レストラン訪問記:浅草「ナベノイズム」(★)
先日掲載した「アサヒナ・ガストロノーム」より前に訪問した浅草のお店の訪問記を掲載いたします。両店舗ともジョエル・ロブション氏のレストランで中枢を担われていたシェフが独立して開業されたお店という点で共通しますが、ロケーション、お料理などやはりそれぞれにシェフの個性が出ていて違いが感じられました。
フランスレストランウィークで通常とは異なるショートコースの提案があったためこちらを選んでうかがってきました。浅草という多少都心から離れた立地のために通常のコースでは時間がかかりすぎるのでなかなか行く機会が見つけられませんでした。
この日は都営線が止まっていたため浅草橋から歩いて浅草を目指します。その道すがらお店の場所を確認して少し浅草観光をしてお店に戻ってきました。
浅草寺には天候が良くない日だったにも関わらずけっこうな人出がありますね。多くは外国人観光客ということだと思います。しかしその人出もあいまって浅草寺の境内には独特のにぎわいがあります。本当に久しぶりに浅草を訪れて少しだけ観光気分を味わうことができました。

お店には時間より早く到着して早め早めにサービスをしてもらうようにお願いしました。
まずはオーナーシェフの渡邊氏が一階にあるガラス張りの厨房からあいさつに出てこられました。テレビで拝見した通りとても気さくな方という印象です。ジョエル・ロブション氏のもとで彼を支えたシェフということだけで個人的には好感度が高くなります。
サルは上層の2階、3階部分を使っていて広くはないですが高級店の落ち着いた雰囲気が漂っています。

サービスの方はみなプロフェッショナルで質問にも丁寧に答えてくれますし、基本的に手厚いサービスをしていただいて不満なところはほとんどありませんでした。
この日は一番乗りで3階のカウンター席をいただきました。天気はあいにくでしたが窓が大きくとられているので隅田川、スカイツリーが一望できる素晴らしいロケーションです。

高級店でカウンターというとちょっと安っぽいイメージをもたれるかもしれませんが、落ち着いた黒色の石材を用いた大きなカウンターで不思議と落ち着く空間ができていました。
1人なら当然カウンターで気楽に景色を眺めながらランチを楽しむのでよいでしょうし、2人でも楽しく食事できること請け合いだと思います。実際この日サルはほぼ満席でお隣のカウンター席には有閑マダムお二人が楽しそうにシャンパンでランチを楽しまれていました。
これまで同店では比較的皿数が多いコースをお昼にも提供してきたようですが、この夏から少し短めのコースも出すようになったようで、今回のレストランウィークのコースと皿数としては同じものかもしれません。アミューズ、前菜、メイン、デザートとお茶という内容でいずれもおまかせというコースがこの日いただいたものでした。
料理全体の感想をまず述べると、それぞれに丁寧な調理がされていてさすが名だたるお店でシェフをされてきた方のお料理と感じることができました。窓から降り注ぐ光に映えてお料理もとてもきれいでした。
一方で味は繊細で美味しいのですが、味付けが淡白なものが多くて、またどこかありきたりな感じもして印象に残りにくいとの感想をもちました。言葉は良くないですが、素材や調理技法のエネルギーが感じにくかったといえばよいでしょうか。

アミューズは浅草の職人さんに敬意を表した内容になっていて個人的には雷おこしとフランス産バターにアンチョビが載ったものが塩気と魚介の香り、バターのこく、かりっとした食感それぞれがいいバランスでできていて好きでした。ただ、アミューズそれぞれには多少の調理が施されているものの、既製品を使っている部分が多く少し手抜きしている感があったのは残念でした。
また茄子のブルーテについてはさらさらとなめらかで美味しかったのですが、スプーンではなく器を両手でもって飲み干すというかなり斬新な方法を強制されていてこのあたりも少し違和感を感じました。器や道具によって味が変わると思いますが、ここはコードを破らずにスプーンを提供して欲しかったです。

サーモンについては可もなく不可もなく、美味しく上質なことはわかりましたがインパクトが少なかったです。

メインの豚肉料理はコンフィにしてあって提供の温度は低めでした。黒コショウのオイルと一緒にいただくと丁度いい具合の味になったように思います。
つけあわせそれぞれが凝っていてさすがと思いました。温かい栗粉のベイニェは美味しいですし、フルムダンベールのクリームと洋梨をアンディーブに載せたものは味が濃厚でチーズの前味を楽しむことができました。ただロブション風というかぼちゃのピュレは身質がじゃがいもと違うかぼちゃを同じ調理法で調理しても同じような美味しさにはならないと感じてちょっと残念でした。ロブション風とついているとどうしてもロブション氏のジャガイモのピューレをイメージしてしまうので期待が高まってしまう分残念感の方が大きかったです。
デザートについてはコースが安いコースだったためか、現代風から古典に逆戻りしたような郷土菓子で少し物足りなさを感じました。
とはいえいちじくのコンポートは自然な甘味でいちじく自体の質もよいのでしょう、美味しくいただけました。
お茶はフレッシュハーブティー(ミント、レモングラス、大葉)をお願いします。先日の「スブリム」ほどの感激はないですが、美味しくお代わりまでいただいてきました。
小菓子として出されたのが現代風のクレームブリュレでこれは面白い趣向でした。デザートの古典から一気に現代に引き戻された気がしました。

