて欲しいと思いました。


ソパ・デ・アホ
魚のロースト
魚は、キアラ(アオハタ)のローストでした。皿をしっかり温めて提供してくれました。
スペインの郷土料理、「ソパ・デ・アホ(=ニンニクスープ)」の現代的解釈という形にして、魚料理として提供されていました。すなわち、スープにパンくずや卵黄を入れるのがオリジナルの形とのことでしたが、ここでは、大和まなを使った緑色のパン粉と玉子を魚の皮目のところに塗ることでその風味を取り入れて、たっぷりめのニンニクスープがソースも兼ねるようなお料理に仕上げられていました。スープはニンニクだけではなく、チョリソーの出汁が出ていて、味わい深かったです。
お魚については、ボリュームがありながらしっとりとした火入れが施されていて、旨味がしっかりあり美味でした。「Uozen」で感動した魚はマハタでしたが、似た系統のお魚で、思い出していました。スープも出汁がしっかり出ていて、旨味たっぷりで良かったです。郷土料理風でありながら、繊細かつ美味な一皿で、それら背反する要素が同居していて素晴らしい一品でした。このお料理で、二つ星が狙えるお店と感じた次第でした。

バターパン
第三のパンは、バターパンとのことでした。こちらも提供時、本当に熱々でした。ハイジの白パンのイメージ、あるいは肉まんやあんまんの生地といっても良いかもしれません。白米が美味しいように美味しいのですが、残念ながらバターの要素はどこにも見出せませんでした。


サフランのアロスと大和肉鶏
深まる秋と景色
メインは大和肉鶏という鶏肉を使った料理でした。つけ合わせとして、奈良県大宇陀の今が旬というサフランと、奈良県産のらっきょうの酢漬けが添えられていました。
鶏肉は、硬いというか歯応えある身質です。こちらは、鶏肉を焼いただけのお料理としか受け取れず、とびきりの旨味を感じたということもなかったので、正直なところ凡庸な料理と感じて感動は全くありませんでした。


実り、終わりゆくもの。
自然に熟して落ちたという柿を味わい、楽しむためのデザートです。左にひかれているソースはサワークリーム、アイスクリームは白味噌と柚子の風味とのことでした。
全体を食べ終えると、柿のタルトを食べた食後感になるとの説明があったが、最後に納得できました。「タルト」のパーツとなった、構成要素の柿のスイーツ達もそれぞれに美味しかったです。お洒落な趣向が好きでした。

月ヶ瀬のお茶三種
こちらは食後のお茶にも力を入れているようで、特に奈良県月ヶ瀬のお茶類(緑茶・ほうじ茶・春摘み新茶の紅茶)については、茶葉まで見せてくれて説明をしてくれたので、力を入れているのかなと思っていました。
ただ、お店で栽培しているハーブを管理している滋賀県の方が送ってくれるというハーブを使ったフレッシュハーブティーがあるとのことでしたので、迷わずそちらをお願いしました。

フレッシュハーブティーと小菓子(奈良県産ブルーベリーの焼きマシュマロ)
「Uozen」以来となる本物のフレッシュハーブティーで大満足できました。香りが強く、美味しいです。ひだをつけたような加工を施したカップでしたが、飲み口が薄くて飲みやすかったです。
お代わりをお願いしましたが、一杯のみとのことでした。どうしてもということならば、追加料金を払えば良いのでしょうが、どうしても潤沢に提供してくれるフランスでの美食体験を思い出してしまうので、そのあたりにはどうしても不満をもってしまいます。
小菓子は一つだけで、ブルーベリーのマシュマロを軽く焼いたものでした。甘みが強めですが、優しい食感で美味しいです。
食事を終えて、基本的に満足できたのですが、いくつか気になった点を挙げておきます。
まず、サービスの中に体臭が強い方が一人いて、サービスから外せとは申しませんが、客の前に出すのであれば、きちんと消臭対策をして、ソムリエやシェフのチェックをパスする必要があるでしょう。せっかくの美食を楽しむ場で、皿を持ってくるたび、下げるたびに、その体臭をかがされる客の身になって欲しいものです。客に対して強い香水をつけての来店を遠慮するように要請するお店があるように、サービスマンに体臭をさせないことは、最低限守るべき店のマナーでしょう。これは強くお願いしたいと思いました。次にも同じ思いをしたら、三度目の訪問はないでしょう。
一枚ずつ、次に出る料理をサービスが開けていくカードタイプのメニューは、客が次に何か出てくるか分からず、サプライズになって、面白いのですが、サービスマンが毎回カードを触るので、どうしてもカードが曲がったり、汚れたりしてしまうことがあって、あまり良い気がしませんでした。また、コロナ禍の昨今、接触回避の観点からも、このスタイルは今一つよろしくない印象を持ちました。
最後は、川島シェフが出てきてくださり、ソムリエール(もしかしたらメートルドテル)と共にお見送りしてくれて、感じが良かったです。
この時に少しお話する機会がありましたが、ミシュランの星を意識するかという問いに対して、頑張りますとのことでしたので、星は意識するではなく意識されているように感じました。短い会話でしたが、シェフの謙虚な姿勢が垣間見えて、好感が持てました。
また奈良市界隈で食事をする機会があれば訪れたいと思いつつ、気持ち良くお店を後にしました。
(いただいたもの)
ランチコース(一種類のみ)
飲物
・ 食前酒:グラスカヴァ
・ お水(フリー)
ウェルカムドリンク:大和橘水
旬と結崎ネブカ
シェリー風味の“ヌタ”
(鰹のマリネ)
全粒粉のパン アンダルシア地方のオリーブオイル
かぼちゃの月 菊と胡麻(南瓜のポタージュスープ)
秋の実りと生きるモノ(鶏と豚のテリーヌ)
玉ねぎパン
大和まなのジェノヴェーゼ
温かなミルク
(ジェノベーゼパスタ)
ソパ・デ・アホ
魚のロースト
(アオハタ)
バターパン
サフランのアロスと大和肉鶏
深まる秋と景色
実り、終わりゆくもの。(柿のデザート)
食後のお茶(フレッシュハーブティー)と小菓子(ブルーベリーの焼きマシュマロ)
(以上の記載は、飲物、ウェルカムドリンク、パンとオリーブオイル、食後のお茶と小菓子、括弧内の記載以外は、頂いたメニュー表を転載したものです。)