レストラン訪問記:浅草「オマージュ」(★★)

昨年発刊のミシュラン東京最新版にて二つ星に昇格されたシェフのお店へ。以前散歩番組で紹介されていて、その時点ではすでに星付き店だったため存在は知ってはいましたが、テレビで見る限りなかなかいい雰囲気だった記憶がありました。
浅草ですが観音裏というのでしょうか浅草寺、浅草神社がある一角のさらに奥のエリアで交通はあまり便が良いとは言えない場所にあります。しかし平日のこの日、お隣の一卓を除いて全卓が埋まる盛況ぶりで人気のほどがうかがえました。お店に到着した時点では先客一組で反対側の遠い場所にいらしたので最初は静かさを堪能できましたが、次第ににぎやかになっていきました。

一階が受付とトイレになっていて、サルは二階にあります。映像ではあまり広い印象はありませんでしたが、思っていたよりは狭い感じがありません。客席の間が多少ゆったりととられているようです。
サービスはシェフの奥様と男女一名ずつのスタッフの方が担当されていて、料理の説明含めてみなさんきちんとされています。奥様は和装で接客されていて、これは以前テレビで見た際もそうだったと思いますが、外国人のお客様には特にアピールするのではないかと思います。
お店にうかがう時には基本的には他の人のブログや料理写真などを見ずに行くので、自分にとって合うか合わないか、好みか好みでないかについて先入観なく判断できるようです。この日もどんなものが出てくるのか、どういうスタイルなのかについてほぼ知識がない状態でうかがったのですが、お店の中でしつらえやお料理などに触れていく中で、自分にとってはかなりしっくりくるところが多くて、相性の良い、好みのお店だと勝手に思うようになりました。

飾り皿と食前酒
予約を約一か月前にしていて早かったせいもあるかもしれませんが、コーナーの落ち着く席に通していただきましたし、飾り皿の色が好みのターコイズブルーであったり、お魚も好みの真名鰹が用意されていたりと細かいことまで挙げていくとしっくりくるところが色々とありました。肝心のお料理もやや塩味が強いとも思える点も含めていい味付と食材の選択や料理の流れなどにシェフの細やかな心遣いを感じることができたように思えて、個人的に大変好みでした。
ただ一点、写真を撮っていて食べるベストタイミングを失しているかもしれない私がいうのもなんですが、料理の提供温度が冷たいものはより冷たく、温かいものはより熱々で出していただけるとより評価が高いかもしれないと思いました。
というのも、最初に出していただいた全粒粉のパンは熱々での提供でシンプルな味ですが質の高さが感じられてとても美味しかったですし、最後の甘味として出された自家製のフィナンシェは焼き立てでバターの風味が立っていてことのほか美味しかったため、お料理についてもより徹底されると印象がさらに上がると感じたからでした。
しっかりとすべて余すところなくいただいて大満足してお店をあとにしました。最後には奥様とシェフがわざわざお見送りして頂いて恐縮でした。是非これからもがんばって素敵な味を提供し続けていただきたいと思います。
(いただいたもの)
ランチコース

全粒粉のパンとオリーブオイル
パン二種類(オリーブオイルと):全粒粉/バゲット
お水:キャラフで…(=浅草の美味しいお水)
食前酒:季節のシャンパンカクテル(梅とりんごのカクテル)
→ 梅の酸が強いお酒かと思いきやりんごの甘味が結構あり美味しいです。欲を言えばもう少し量が欲しいところでした。飲み干す段階でほのかに梅の香りがして爽やかで気持ち良いですね。甘味で出されるプラムのアイスと重なるこの季節らしい果実の香りが楽しめて良い体験でした。
アミューズブーシュ

シャンパンスナック四種(手前から時計回りに。食べる順もこの順番でとのこと。)
・キュウリとクラゲ ヨーグルトのジュレ クミンのせ
・ウズラの玉子 土佐酢漬けのピクルス 鰹節とゆかりの自家製ふりかけでくるんで
・馬肉タルタルの春巻
・ひよこ豆のコロッケ テットドフロマージュ
→ この中では個人的には馬肉のタルタルが旨味がたっぷりあってとても美味しく好みでした。