最後になりますが、こちらはフランスから種を輸入しているというパンの美味しさがすばらしいです。さらに気前よく盛られたポワティエ産の芳醇なバターもさらにパンを美味しくしてくれました。温めてパンを出すお店は多いですが、こちらでは熱々で提供してくれますのでさらにおいしく感じました。パンは結局4ついただいて、パンだけでもかなりおなかがふくれてしまいました。
色々と小言も書きましたが、最後もシェフがお見送りをしてくださり、感じるところがありました。次回はより真価がわかるであろう長めのコースで再訪問できればと思います。
(いただいたもの)
ランチコース(フランスレストランウィーク特別メニュー)
アミューズブッシュ:
長茄子を素揚げにし、コクのある貝のブイヨンで温かいクリアヴルーテに焼茄子のタルタルを潜ませ、生姜の香るターメリックのエキュームを浮かべて
近隣老舗(大心堂、種亀)とのコラボスナックとアントナン風グリーンオリーヴのマリネ
サーモン(前菜):
ニュージーランド産オーラキングサーモン、マリネして竹本油脂太白オイルコンフィ
ウォッカの香る自家製イクラとシャインマスカットを散らしヴェロニック風に、鮭魚醤入り冷たいソースオゼイユとアネットのピストゥーを添えて
ポー(メイン):
栃木県産ハーブ豚ロース、純米酒でマリネし64℃でしっとりと加熱
バッハコーヒーの香るなめらかな栗カボチャのピュレ ジョエル・ロブション風
薫り高いジュ・ド・ポーとマダガスカル産生黒胡椒オイルをアクセントに
アンディーヴとポワール、フルムダンベールのサラダ添え
デセール:
ブルターニュ伝統菓子ファー ブルトン
黒イチジク、スパイスと赤ワインでコンポートにし、
セルゲランドでアクセントをつけた磨き白胡麻のグラスと共に
カフェ:
フレッシュハーブティー(ミント、レモングラス、大葉)
フランスレストランウィークで通常とは異なるショートコースの提案があったためこちらを選んでうかがってきました。浅草という多少都心から離れた立地のために通常のコースでは時間がかかりすぎるのでなかなか行く機会が見つけられませんでした。
この日は都営線が止まっていたため浅草橋から歩いて浅草を目指します。その道すがらお店の場所を確認して少し浅草観光をしてお店に戻ってきました。
浅草寺には天候が良くない日だったにも関わらずけっこうな人出がありますね。多くは外国人観光客ということだと思います。しかしその人出もあいまって浅草寺の境内には独特のにぎわいがあります。本当に久しぶりに浅草を訪れて少しだけ観光気分を味わうことができました。

お店には時間より早く到着して早め早めにサービスをしてもらうようにお願いしました。
まずはオーナーシェフの渡邊氏が一階にあるガラス張りの厨房からあいさつに出てこられました。テレビで拝見した通りとても気さくな方という印象です。ジョエル・ロブション氏のもとで彼を支えたシェフということだけで個人的には好感度が高くなります。
サルは上層の2階、3階部分を使っていて広くはないですが高級店の落ち着いた雰囲気が漂っています。

サービスの方はみなプロフェッショナルで質問にも丁寧に答えてくれますし、基本的に手厚いサービスをしていただいて不満なところはほとんどありませんでした。
この日は一番乗りで3階のカウンター席をいただきました。天気はあいにくでしたが窓が大きくとられているので隅田川、スカイツリーが一望できる素晴らしいロケーションです。

