2019年秋フランスレストラン訪問記(9/9)(1):ヴァランス「ピック」(★★★)
約1年前にフランスを旅行した際の記録ですが、ようやく今回で最後のレストランとなります。忙しさにかまけて最初の記事からここまでとても時間がかかってしまい、お待たせした方々には申し訳なく思います。
この旅行では9軒の星付き店を訪れました。記事は評価の低い順から掲載してきました。振り返ると以下のような並びになります。
パリ「プロポ」(★)
パリ「ピエール・ガニエール」(★★★)
アメルシュヴィール「ジュリアン・ビンツ」(★)
ランス「フォッシュ」(★)
ランス「ラシエットシャンプノワーズ」(★★★)
オベルネ「ラ・フルシェット・デ・デュック」(★★)
カイゼルクベルク「オリヴィエ・ナスティ」(★★)
ヴァンジャン・シュル・モデ「ヴィラ・ルネ・ラリック」(★★)(1)
ヴァンジャン・シュル・モデ「ヴィラ・ルネ・ラリック」(★★)(2)
ヴァランス「ピック」(★★★)
必ずしも星の数と評価の高低が一致しないのがお分かりいただけると思います。あくまで私の主観による評価ですので、お気に召さない方がいらっしゃるのも重々承知です。ご了解下さい。
ひとまずこの順位付けは私だけの極めて個人的な評価として受け取って下さればと思います。記事をお読みいただけましたら何故低いあるいは高い評価をしているのかは、共感されなくとも一応御理解していただけるのではと思います。
前置きが長くなりました。本題の「ピック」ですが、言わずとしれたフランスの老舗レストランの中でも名門中の名門といえるお店です。現在のオーナーシェフ、アンヌ−ソフィ・ピック氏の祖父、父ともに同店のオーナーシェフとしてミシュラン三つ星の栄に浴しています。
フランスには築年数でいうと数百年ともなるような歴史的建造物をレストランに転用している場所がいくつもあり、外国から訪れる客からするとそうした建物が醸し出す独特の味わいにはやはり一つ大きな価値を感じます。
ただ三世代に渡って三つ星をとって今なお三つ星レストランとして営業しているお店はここ「ピック」くらいしか思い当たりません。これはこれでとても大きな価値であり、三つ星シェフの稀少さからいうと、歴史的建物が現存している以上に価値あることのように思えます。
ただもしトロワグロやエーベルランといった代々同じ家のシェフが引き継いで三つ星を獲得してきた地方の老舗レストラン(エーベルランのお店は現在は二つ星に降格)に比べて知名度が劣るとしたら、おそらく祖父から父、そして父からアンヌ−ソフィ氏という各世代間に三つ星を獲得できなかった谷間のような時代があって、連続して三つ星を獲得し続けたわけではなかった点に理由があるかもしれません。
とはいえ「ピック」伝来の名物料理というのは現在も色々と提供されているようですので、そうした料理を頂けば店の歴史の一端を体感することができるのではないかと思います。
1995年のミシュランで三つ星を失って以降、アンヌ−ソフィ・ピック氏がシェフとして厨房を仕切るようになってからしばらく二つ星の時代が続いていましたが、2007年のミシュランで三つ星に到達して、それ以来その評価を現在まで維持し続けています。
代々家族経営でやってきた老舗レストランの星付き店となると、開拓者であった偉大な先代が得た大きな評価を維持できない下の世代という印象があるのですが(ブラスやエーベルランなど)、アンヌ−ソフィ氏が三つ星シェフだった先代の父を亡くされたのはまだ自身が子供の頃だったはずで、ある意味たたき上げでここまでいらした方ですので、上の見方は必ずしも当てはまらないかと思います。

レストラン・ホテル共通のエントランス
この入口を入って右手にあるレセプションは店の格や規模からすると少し小さい感じがしますが、奥に行くにつれて余裕あるスペース広がっていてくつろげるようになっています。
またレストランのサルに向かう廊下は別世界の入口のような独特な雰囲気があって、これから始まる食事への期待が高まる仕掛けになっているように感じました。以下の三枚の写真を見ていただいてイメージできるでしょうか。一枚目、二枚目の写真の奥を見ると次の間の模様だったり色合いだったりがほのかに見えているのがお分かりになると思います。少しずつサルに向かって奥に進んでいますが、写真のように少しずつ見える景色が変わっていきます。



