レストラン訪問記:銀座六丁目「スリオラ」(★★)
モダンスパニッシュを標榜する二つ星店へ。現在は交詢社ビル内に移転して営業されています。交詢社ビルというと昔(改築前)は一階にピルゼンというチェコビールを出すビアホールがありましたが、現在はあまりにこぎれいなビルになりすぎてしまいました。
さて、今回行った「スリオラ」について。二つ星ともなるとかなり期待は大きいのですが、今回の訪問でその期待に答えられるお店ではないことがはっきりとわかりました。
その点では収穫がありましたが、期待に比してあまりいい体験ができず残念な思いもまた強く残りました。ここはガストロノミーを楽しむ店ではありません。高い値段でスペイン郷土料理を味わうカジュアル店ですね。
お料理についてはスペイン料理としていただくと香り高い料理もあり、またデザートはとても完成度が高くて満足のいくものでしたが、シェフの力量については二つ星に値するものか大いに疑問がありました。
料理以外の点でも色々と気になりました。まず店の造りがよくないです。
入って左手が普通のテーブルがしつらえられたサル、右手が比較的大きめのカウンター席になっています。一人客は基本カウンター席に案内されるようで、当たり前のようにカウンター席に着席させられました。
この日は幸い客もほとんどおらず通るのはサービスマンだけでしたが、それでも食事中ずっと背後に人の気配がしていて全く落ち着いて食事がとれませんでした。これまでの経験からして、ガストロノミーレストランでの食事は心穏やかに落ち着いて食事できる環境があるのが基本でしたので、これにはとても違和感があり、それが最後まで消えることがなく、食事の楽しみが半減していました。
また、こちらのサービスもひどいものでした。シェフ、支配人それぞれの力量不足がそのままサービスの質に反映されていると考えましたがおそらくはずれていないでしょう。
シェフはカウンター奥で調理をしたり、差配をしているのですが、こちらへのあいさつが今ひとつちゃんとできない感じで伏し目がちだったりして、客商売で客の面前に出ている以上は開き直って自分の役割をきちんと演じきって欲しいと思いました。
またカウンターから見える奥の台の上に電話の子機が置かれていましたが、こちらの青いランプがずっと点滅を繰り返していました。客から見てどう思うか考えないのでしょうか。とても細かいことですが、客にくつろいでもらう、非日常を楽しんでもらう意識が低いことの一つの象徴のような事象と感じました。
サルとカウンター席がいわば別室になっているため、サービス上は二つの別のレストランが存在することになっていて、それぞれの専属のサービス責任者が存在することになります。支配人はサルのみを担当してカウンター側には全く来ないため、カウンター席は支配人の目の届かない状態で一人のカウンター専従のサービスマンにサービスが委ねられることになります。
そうなるとカウンター専従のサービスマンの質が高ければ問題ありませんが、この日カウンター専従だった女性サービスマンはおよそサービスには不向きの全く愛想も、コミュニケーション能力もない方で、こちらは各所で不愉快な思いをさせられました。
予約はおそらく店のサイト経由でしたが、注文を取る際に、(私が)コースを選んでいなかったので今選んで下さいというような言い方でコース選択を求めてきました。あたかもこちらのミスでコースを選んでいなかったような口ぶりに聞こえ、もしかしたらそこまでの意識はなかったのかもしれませんが、こちらにはそう受け取られかねない言い方で、口の聞き方を知らないのだなと思わずにはいられませんでした。そもそも店の予約サイトではコースを選ぶところなどなかったはずです。
またこちらではとても美味しいパンを提供してくれていましたが、パンの提供はすべてこちらが手でとる形をとっていて、初めての体験で驚きました。おしぼりが提供されているとはいえ、油がついているパンなのです。なぜサービスマンが皿に置くという普通のサービスができないのでしょう。その理由がわかりませんでした。スペイン料理とフランス料理でそれほどの違いがあるものでしょうか。
またこのサービスマンは基本的に私の真後ろに立っていて、こちらがわざわざ振り向かないと何かをお願いできないのでとても不便でした。客にサービスするのが仕事である以上、一人しかいない客であった私の視界に入るところに立つなど、こちらがストレスを感じないですぐに合図できる場所にいるべきでしょう。
最後のお茶はフレッシュのハーブティーでしたが、お代わりをシェフに所望したところ、この女性サービスマンはかったるそうにお代わりを作っている上、カウンターの中にしつらえられた冷蔵庫などの開け閉めもがさつでこちらの体に響いてきました。蕎麦屋「流石」でも同じ体験をしましたが、とても不愉快です。
