レストラン訪問記:広島「なかしま」(★★★)

広島の特別版で唯一三つ星評価を受けている和食店に伺った際の記事になります。
料理やそれを受け止める器、料理を作り出す大将や職人さんたちの技術や心意気、女将さんの朗らかなサービスが一体となって、とても心地よい空間で美味しい食事を楽しむことができました。
一斉スタートでカウンターの向こうで全員分のお料理を盛り付けている様子が見えてそれも楽しいのですが、大将の、今日はこんな美味しいものを食べてもらいますよという雰囲気が感じられてとても好ましく思えました。
大将の志もあるのでしょうし、女将の器もあるのでしょう、働いている方がみな一様にキビキビしていて感じが良く、おもてなしの心が感じられて良かったです。

カウンターの様子
お酒については、女将が選んでいるようで、良いものが出てきて満足できました。それぞれのお酒にストーリーがあって、それもまた食事を楽しくしてくれます。
料理を盛り付ける器もここでは食事の楽しみの一つなのでしょう。割烹では普段あまり見かけないような漆器が出てきたりして、芸術品を目で楽しむ喜びもあり、食事がより贅沢な時間になりました。
一つ残念だったのは、店内にコバエがいたことでした。
訪問は2022年5月になりますので、その点御了解ください。
この日のお会計ですが、コースが1万7320円、生ビールが700円、日本酒半合がいずれも600円、柚子レモン酒が700円でした。飲み物については税サ別料金です。サービス料は5%とのことです。
当時はコースが上記の金額でしたが、今の値段は2万円を超えています。高級店は軒並み数千円程度の値上げをされている印象で、昨今の物価高を考えると仕方ないのかなと思います。
(頂いたもの)
夜のコース17320円

卓上のしつらえ

生ビール:マスターズドリーム
味は濃いめですが、繊細で美しい泡の生ビールで感心します。また、さすが店の格に合うビールを置かれていて納得します。これは770円でしたがとても安い値付けで、下手な泡よりよほど良いと思いました。



七草や筍のお粥 からすみかけ
からすみのコクと苦味、山菜の苦味が合っていました。熱々のお椀も、少し肌寒いこの時期(5月)の気候にぴったりで、そのあたりへの配慮にレベルの高さを感じました。輪島塗の美しい細工の器も素敵です。

日本酒(半合):雨後の月 純米吟醸
味はあっさりめですが、華やかな香りで自分好みでした。


お造り1:天然真鯛 藻塩と土佐醤油
薄いものは塩で頂きます。しかし鯛の味はあっさり目で、やはり明石の鯛には負けるかとそんな印象を持ちました。広島産の大型山葵は香りが強めでした。

厚切りは、肉厚でぶりっとした食感でほぐれる感じがありました。食べ応えがあって、美味しいですが、明石鯛とは楽しみ方が違うのかもしれませんね。個人的には明石鯛の旨味が濃い方が好みでした。
こちらも花鳥の輪島塗で素敵です。

お造り2:宮崎産初鰹 自家製ポン酢
藁で燻した皮が美味しいです。薬味が各種あって良いですね。胡麻が特に効いていました。

日本酒(半合):富久長 純米吟醸 八反草(今井酒造)
女性杜氏の醸す酒とのことでその方の記事が置いてあり読ませていただきましたが、有名な方のようですね。華やかでかつ濃醇で美味い酒ですごかったです。



お椀:鱸(すずき) 広島産筍 わかめのお椀 一番出汁
出汁は味が濃いめです。鱸も塩味がしっかりしてありました。

焼き物1:対馬産のどぐろ炭火焼き 姫大根 もろみ味噌
のどぐろは熱々とろとろで脂が半端ないです。ほのかな炭の香りが美味しいです。熱々ほど美味いく感じられます。寿司屋で頂く生ののどぐろとの対比が楽しいです。どちらもそれぞれの良さあるという結論になります。古伊万里の器で頂けました。

焼き物2:地鶏の炭火焼き
右が胸、真ん中がもも、左が皮とのことでした。ももは噛む必要があるが旨味がたっぷりでした。肉が出る時点でいわゆる懐石ではないですね。美味いもの出す大阪の系譜という感じがしました。ブレス鶏を食べる感じがありました。脂の美味しさを堪能しました。

果実酒:富久長 純米 ゆずレモン酒
柑橘の香りが強く印象に残りました。甘さがありますが、辛口の美味しいお酒でした。



揚げ物:岩国蓮根使用蓮根饅頭
さっくりもちもちで、揚げてあるのでこくもあり美味しいです。ただ単体では、奈良桜井の「味の風にしむら」の蓮根饅頭の方が好みかもしれません。濃い目の醤油味で、海苔もあって、磯部焼きの趣でした。

平貝の和物
特別サービスで入れてくれた、地の赤ウニが甘いです。また、こちらは春野菜のキャベツ、アスパラの味付けが優しい塩味で貝と合っていました。貝も炙ってあって甘味がありました。素敵な調和でした。食後底にある寿の字が見える京焼の器でした。


お食事:筍御飯 香の物 お味噌汁
大将自らよそい、説明してくださいました。胡麻が特徴的で食事がゴージャスになる印象でした。味付けは京都風の優しい味付けで好みでした。広島の筍で、訪問は5月上旬でしたが、これでお店としては筍は終わりとのことでした。残ったご飯はお土産で持たせてくれるのが有り難いですね。
香の物のすぐきのようなものは甘めの醤油味でした。また大根もやや甘く、これはやはり広島の味付けなのかと思いました。
味噌汁も甘口で、にらでしょうか、青いものが入っていました。

デザート:抹茶のチーズケーキ
最後まで美味しく頂けました。最後に出していただいたお茶はほうじ茶だったと思います。