高級店でカウンターというとちょっと安っぽいイメージをもたれるかもしれませんが、落ち着いた黒色の石材を用いた大きなカウンターで不思議と落ち着く空間ができていました。
1人なら当然カウンターで気楽に景色を眺めながらランチを楽しむのでよいでしょうし、2人でも楽しく食事できること請け合いだと思います。実際この日サルはほぼ満席でお隣のカウンター席には有閑マダムお二人が楽しそうにシャンパンでランチを楽しまれていました。
これまで同店では比較的皿数が多いコースをお昼にも提供してきたようですが、この夏から少し短めのコースも出すようになったようで、今回のレストランウィークのコースと皿数としては同じものかもしれません。アミューズ、前菜、メイン、デザートとお茶という内容でいずれもおまかせというコースがこの日いただいたものでした。
料理全体の感想をまず述べると、それぞれに丁寧な調理がされていてさすが名だたるお店でシェフをされてきた方のお料理と感じることができました。窓から降り注ぐ光に映えてお料理もとてもきれいでした。
一方で味は繊細で美味しいのですが、味付けが淡白なものが多くて、またどこかありきたりな感じもして印象に残りにくいとの感想をもちました。言葉は良くないですが、素材や調理技法のエネルギーが感じにくかったといえばよいでしょうか。

アミューズは浅草の職人さんに敬意を表した内容になっていて個人的には雷おこしとフランス産バターにアンチョビが載ったものが塩気と魚介の香り、バターのこく、かりっとした食感それぞれがいいバランスでできていて好きでした。ただ、アミューズそれぞれには多少の調理が施されているものの、既製品を使っている部分が多く少し手抜きしている感があったのは残念でした。
また茄子のブルーテについてはさらさらとなめらかで美味しかったのですが、スプーンではなく器を両手でもって飲み干すというかなり斬新な方法を強制されていてこのあたりも少し違和感を感じました。器や道具によって味が変わると思いますが、ここはコードを破らずにスプーンを提供して欲しかったです。

サーモンについては可もなく不可もなく、美味しく上質なことはわかりましたがインパクトが少なかったです。

メインの豚肉料理はコンフィにしてあって提供の温度は低めでした。黒コショウのオイルと一緒にいただくと丁度いい具合の味になったように思います。
つけあわせそれぞれが凝っていてさすがと思いました。温かい栗粉のベイニェは美味しいですし、フルムダンベールのクリームと洋梨をアンディーブに載せたものは味が濃厚でチーズの前味を楽しむことができました。ただロブション風というかぼちゃのピュレは身質がじゃがいもと違うかぼちゃを同じ調理法で調理しても同じような美味しさにはならないと感じてちょっと残念でした。ロブション風とついているとどうしてもロブション氏のジャガイモのピューレをイメージしてしまうので期待が高まってしまう分残念感の方が大きかったです。
デザートについてはコースが安いコースだったためか、現代風から古典に逆戻りしたような郷土菓子で少し物足りなさを感じました。
とはいえいちじくのコンポートは自然な甘味でいちじく自体の質もよいのでしょう、美味しくいただけました。
お茶はフレッシュハーブティー(ミント、レモングラス、大葉)をお願いします。先日の「スブリム」ほどの感激はないですが、美味しくお代わりまでいただいてきました。
小菓子として出されたのが現代風のクレームブリュレでこれは面白い趣向でした。デザートの古典から一気に現代に引き戻された気がしました。

最後になりますが、こちらはフランスから種を輸入しているというパンの美味しさがすばらしいです。さらに気前よく盛られたポワティエ産の芳醇なバターもさらにパンを美味しくしてくれました。温めてパンを出すお店は多いですが、こちらでは熱々で提供してくれますのでさらにおいしく感じました。パンは結局4ついただいて、パンだけでもかなりおなかがふくれてしまいました。
色々と小言も書きましたが、最後もシェフがお見送りをしてくださり、感じるところがありました。次回はより真価がわかるであろう長めのコースで再訪問できればと思います。
(いただいたもの)
ランチコース(フランスレストランウィーク特別メニュー)
アミューズブッシュ:
長茄子を素揚げにし、コクのある貝のブイヨンで温かいクリアヴルーテに焼茄子のタルタルを潜ませ、生姜の香るターメリックのエキュームを浮かべて
近隣老舗(大心堂、種亀)とのコラボスナックとアントナン風グリーンオリーヴのマリネ
サーモン(前菜):
ニュージーランド産オーラキングサーモン、マリネして竹本油脂太白オイルコンフィ
ウォッカの香る自家製イクラとシャインマスカットを散らしヴェロニック風に、鮭魚醤入り冷たいソースオゼイユとアネットのピストゥーを添えて
ポー(メイン):
栃木県産ハーブ豚ロース、純米酒でマリネし64℃でしっとりと加熱
バッハコーヒーの香るなめらかな栗カボチャのピュレ ジョエル・ロブション風
薫り高いジュ・ド・ポーとマダガスカル産生黒胡椒オイルをアクセントに
アンディーヴとポワール、フルムダンベールのサラダ添え
デセール:
ブルターニュ伝統菓子ファー ブルトン
黒イチジク、スパイスと赤ワインでコンポートにし、
セルゲランドでアクセントをつけた磨き白胡麻のグラスと共に
カフェ:
フレッシュハーブティー(ミント、レモングラス、大葉)
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