このサービスマン、どうしてこの仕事をしているのか不思議な感じの人でした。おそらく英語ができるとか、どこかの学校出だとかそういうくだらない理由で雇われているのでしょう。基本的な対人関係についての能力(つくり笑顔でもいいので笑顔ができることだけで十分です)や相手を思う気持ちがない人間はサービスの仕事についていて欲しくないです。
その点でいうと、「ル・ボークープ」のおそらく学生アルバイトの若い女性サービスの方の方がはるかにサービスマンとして上だと思いました。(過去に勤めていたあるいは今勤めている)店の格とか、外国語能力とか、年齢とか客からしたらどうでもいいことです。
その日私自身はサービスを受けることがなかった支配人の力量に問題があると感じたのは、若い調理スタッフが厨房でできた料理をサルの方へ運んでもらうためにサービススタッフに声を掛けるのですが、その時彼は料理を載せた大きな盆を両手にもったままです。つまり若い調理スタッフの彼のつばがもれなくサルの料理には飛び散っているということです。一見の客でも瞬時に気付く失態のはずですが、これが当たり前のように何度も繰り返されているということはそのおかしさに気付いていないということで、サービスマンとしての意識が無いに等しいと思わずにはいられませんでした。シェフが目の前にいるところでそれを繰り返していますので、そこに気付かないシェフの意識の低さもまた同様に問題でしょう。

最後に料理について補足すると、デザートは手作りのチョコ三種のサービスまで含めて素晴らしいと思いました。デザートは、レモンの香りがしっかりとするソルベが絶妙の溶け具合で盛りつけられていました。とても細やかな仕事だと感じましたし、フロマージュブランのクリームやヘーゼルナッツも含めていいバランスでした。チョコレート三種も手間がかかるでしょうに、それぞれが個性ある味でとても楽しめました。
一方で、スペインらしくて美味しいと書いた料理については、確かに烏賊墨の風味が香るイカのお料理はスペイン料理らしい美味しさを感じました。
しかし、よく考えてみるとここでスペイン料理らしいという場合のスペイン料理とはモダンスパニッシュでもなんでもなくてスペインの郷土料理のことで、わざわざ高いお金を出してこの店に食べに来るまでもなく町場のスペインバルなどでいくらでも美味しいものを楽しめると思うと、この店に来る意味はほとんどないことに気付きます。
神戸で訪れた「カセント」でいただいた洗練されたお料理と比べるとやはりかなり劣ると思わずにはいられませんでした。
まずピンチョスとして出された米粉のチップスに振られた塩の量が尋常ではなく相当しょっぱい味に仕上がっていました。シェフは皿が出て行くときに目で確認していましたが、一度味も見直した方がいいでしょう。部下を信頼しすぎるのは危険です。
次にハガツオの刺身を使ったタルタルですが、焼き茄子のムースはいいのですがそこに入った焼き茄子が十分に水気を含んだもので、タルタルの味を薄めて料理を不味い物にしてくれていました。シェフのセンスを疑った一品でした。
奇しくも同じ二つ星の「フロリレージュ」でも焼き茄子を使ったアミューズがありましたが、「フロリレージュ」ではムースだけでしっかりと濃厚な味を演出していたのでこの点だけを見てもシェフとしての力量は歴然です。

さらにいうと、パンコントマテと題されたお料理ですが、甘いワインのキューブであったり、酸味ある野菜であったりが盛られていてご覧のようになんとなく目には鮮やかでした。しかし、そこにかけられたアーモンドとにんにくで作ったという白いスープ(アホブランコ?)が何の味気もないもので食べただけでは何かわかりませんでした。さらには、その個性の薄いスープのせいか様々な味の食材がまとめられることもなくすべてがちぐはぐにそこにあるだけという感じになってしまっていて、この日一番痛い料理でした。また、これはスープを食べさせるための料理だったと思いますが、それを平らな皿に注ぐセンスもわかりませんでした。食材の一つとして使われていたカマスのお刺身単体では美味しかったので非常に残念でした。
訪れたのは平日でしたが、この日の客は自分を入れて三組だけで、同じく二つ星の「フロリレージュ」が平日でも満席の賑わいであったことを考えるとやはり店の勢いには明らかな差があると思わずにはいられませんし、それに理由があることも十分にわかった気がしました。
(いただいたもの)
ランチコース(メイン一皿)
ピンチョス(スナック):米粉のチップスとオリーブオイル入りミニパン
タパス:ハガツオと焼きなすのタルタル
前菜1:アホブランコ カマスで巻いたパンコントマテ
前菜2:アオリイカとホタテを詰めたピキジョピーマン イカスミのカルド
メイン(一皿選択で○を選択):
コチ(串木野産)の炭火焼き クルブラネロとピペラーダ
イベリコ豚プルマのプランチャ カボチャとイディアサバルチーズ
○スパイスを効かせた仔牛胸腺肉のフリッタ ロメスコソース

サプライズ:小さなお米料理
デザート:レモンのソルベテ クリームチーズとオリーブオイル