最後の写真の間を抜けるとそこが不規則な形のサルになっています。
この日はランチでの訪問で当然一人客としてそこにいましたが、奥のサルの隅にひっそりとした席を設けてもらっていて、人の往来がまあまああるのですが、落ち着いて食事できる環境で不満はありませんでした。

この日は平日でしたがランチはほぼ満卓でした。世界中からお客さんがやって来ている印象ですね。

卓上の光景(ランチコースを記載した紙片と食前酒、水のグラス)
ランチのコースをお願いすることにして、ここにチーズを追加しました。
三つ星のランチともなるとそれ相応の値段ではありますが、内容が充実しているため、食後には得した気分になれました。

卓上のお花
サービスの方々は皆様親切であり、的確なサービスをして下さいました。若い女性のサービスの方もとてもしっかりしていたように思います。
また日本人のソムリエの方もいらして、お相手下さいました。少し余裕がない印象もあり、サービスマンとしてはどうだろうと思うところがなきにしもあらずでしたが、不快な印象はありませんでした。まあ異国の地で仕事をされるのは色々と大変でしょう。
飲物ですが、水はヴィッテルで、お酒はいずれもグラスで頂きました。

ワインリストと食前酒のある卓上風景
グラスワインが結構充実していて、一人客でも十二分に楽しめるようになっていますね。

グラスワインリスト(左ページ)
シャトーグリエもリストにありますね。一杯100ユーロは妥当な値付けでしょうか。

グラスワインリスト(右ページ)
食前酒、白、赤だけではなく日本酒(松本酒造(京都)・守破離(五百万石)、小野酒造(広島)・5年熟成秘蔵老亀(八反錦))、各種デザートワイン(ミュスカやマデイラ、ポートなど)まで一通り以上に揃っています。食後酒はまた別のリストがあるのでしょうか。
食前酒はピックのアペリティフメゾン(特製カクテル)があるとのことでしたのでお願いします。アペリティフメゾンは特に置いていないお店も多いですが、もしあればお勧めに従って注文するようにしています。間違いなくそこでしか頂けない味なはずですから。

Apéritif Maison
(食前酒)「ピック」特製食前酒
(ラム酒、レモンシロップ、蜂蜜シロップとシャンパンを使用したカクテル)
苦味を若干感じるものの、甘味や蜂蜜の自然な風味も感じられる素敵な一杯でした。大人の食前酒という風格があります。

Condrieu domaine BOTT 2018
(白ワイン)コンドリユー ドメーヌ・ボット 2018年
まだ浅いのですが華やかな香りがあり、微かな蜜を感じさせるコンドリユーらしい素敵なワインでした。常温での提供に近かったのですが、個人的な好みではもう少し冷やしておいて欲しかったです。

