レストラン訪問記:千葉市「天白」

お店の外観
この日は珍しく天ぷらなどを頂いてきました。東京からは遠い千葉駅が最寄り駅で、その駅からもさらに少し離れていて、都心からは移動が面倒な場所だとは思います。昨年3月中旬の訪問でした。
こちらで使用している油は太白胡麻油100%とのことで、揚げ方にかなりこだわりがある大将であることが食べ進むうち分かっていきました。
カウンターのみの小さいお店ですが、店主の目の前の席の真上に鏡がついていて、上を見上げると、天ぷらが揚がる様子を楽しむことができようようになっています。
カウンターはおそらく10席弱はある広さですが、コロナ禍もあって、昼は4名、夜は6名に限定しているようです。また、昼は基本的に一組しか入れないようなので、落ち着いて食事を楽しみたい向きには複数名の予約なら基本貸切になるお昼がお勧めかもしれません。
基本的には昼も夜も一斉スタートのコース1本でされていて、油の品質管理上15分以上遅刻するとキャンセル扱いになるなど、かなりこだわりの職人さんで、気難しい大将がされているのかなと、行く前は少し緊張していました。
ただ、職人気質ではあるものの、気配りのある優しい大将で、丁寧に接客していただきましたし、最後はお見送りもしてくれました。
帰宅して、沢山の食材を頂いたはずなのに、食後お腹いっぱいで苦しいというようなことはなく、とてもスッキリした気持ちでいられました。つい先ほどまで美食体験をしていたはずなのに、お腹に響いていなくて、不思議な感覚でした。


この日の食材
店頭にこの日揚げてもらう食材がディスプレされていて、写真撮影も可能でした。
以下、この日頂いたものを順に紹介していきます。×から★までは個人的な評価です。×、△、○、◎、★の順で評価が良くなっていきます。★は感動した天ぷらにつけました。今回、△や×はありませんでした。
天ぷらコース13200

◯海老の頭
海老の頭は二つ出てきます。最初のものは何もつけずに頂きます。

◯海老の頭
次はお塩をつけて。海老のスナックを頂いている感覚です。

○巻海老(鹿児島産)
2時間前に締めたものとのことでした。寝かせることにより、身を落ち着かせるとのことでした。鮮度が良すぎても身が硬いとのことです。

スナップエンドウとほうびかんじゅ

★スナップエンドウ(愛知産エメラルド)
余熱で火入れをしています。香り逃さないためとのことでした。あおくささや豆の香り、甘味もしっかり感じられて美味でした。この日一番といって良いくらいの天ぷらで、驚きました。

◯ほうびかんじゅ(沖縄・宮古島の山菜)
沖縄の山菜が出てきました。別名がみやこぜんまいで、ゼンマイの一種とのことです。ほんのり粘り気がありますが、上品な香りでした。

◎島根(宍道湖)産白魚
大ぶりで柔らかく、優しい味がします。春の繊細な美味でした。天ぷらには最適なネタですね。霞ヶ浦産、茨城沖産も使うとのことですが、宍道湖のものに比べて小さいとのことでした。

たらのめと筍

◯山形産たらのめ
こちらは野生の山菜です。こっくりしていて、独特の香りや苦味があります。ビールにも合いますね。もう少し食べたかったくらいでした。
ここで日本酒の清泉を半合注文しました。

◎鹿児島産筍
出汁で炊いて一晩漬けたもので、手が込んでいます。味付けがしてあって美味しいです。食べ応えがありました。
炊いたりせずにそのまま揚げる方が好みの方もいるでしょうが、ここの大将の、どうやって食べるのが一番美味しいかを常に考えて研究されている姿勢が垣間見られて、個人的には好感でした。

◎帆立貝柱(北海道・噴火湾産)
見た目から帆立と当てられる人は少ないのではないでしょうか。一般的な輪切りではなく、開いて棒状にしてあります。奇をてらってとかではなく、このさばき方が美味しいと研究された上で揚げられています。
実際とても食べやすく、火入れも良い具合にできていて、繊維がきれいにほぐれて美味しいです。たっぷりの量で食べ応えもありました。


◎鹿児島産そら豆
そら豆は出始めより真ん中くらいの時期とのことで、一番いい時期とのことでした。出始めはあっさりして、柔らかいとのことです。これより後の季節以後は硬くなってしまうとのことでした。香りが濃くいい感じで美味しいです。これもたらのめ同様もう少し量が欲しいくらいでした。

◯箸休め1:スミイカと山形産ウルイ 梅のジュレ
ウルイが良い香りです。ここでも山菜が大活躍です。花紫蘇も良いアクセントでした。イカのお刺身も新鮮で良かったです。
1回目のおしぼり交換がありました。

★穴子(長崎・対馬産)
160度の低温で、香り、甘味を残す揚げ方とのことでした。ボリュームがたっぷりで、揚げ方もさくさくで最高に美味かったです。塩も良いですが、出汁がさらに良く、好みでした。


◎アスパラガス(穂先)
今の時期が一番良いとのことです。香り、食感を残す揚げ方をしています。衣が薄いですね。中の水分がいい具合に残って美味でした。塩、出汁両方で頂きました。

◯アスパラガス(軸)
甘み、みずみずしさを出す揚げ方をしています。さっきより水気が出てきました。個人的には穂先の方が好きでした。

◎箸休め2:仙台せり、ミツバ、薩摩地鶏のおひたし
せりが香っていました。量は少ないですが、繊細かつ美味しいお皿でした。

◎巻海老(鹿児島産)
最後に揚げるので、各種食材を揚げた後の油で揚げることになり、油にこくが出てきて変化があるとのことでした。たしかに旨味が増していました。美味しかったです。


★さつまいも(茨城産べにはるか)
驚くべきことに、11時から揚げているとのことでした。甘くて柔らかくて驚きの天ぷらです。初めてのお味で感動しました。
そのままで甘くて美味しく頂け、塩を付けても良いですね。クリーミーなデセールと言っても良いくらいでした。揚げを使ったブリュレとも言えるかもしれません。他ではおそらく食べることができない天ぷらでしょう。
さつまいもは秋のイメージがありますが、寝かして甘みを出す工程が必要なため、こちらでは秋に出すことはなく、この季節から5,6月までの期間限定食材とのことでした。
2回目のおしぼり交換がありました。

締めの食事:天丼(芝海老、帆立、新玉ねぎ、新生姜)
赤出汁 しじみ(青森・小川原湖産)の赤出汁
お新香:キャベツ
締めの食事は天丼か天茶かを選べます。帆立が香り、生姜がいいアクセントでした。ご飯は硬めの炊き上がりで良いです。赤出汁は車海老、鰹節で取ったお出汁で作っているとのことでした。
最後まで枯れることなく天ぷらを楽しみ尽くしました。

食後のお茶:煎茶(魚河岸銘茶のにゅう)
この日揚げていない食材を追加でお願いすることもでき、この日は肥後紫(赤茄子)がありましたが、追加注文はしませんでした。初めの食材写真に載っている大きめの茄子がそれです。
気になるお会計ですが、訪問時のコース料金は13200円で、お値打ちに感じました。ただ、現在は大幅に値上げされていて18700円になっていますので御注意ください。お酒はビールや日本酒を頂きましたが、それぞれ1000円弱程度だったと思います。日本酒は季節のお酒として2〜3種類お勧めのお酒があり、半合の注文も可能でした。
天ぷらはあまりなじみのないジャンルであり、また初めての訪問でもありましたが、そのお料理に感銘を受けましたので、また是非伺いたいと思っています。