お茶と小菓子:自家製チョコレート(三種)とフレッシュミントティー
さて、今回行った「スリオラ」について。二つ星ともなるとかなり期待は大きいのですが、今回の訪問でその期待に答えられるお店ではないことがはっきりとわかりました。
その点では収穫がありましたが、期待に比してあまりいい体験ができず残念な思いもまた強く残りました。ここはガストロノミーを楽しむ店ではありません。高い値段でスペイン郷土料理を味わうカジュアル店ですね。
お料理についてはスペイン料理としていただくと香り高い料理もあり、またデザートはとても完成度が高くて満足のいくものでしたが、シェフの力量については二つ星に値するものか大いに疑問がありました。
料理以外の点でも色々と気になりました。まず店の造りがよくないです。
入って左手が普通のテーブルがしつらえられたサル、右手が比較的大きめのカウンター席になっています。一人客は基本カウンター席に案内されるようで、当たり前のようにカウンター席に着席させられました。
この日は幸い客もほとんどおらず通るのはサービスマンだけでしたが、それでも食事中ずっと背後に人の気配がしていて全く落ち着いて食事がとれませんでした。これまでの経験からして、ガストロノミーレストランでの食事は心穏やかに落ち着いて食事できる環境があるのが基本でしたので、これにはとても違和感があり、それが最後まで消えることがなく、食事の楽しみが半減していました。
また、こちらのサービスもひどいものでした。シェフ、支配人それぞれの力量不足がそのままサービスの質に反映されていると考えましたがおそらくはずれていないでしょう。
シェフはカウンター奥で調理をしたり、差配をしているのですが、こちらへのあいさつが今ひとつちゃんとできない感じで伏し目がちだったりして、客商売で客の面前に出ている以上は開き直って自分の役割をきちんと演じきって欲しいと思いました。
またカウンターから見える奥の台の上に電話の子機が置かれていましたが、こちらの青いランプがずっと点滅を繰り返していました。客から見てどう思うか考えないのでしょうか。とても細かいことですが、客にくつろいでもらう、非日常を楽しんでもらう意識が低いことの一つの象徴のような事象と感じました。
サルとカウンター席がいわば別室になっているため、サービス上は二つの別のレストランが存在することになっていて、それぞれの専属のサービス責任者が存在することになります。支配人はサルのみを担当してカウンター側には全く来ないため、カウンター席は支配人の目の届かない状態で一人のカウンター専従のサービスマンにサービスが委ねられることになります。
そうなるとカウンター専従のサービスマンの質が高ければ問題ありませんが、この日カウンター専従だった女性サービスマンはおよそサービスには不向きの全く愛想も、コミュニケーション能力もない方で、こちらは各所で不愉快な思いをさせられました。
予約はおそらく店のサイト経由でしたが、注文を取る際に、(私が)コースを選んでいなかったので今選んで下さいというような言い方でコース選択を求めてきました。あたかもこちらのミスでコースを選んでいなかったような口ぶりに聞こえ、もしかしたらそこまでの意識はなかったのかもしれませんが、こちらにはそう受け取られかねない言い方で、口の聞き方を知らないのだなと思わずにはいられませんでした。そもそも店の予約サイトではコースを選ぶところなどなかったはずです。
またこちらではとても美味しいパンを提供してくれていましたが、パンの提供はすべてこちらが手でとる形をとっていて、初めての体験で驚きました。おしぼりが提供されているとはいえ、油がついているパンなのです。なぜサービスマンが皿に置くという普通のサービスができないのでしょう。その理由がわかりませんでした。スペイン料理とフランス料理でそれほどの違いがあるものでしょうか。
またこのサービスマンは基本的に私の真後ろに立っていて、こちらがわざわざ振り向かないと何かをお願いできないのでとても不便でした。客にサービスするのが仕事である以上、一人しかいない客であった私の視界に入るところに立つなど、こちらがストレスを感じないですぐに合図できる場所にいるべきでしょう。
最後のお茶はフレッシュのハーブティーでしたが、お代わりをシェフに所望したところ、この女性サービスマンはかったるそうにお代わりを作っている上、カウンターの中にしつらえられた冷蔵庫などの開け閉めもがさつでこちらの体に響いてきました。蕎麦屋「流石」でも同じ体験をしましたが、とても不愉快です。
このサービスマン、どうしてこの仕事をしているのか不思議な感じの人でした。おそらく英語ができるとか、どこかの学校出だとかそういうくだらない理由で雇われているのでしょう。基本的な対人関係についての能力(つくり笑顔でもいいので笑顔ができることだけで十分です)や相手を思う気持ちがない人間はサービスの仕事についていて欲しくないです。