Condrieu « Candice » S. Montez 2016
(白ワイン(甘口))コンドリユー “カンディス” エス・モンテズ 2016年
日本人ソムリエの方によるとローヌのワインは2016年が当たり年とのことでした。気持ち良い甘みやコンドリユーらしい華やかな香りもあってこちらも大変気に入りました。
後半はお料理について書きたいと思います。
(いただいたもの)
ランチコース(チーズ、お茶は追加料金で)120€
L’AMUSE BOUCHE
アミューズブーシュ
LE CERFEUIL TUBEREUX
jaune d’œuf confit
crémeux de maïs à la reine des près
チャービル
玉子の黄身のコンフィ
トウモロコシのクリーム セイヨウナツユキソウの香り
LA LOTTE RÔTIE A LA CAMOMILLE
consommé de choux et cédrat
pomme de terre délicatesse confite
鮟鱇のロースト カモミール風味
キャベツと仏手柑のコンソメスープ
やさしくコンフィしたじゃがいも
FROMAGE FRAIS ET AFFINÉS
各種チーズ
プレデセール
LA POMME, LE GERANIUM ROSAT ET LA BAIE DES BATAKS
déclinaison de pomme et crémeux au géranium rosat
glace royale à la baie des Bataks
林檎、ニオイテンジクアオイ、バタクの実
林檎尽くし ニオイテンジクアオイの香るクリーム
バタクの実のアイシング
MIGNARDISES
小菓子
INFUSION
フレッシュハーブティー(ミント)
飲物(お酒はいずれもグラスで)
食前酒:
Apéritif Maison
「ピック」特製食前酒
白ワイン:
Condrieu domaine BOTT 2018
コンドリユー ドメーヌ・ボット 2018年
白ワイン(甘口):
Condrieu « Candice » S. Montez 2016
コンドリユー “カンディス” エス・モンテズ 2016年
水(Vittel)
この旅行では9軒の星付き店を訪れました。記事は評価の低い順から掲載してきました。振り返ると以下のような並びになります。
パリ「プロポ」(★)
パリ「ピエール・ガニエール」(★★★)
アメルシュヴィール「ジュリアン・ビンツ」(★)
ランス「フォッシュ」(★)
ランス「ラシエットシャンプノワーズ」(★★★)
オベルネ「ラ・フルシェット・デ・デュック」(★★)
カイゼルクベルク「オリヴィエ・ナスティ」(★★)
ヴァンジャン・シュル・モデ「ヴィラ・ルネ・ラリック」(★★)(1)
ヴァンジャン・シュル・モデ「ヴィラ・ルネ・ラリック」(★★)(2)
ヴァランス「ピック」(★★★)
必ずしも星の数と評価の高低が一致しないのがお分かりいただけると思います。あくまで私の主観による評価ですので、お気に召さない方がいらっしゃるのも重々承知です。ご了解下さい。
ひとまずこの順位付けは私だけの極めて個人的な評価として受け取って下さればと思います。記事をお読みいただけましたら何故低いあるいは高い評価をしているのかは、共感されなくとも一応御理解していただけるのではと思います。
前置きが長くなりました。本題の「ピック」ですが、言わずとしれたフランスの老舗レストランの中でも名門中の名門といえるお店です。現在のオーナーシェフ、アンヌ−ソフィ・ピック氏の祖父、父ともに同店のオーナーシェフとしてミシュラン三つ星の栄に浴しています。
フランスには築年数でいうと数百年ともなるような歴史的建造物をレストランに転用している場所がいくつもあり、外国から訪れる客からするとそうした建物が醸し出す独特の味わいにはやはり一つ大きな価値を感じます。
ただ三世代に渡って三つ星をとって今なお三つ星レストランとして営業しているお店はここ「ピック」くらいしか思い当たりません。これはこれでとても大きな価値であり、三つ星シェフの稀少さからいうと、歴史的建物が現存している以上に価値あることのように思えます。
ただもしトロワグロやエーベルランといった代々同じ家のシェフが引き継いで三つ星を獲得してきた地方の老舗レストラン(エーベルランのお店は現在は二つ星に降格)に比べて知名度が劣るとしたら、おそらく祖父から父、そして父からアンヌ−ソフィ氏という各世代間に三つ星を獲得できなかった谷間のような時代があって、連続して三つ星を獲得し続けたわけではなかった点に理由があるかもしれません。
とはいえ「ピック」伝来の名物料理というのは現在も色々と提供されているようですので、そうした料理を頂けば店の歴史の一端を体感することができるのではないかと思います。
1995年のミシュランで三つ星を失って以降、アンヌ−ソフィ・ピック氏がシェフとして厨房を仕切るようになってからしばらく二つ星の時代が続いていましたが、2007年のミシュランで三つ星に到達して、それ以来その評価を現在まで維持し続けています。
代々家族経営でやってきた老舗レストランの星付き店となると、開拓者であった偉大な先代が得た大きな評価を維持できない下の世代という印象があるのですが(ブラスやエーベルランなど)、アンヌ−ソフィ氏が三つ星シェフだった先代の父を亡くされたのはまだ自身が子供の頃だったはずで、ある意味たたき上げでここまでいらした方ですので、上の見方は必ずしも当てはまらないかと思います。

