レストラン訪問記:外苑前「フロリレージュ」(★★)
予約困難店というほどではないようですが、かなりの人気店のようです。平日の昼間ですがカウンターの全席が埋まっていました。私の場合、しばらく前に店に電話をして予約してこの日を迎えました。カウンターの中央の特等席でした。おそらく予約順ではないかと思います。

他の人のレポートなど一切見ずにまっさらな気持ちでお店にうかがい、最初は温度も上がりませんでしたが、客席が一気に埋まり、調理スタッフの動きがより活気づいてきて、様々なプレゼンテーションを見、また美味しいものをいただいていく過程で徐々に体が温まってきました。

日替わりか週替わりかわかりませんが、基本的にはお任せでその時々に美味しいものを調理してコースに仕立てて提供してくれるようです。食材だけを並べて書いた今風のメニュー表が一人ずつに配られますので親切ですね。
全体としては突拍子もない提供スタイルなどはなく、オーソドックスなアミューズ、前菜、メイン、デザートという流れが守られていて、おまかせといいつつその流れは崩していません。
とはいえ、お昼でもそれなりの値段なので前菜が冷/温(かつ魚介/肉)の二皿だったり、メインは魚、肉の両方が出て、デザートもフルーツとチョコレートの二種類とかなりしっかりとしたフルコースとなっています。
アミューズはこの季節美味しいナスのピュレです。スプーンに盛られていて食べる人への配慮がありますね。さらにピュレを載せている容れ物もおそらく焼き茄子の皮で作られたシートで作られていて食べられます。
前菜一皿目の帆立は昆布締めにしてきれいに盛りつけてあり、味付けは塩昆布ということで日本料理をフランス料理風に盛りつけた一皿でしたね。美味しいですがほんの少し塩気がつよかったのかもしれません。
このあたりではまだ気持ちが乗ってきませんでした。美しいですし、美味しいですが、初めて見たはずなのにどこかで見たようなお料理という印象を受けていました。現代風のお料理はみなさん影響し合っていますからきれいなプレゼンテーションもある意味ワンパターン化されてくるのかもしれません。
個人的には今風のプレゼンの大きなお手本になっているのはピエール・ガニエール氏やミシェル・ブラス氏のお料理だと思っています。
さてアミューズ、一つ目の前菜はともに冷たいお料理として出されたわけですが、冷たさを感じにくかったのが唯一の欠点と思いました。
冷たい物は冷たく、温かい物はあえてぬるく提供するお料理(ティエード)以外は熱々で出して頂きたいものです。

お出汁を注いだ後のカルパッチョ
二つ目の前菜は温菜でかつお肉のお料理で、カルパッチョの元祖牛肉のそれでした。牛肉といっても経産牛というのがポイントのようです。お産を経るとお肉の旨みが濃いお肉になるようです。それとともにサスティナビリティーのアピールがメニュー表にありました。
シェフが現代的な問題に敏感で、社会貢献されている姿を否定する気はありませんが、お客さんからするとその食事の機会で美味しいものが食べられれば良いのでメニューでのアピールは不要かと思ってしまいます。
一般的に美食を楽しみに来るお客さんがサスティナビリティーを知ったり、興味をもったりしたとしてお客さんの側として何ができるのか疑問だからです。そうなるとメニュー表への記載も結局シェフの自己満足に終わってしまっている気がするのです。
お料理自体は最近流行りの燻製をきかせたマッシュポテトなどが添えられ、今風のお出汁を注ぐパフォーマンスなどもあり、お肉自体も美味しく楽しめました。

お魚は宮崎県産のサーモンの炭火焼き。脂が乗っていて美味しいですが、フェンネルなどのハーブ類といただくのが美味しさの秘密かもしれません。
「分かち合う」と題されたメインのお肉料理は大きな塊のお肉を当日のお客さんで分け合って食べるところからつけられています。