その点でいうと、「ル・ボークープ」のおそらく学生アルバイトの若い女性サービスの方の方がはるかにサービスマンとして上だと思いました。(過去に勤めていたあるいは今勤めている)店の格とか、外国語能力とか、年齢とか客からしたらどうでもいいことです。
その日私自身はサービスを受けることがなかった支配人の力量に問題があると感じたのは、若い調理スタッフが厨房でできた料理をサルの方へ運んでもらうためにサービススタッフに声を掛けるのですが、その時彼は料理を載せた大きな盆を両手にもったままです。つまり若い調理スタッフの彼のつばがもれなくサルの料理には飛び散っているということです。一見の客でも瞬時に気付く失態のはずですが、これが当たり前のように何度も繰り返されているということはそのおかしさに気付いていないということで、サービスマンとしての意識が無いに等しいと思わずにはいられませんでした。シェフが目の前にいるところでそれを繰り返していますので、そこに気付かないシェフの意識の低さもまた同様に問題でしょう。

最後に料理について補足すると、デザートは手作りのチョコ三種のサービスまで含めて素晴らしいと思いました。デザートは、レモンの香りがしっかりとするソルベが絶妙の溶け具合で盛りつけられていました。とても細やかな仕事だと感じましたし、フロマージュブランのクリームやヘーゼルナッツも含めていいバランスでした。チョコレート三種も手間がかかるでしょうに、それぞれが個性ある味でとても楽しめました。
一方で、スペインらしくて美味しいと書いた料理については、確かに烏賊墨の風味が香るイカのお料理はスペイン料理らしい美味しさを感じました。
しかし、よく考えてみるとここでスペイン料理らしいという場合のスペイン料理とはモダンスパニッシュでもなんでもなくてスペインの郷土料理のことで、わざわざ高いお金を出してこの店に食べに来るまでもなく町場のスペインバルなどでいくらでも美味しいものを楽しめると思うと、この店に来る意味はほとんどないことに気付きます。
神戸で訪れた「カセント」でいただいた洗練されたお料理と比べるとやはりかなり劣ると思わずにはいられませんでした。
まずピンチョスとして出された米粉のチップスに振られた塩の量が尋常ではなく相当しょっぱい味に仕上がっていました。シェフは皿が出て行くときに目で確認していましたが、一度味も見直した方がいいでしょう。部下を信頼しすぎるのは危険です。
次にハガツオの刺身を使ったタルタルですが、焼き茄子のムースはいいのですがそこに入った焼き茄子が十分に水気を含んだもので、タルタルの味を薄めて料理を不味い物にしてくれていました。シェフのセンスを疑った一品でした。
奇しくも同じ二つ星の「フロリレージュ」でも焼き茄子を使ったアミューズがありましたが、「フロリレージュ」ではムースだけでしっかりと濃厚な味を演出していたのでこの点だけを見てもシェフとしての力量は歴然です。

さらにいうと、パンコントマテと題されたお料理ですが、甘いワインのキューブであったり、酸味ある野菜であったりが盛られていてご覧のようになんとなく目には鮮やかでした。しかし、そこにかけられたアーモンドとにんにくで作ったという白いスープ(アホブランコ?)が何の味気もないもので食べただけでは何かわかりませんでした。さらには、その個性の薄いスープのせいか様々な味の食材がまとめられることもなくすべてがちぐはぐにそこにあるだけという感じになってしまっていて、この日一番痛い料理でした。また、これはスープを食べさせるための料理だったと思いますが、それを平らな皿に注ぐセンスもわかりませんでした。食材の一つとして使われていたカマスのお刺身単体では美味しかったので非常に残念でした。
訪れたのは平日でしたが、この日の客は自分を入れて三組だけで、同じく二つ星の「フロリレージュ」が平日でも満席の賑わいであったことを考えるとやはり店の勢いには明らかな差があると思わずにはいられませんし、それに理由があることも十分にわかった気がしました。
(いただいたもの)
ランチコース(メイン一皿)
ピンチョス(スナック):米粉のチップスとオリーブオイル入りミニパン
タパス:ハガツオと焼きなすのタルタル
前菜1:アホブランコ カマスで巻いたパンコントマテ
前菜2:アオリイカとホタテを詰めたピキジョピーマン イカスミのカルド
メイン(一皿選択で○を選択):
コチ(串木野産)の炭火焼き クルブラネロとピペラーダ
イベリコ豚プルマのプランチャ カボチャとイディアサバルチーズ
○スパイスを効かせた仔牛胸腺肉のフリッタ ロメスコソース

サプライズ:小さなお米料理
デザート:レモンのソルベテ クリームチーズとオリーブオイル
お茶と小菓子:自家製チョコレート(三種)とフレッシュミントティー
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