一口スープ:ドルチェドリーム(トウモロコシ)の冷製スープ(二層)(上:スープ、下:焼きトウモロコシムース コーヒー粉かけ)
→ 甘くて美味です。焼きトウモロコシの香りもしっかりしますし、繊細でとてもいいお味でした。

冷前菜:ガスパチョ
(コンソメジュレとトマト水でガスパチョを表現しています。液体の中、左はアオリイカのタルタル、右はアボカドとトマトのサラダになっています。また下に蓴菜(じゅんさい)が忍ばせてあり、外のオレンジと緑の色合いは、ラー油とパクチーオイルです。)
→ 全体で特製ガスパチョが完成する形で面白いです。蓴菜やアオリイカなどの季節の食材が楽しめてとても贅沢な一品でした。またオイルだけではないパクチーの葉もわずかに入っていて好みが分かれるかもしれません。冷たい味がこの季節うれしいです。一方で食べ手もガスパチョの原型を知らないと再構築されたここのガスパチョがスタンダードなものだと覚えてしまうおそれがあるかもしれません。美観がいま一つなのが玉に瑕でしょうか。

真名鰹
(シェンダン(アヒルの卵の塩漬け)で包んで ズッキーニのリゾット添え アスパラのソース(緑)とブイヤベースのソース(赤))
→ やや塩味が強目ですが、焼き加減絶妙でとても美味しく調理されていいました。また、お魚の鮮度や状態もとても良いものだと感じます。真名鰹は繊細な身でほろほろしているお魚で大変好みです。他の卓では鯖が提供されていたようですが、(コースの違いのせいなのか食材の数が限られていたためなのか不明なのですが)ここで巡り合えた幸せに感謝でした。緑のアスパラのソースの青臭さがまた良いですね。先日のバルデ氏の賞味会(こちらではグリーンピースでした)でも感じましたが、春夏の野菜の強い香りは苦味などとともにこの季節を感じさせてくれる味として大いに楽しめます。

村越シャモロック
(右上:モモ肉、左下:胸肉 ヴェルヴェーヌのラケ、真ん中:臓物(レバー、ハツ、砂肝)と玉葱のカネロニ 泡状のヴァンジョーヌソースがけ 黒トリュフとフォワグラのコロッケ 揚げおかひじき添え)
→ お魚で十分満足していましたが、さらに期待を超える一品が届けられてテンションが上がります。おまけにシェフ自らきれいな泡のソースをもって登場して丁寧に料理に回しかけていただきました。こうしてお客さんはシェフと一度は必ずごあいさつできることになっています。昨年「フロリレージュ」でほろほろ鳥をいただいた時のように焼いたものが出されるだけと思っていたら、各種部位がきれいに調理されたものが出されてかなりお得な気分になりました。脂分があるモモの部分はやはり美味しいですが、異なった歯ごたえと風味を楽しめる臓物を贅沢なヴァンジョーヌソースで食べることができたカネロニにやられてしまいました。とても楽しい食体験でした。トリュフのコロッケは濃密なトリュフの香りがたまらない一品です。ソース状になっているトリュフソースをお肉につけて食べる食べ方も楽しかったです。
甘味
一口アヴァンデセール:雷おこし風ブランマンジェ
デセール:プラムのアイスクリーム キャラメルソースとアングレーズソース
焼き菓子各種 (ミニカヌレ、ご近所さんのかりんとう、人形焼きの型で焼いたフィナンシェ)
フレッシュハーブティー(ミントとレモンバーム)
→ 雷おこしのブランマンジェはしっかり雷おこしの風味がします。また、梅の食前酒で始まり同系統の果実であるプラムのアイスで締めるということで偶然とはいえ、とてもいい流れのお食事でした。フィナンシェは焼き立てて温かく、バターの風味が立っていて本当においしいです。余ったものはお持ち帰り用に包んでくれますので是非お店の方のご厚意に甘えましょう。ハーブティーについては特に話していませんでしたが、デフォルトでフレッシュハーブティーが出てきてやはりこちらのお店とは相性がいいと感じます。またミニポットは結構量が入っているので何杯も楽しめて最後まで充実していていうことなしでした。
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