この日、普通のランチコースのお肉は岩手県産のほろほろ鳥でした。焼き加減はロゼに仕上げてあってジューシーで、あまり好きとはいえない食材でしたが、調理が上手で美味しくいただけましたし、切り分けながらもきちんとしたきれいな盛りつけでさすがと思いました。
ただソースが三種類あると言われたものの一つのキノコのソースがよくわからず、また一つのお肉料理にごちゃっと三種類の異なるソースをあらかじめかけて出すのはどうなんだろうと疑問に思いました。
またつけ合わせのお米料理はネギと味噌で焼いたものでしたが、餅米と思われる米に火が通りきっていないのかまだ硬いものがあったりして、そこらへんはもっときちんとした調理、火入れをして頂きたいと思いました。二つ星にもなると客の期待はぐっと上がってきます。
色々と文句を書いてきましたが、メイン料理にはいってデザートに流れていく過程で美味しいものをいただけている感じがしたのでかなり満足していました。
特にデザートについては素朴で、ある意味凡庸な現代風プレゼンテーションと思いましたが、味はぴかいちでした。生のマンゴーのとろっとした食感や風味がマンゴーソース、ブラマンジェなどとあいまってかなりレベルが高いデザートに仕上がっていました。チョコレートデザートも同様に風味が際立っていましてとても美味しかったです。というわけで、お料理よりもデザートのレベルがより高いと感じました。

最後の締めはフレッシュハーブティーで。一杯だけの提供でしたが、二杯分くらいは準備しておいて欲しいですね。言えばまだ出してくれたのでしょうが、時間の関係で頼みませんでした。
カウンターのみのレストランはやはりカウンター内でのスタッフのきびきびした動きやお客さんが作り出す賑わいもまた楽しみの一つであり、楽しい経験をさせてもらいました。
カウンターはかなり大きく、隣の客との距離も十分に確保されていますので快適に食事できますね。3人客はカウンターの角に配置するようにしているようです。
シェフ始め調理スタッフ、サービススタッフともきちんとしていて特に問題はなかったのですが、サービスの統括の方でしょうか、マニュアル対応や英会話はばっちりのようですが、日本語での会話が今ひとつ盛り上がらず、接客能力が低いのかなと感じました。
単に私があまり好みではない客だったのかもしれませんが、プロである以上は外国人客と同じように接して頂きたかったですね。それが最後お見送りでのことでしたので、お店の印象が少し悪くなって店を出ることになったのは残念でした。
料理は美味しいですし、プレゼンテーションも美しく、美味しいものを提供するというシェフの志も感じられましたが、全体として個性は感じにくかったかもしれません。それが出てくるとさらに上に手が届くのかもしれません。
その一方で、照明がきちんとしているのでしょう、写真に収めるときにとてもいい加減の光がお皿に当たっていて、とてもきれいに撮れました。料理がきれいに見えるようにとの配慮はとてもとてもいいですね。
あくまで個人的な感想ですが、南青山の一つ星店「アビス」はこちらと比較しても料理のレベルにおいて全く負けていないという印象でした。むしろコードに縛られていない自由な提供ができている分「アビス」の方がよりシェフの個性を感じられるお店かもしれません。
(いただいたもの)
ランチコース
(いただいたメニュー表をそのまま転載します。【】内は説明していただいた詳細、注釈等になります。メニュー表には記載がありませんが、二回違う種類のパンのサービスがあり、デザートの後にお茶(フレッシュハーブティー)と小菓子(サクランボのパートドゥフリュイ包み)が提供されます。)
茄子
【アミューズ。焼き茄子のシートに載せた焼き茄子のピュレ 中に冷たい茄子入り 花穂載せ。】
帆立 フロマージュブラン
【前菜(冷・魚介)。フロマージュブラン ヨーグルトの紙 レモンのバタークリーム 帆立とかぶ 昆布締め 塩昆布のパウダー シトロンキャビア載せ。酒粕のパン提供。】
サスティナビリティー、牛
【前菜(温・肉)。宮崎産経産牛のカルパッチョ コンソメがけ 燻製マッシュポテト パセリオイル】
西米良サーモン
【魚料理。宮崎西米良村のサーモン 炭火焼き フェンネルのピューレ フェンネルとその花 イクラのオイル 春菊とじゃがいものソース】
分かち合う
【肉料理。岩手産ホロホロドリ 人参の葉載せ 三種ソース(エゴマ、赤ワイン、キノコ) もち米、九条ネギ、味噌を焼いた付け合わせ 塩添え。パン・カンパーニュ提供。】
マンゴー ココナッツ
【デザート(フルーツ)。ココナッツのブラマンジェの上にマンゴーソースとマンゴーを載せその上にミルクパウダー。】
贈り物、アマゾンカカオ
【デザート(チョコレート)。アマゾンカカオのチョコムース キャラメルコーティング カカオのクランチ 酸味あるクリーム。】

他の人のレポートなど一切見ずにまっさらな気持ちでお店にうかがい、最初は温度も上がりませんでしたが、客席が一気に埋まり、調理スタッフの動きがより活気づいてきて、様々なプレゼンテーションを見、また美味しいものをいただいていく過程で徐々に体が温まってきました。

日替わりか週替わりかわかりませんが、基本的にはお任せでその時々に美味しいものを調理してコースに仕立てて提供してくれるようです。食材だけを並べて書いた今風のメニュー表が一人ずつに配られますので親切ですね。
全体としては突拍子もない提供スタイルなどはなく、オーソドックスなアミューズ、前菜、メイン、デザートという流れが守られていて、おまかせといいつつその流れは崩していません。
とはいえ、お昼でもそれなりの値段なので前菜が冷/温(かつ魚介/肉)の二皿だったり、メインは魚、肉の両方が出て、デザートもフルーツとチョコレートの二種類とかなりしっかりとしたフルコースとなっています。
アミューズはこの季節美味しいナスのピュレです。スプーンに盛られていて食べる人への配慮がありますね。さらにピュレを載せている容れ物もおそらく焼き茄子の皮で作られたシートで作られていて食べられます。
前菜一皿目の帆立は昆布締めにしてきれいに盛りつけてあり、味付けは塩昆布ということで日本料理をフランス料理風に盛りつけた一皿でしたね。美味しいですがほんの少し塩気がつよかったのかもしれません。
このあたりではまだ気持ちが乗ってきませんでした。美しいですし、美味しいですが、初めて見たはずなのにどこかで見たようなお料理という印象を受けていました。現代風のお料理はみなさん影響し合っていますからきれいなプレゼンテーションもある意味ワンパターン化されてくるのかもしれません。
個人的には今風のプレゼンの大きなお手本になっているのはピエール・ガニエール氏やミシェル・ブラス氏のお料理だと思っています。
さてアミューズ、一つ目の前菜はともに冷たいお料理として出されたわけですが、冷たさを感じにくかったのが唯一の欠点と思いました。
冷たい物は冷たく、温かい物はあえてぬるく提供するお料理(ティエード)以外は熱々で出して頂きたいものです。

お出汁を注いだ後のカルパッチョ
二つ目の前菜は温菜でかつお肉のお料理で、カルパッチョの元祖牛肉のそれでした。牛肉といっても経産牛というのがポイントのようです。お産を経るとお肉の旨みが濃いお肉になるようです。それとともにサスティナビリティーのアピールがメニュー表にありました。
シェフが現代的な問題に敏感で、社会貢献されている姿を否定する気はありませんが、お客さんからするとその食事の機会で美味しいものが食べられれば良いのでメニューでのアピールは不要かと思ってしまいます。
一般的に美食を楽しみに来るお客さんがサスティナビリティーを知ったり、興味をもったりしたとしてお客さんの側として何ができるのか疑問だからです。そうなるとメニュー表への記載も結局シェフの自己満足に終わってしまっている気がするのです。
お料理自体は最近流行りの燻製をきかせたマッシュポテトなどが添えられ、今風のお出汁を注ぐパフォーマンスなどもあり、お肉自体も美味しく楽しめました。

お魚は宮崎県産のサーモンの炭火焼き。脂が乗っていて美味しいですが、フェンネルなどのハーブ類といただくのが美味しさの秘密かもしれません。
「分かち合う」と題されたメインのお肉料理は大きな塊のお肉を当日のお客さんで分け合って食べるところからつけられています。

この日、普通のランチコースのお肉は岩手県産のほろほろ鳥でした。焼き加減はロゼに仕上げてあってジューシーで、あまり好きとはいえない食材でしたが、調理が上手で美味しくいただけましたし、切り分けながらもきちんとしたきれいな盛りつけでさすがと思いました。
ただソースが三種類あると言われたものの一つのキノコのソースがよくわからず、また一つのお肉料理にごちゃっと三種類の異なるソースをあらかじめかけて出すのはどうなんだろうと疑問に思いました。
またつけ合わせのお米料理はネギと味噌で焼いたものでしたが、餅米と思われる米に火が通りきっていないのかまだ硬いものがあったりして、そこらへんはもっときちんとした調理、火入れをして頂きたいと思いました。二つ星にもなると客の期待はぐっと上がってきます。
色々と文句を書いてきましたが、メイン料理にはいってデザートに流れていく過程で美味しいものをいただけている感じがしたのでかなり満足していました。
特にデザートについては素朴で、ある意味凡庸な現代風プレゼンテーションと思いましたが、味はぴかいちでした。生のマンゴーのとろっとした食感や風味がマンゴーソース、ブラマンジェなどとあいまってかなりレベルが高いデザートに仕上がっていました。チョコレートデザートも同様に風味が際立っていましてとても美味しかったです。というわけで、お料理よりもデザートのレベルがより高いと感じました。

最後の締めはフレッシュハーブティーで。一杯だけの提供でしたが、二杯分くらいは準備しておいて欲しいですね。言えばまだ出してくれたのでしょうが、時間の関係で頼みませんでした。
カウンターのみのレストランはやはりカウンター内でのスタッフのきびきびした動きやお客さんが作り出す賑わいもまた楽しみの一つであり、楽しい経験をさせてもらいました。
カウンターはかなり大きく、隣の客との距離も十分に確保されていますので快適に食事できますね。3人客はカウンターの角に配置するようにしているようです。
シェフ始め調理スタッフ、サービススタッフともきちんとしていて特に問題はなかったのですが、サービスの統括の方でしょうか、マニュアル対応や英会話はばっちりのようですが、日本語での会話が今ひとつ盛り上がらず、接客能力が低いのかなと感じました。
単に私があまり好みではない客だったのかもしれませんが、プロである以上は外国人客と同じように接して頂きたかったですね。それが最後お見送りでのことでしたので、お店の印象が少し悪くなって店を出ることになったのは残念でした。
料理は美味しいですし、プレゼンテーションも美しく、美味しいものを提供するというシェフの志も感じられましたが、全体として個性は感じにくかったかもしれません。それが出てくるとさらに上に手が届くのかもしれません。
その一方で、照明がきちんとしているのでしょう、写真に収めるときにとてもいい加減の光がお皿に当たっていて、とてもきれいに撮れました。料理がきれいに見えるようにとの配慮はとてもとてもいいですね。
あくまで個人的な感想ですが、南青山の一つ星店「アビス」はこちらと比較しても料理のレベルにおいて全く負けていないという印象でした。むしろコードに縛られていない自由な提供ができている分「アビス」の方がよりシェフの個性を感じられるお店かもしれません。
(いただいたもの)
ランチコース
(いただいたメニュー表をそのまま転載します。【】内は説明していただいた詳細、注釈等になります。メニュー表には記載がありませんが、二回違う種類のパンのサービスがあり、デザートの後にお茶(フレッシュハーブティー)と小菓子(サクランボのパートドゥフリュイ包み)が提供されます。)
茄子
【アミューズ。焼き茄子のシートに載せた焼き茄子のピュレ 中に冷たい茄子入り 花穂載せ。】
帆立 フロマージュブラン
【前菜(冷・魚介)。フロマージュブラン ヨーグルトの紙 レモンのバタークリーム 帆立とかぶ 昆布締め 塩昆布のパウダー シトロンキャビア載せ。酒粕のパン提供。】
サスティナビリティー、牛
【前菜(温・肉)。宮崎産経産牛のカルパッチョ コンソメがけ 燻製マッシュポテト パセリオイル】
西米良サーモン
【魚料理。宮崎西米良村のサーモン 炭火焼き フェンネルのピューレ フェンネルとその花 イクラのオイル 春菊とじゃがいものソース】
分かち合う
【肉料理。岩手産ホロホロドリ 人参の葉載せ 三種ソース(エゴマ、赤ワイン、キノコ) もち米、九条ネギ、味噌を焼いた付け合わせ 塩添え。パン・カンパーニュ提供。】
マンゴー ココナッツ
【デザート(フルーツ)。ココナッツのブラマンジェの上にマンゴーソースとマンゴーを載せその上にミルクパウダー。】
贈り物、アマゾンカカオ
【デザート(チョコレート)。アマゾンカカオのチョコムース キャラメルコーティング カカオのクランチ 酸味あるクリーム。】
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