レストラン・ホテル共通のエントランス
この入口を入って右手にあるレセプションは店の格や規模からすると少し小さい感じがしますが、奥に行くにつれて余裕あるスペース広がっていてくつろげるようになっています。
またレストランのサルに向かう廊下は別世界の入口のような独特な雰囲気があって、これから始まる食事への期待が高まる仕掛けになっているように感じました。以下の三枚の写真を見ていただいてイメージできるでしょうか。一枚目、二枚目の写真の奥を見ると次の間の模様だったり色合いだったりがほのかに見えているのがお分かりになると思います。少しずつサルに向かって奥に進んでいますが、写真のように少しずつ見える景色が変わっていきます。



最後の写真の間を抜けるとそこが不規則な形のサルになっています。
この日はランチでの訪問で当然一人客としてそこにいましたが、奥のサルの隅にひっそりとした席を設けてもらっていて、人の往来がまあまああるのですが、落ち着いて食事できる環境で不満はありませんでした。

この日は平日でしたがランチはほぼ満卓でした。世界中からお客さんがやって来ている印象ですね。

卓上の光景(ランチコースを記載した紙片と食前酒、水のグラス)
ランチのコースをお願いすることにして、ここにチーズを追加しました。
三つ星のランチともなるとそれ相応の値段ではありますが、内容が充実しているため、食後には得した気分になれました。

卓上のお花
サービスの方々は皆様親切であり、的確なサービスをして下さいました。若い女性のサービスの方もとてもしっかりしていたように思います。
また日本人のソムリエの方もいらして、お相手下さいました。少し余裕がない印象もあり、サービスマンとしてはどうだろうと思うところがなきにしもあらずでしたが、不快な印象はありませんでした。まあ異国の地で仕事をされるのは色々と大変でしょう。
飲物ですが、水はヴィッテルで、お酒はいずれもグラスで頂きました。

ワインリストと食前酒のある卓上風景
グラスワインが結構充実していて、一人客でも十二分に楽しめるようになっていますね。

グラスワインリスト(左ページ)
シャトーグリエもリストにありますね。一杯100ユーロは妥当な値付けでしょうか。

グラスワインリスト(右ページ)
食前酒、白、赤だけではなく日本酒(松本酒造(京都)・守破離(五百万石)、小野酒造(広島)・5年熟成秘蔵老亀(八反錦))、各種デザートワイン(ミュスカやマデイラ、ポートなど)まで一通り以上に揃っています。食後酒はまた別のリストがあるのでしょうか。
食前酒はピックのアペリティフメゾン(特製カクテル)があるとのことでしたのでお願いします。アペリティフメゾンは特に置いていないお店も多いですが、もしあればお勧めに従って注文するようにしています。間違いなくそこでしか頂けない味なはずですから。

Apéritif Maison
(食前酒)「ピック」特製食前酒
(ラム酒、レモンシロップ、蜂蜜シロップとシャンパンを使用したカクテル)
苦味を若干感じるものの、甘味や蜂蜜の自然な風味も感じられる素敵な一杯でした。大人の食前酒という風格があります。

Condrieu domaine BOTT 2018
(白ワイン)コンドリユー ドメーヌ・ボット 2018年
まだ浅いのですが華やかな香りがあり、微かな蜜を感じさせるコンドリユーらしい素敵なワインでした。常温での提供に近かったのですが、個人的な好みではもう少し冷やしておいて欲しかったです。

Condrieu « Candice » S. Montez 2016
(白ワイン(甘口))コンドリユー “カンディス” エス・モンテズ 2016年
日本人ソムリエの方によるとローヌのワインは2016年が当たり年とのことでした。気持ち良い甘みやコンドリユーらしい華やかな香りもあってこちらも大変気に入りました。
後半はお料理について書きたいと思います。
(いただいたもの)
ランチコース(チーズ、お茶は追加料金で)120€
L’AMUSE BOUCHE
アミューズブーシュ
LE CERFEUIL TUBEREUX
jaune d’œuf confit
crémeux de maïs à la reine des près
チャービル
玉子の黄身のコンフィ
トウモロコシのクリーム セイヨウナツユキソウの香り
LA LOTTE RÔTIE A LA CAMOMILLE
consommé de choux et cédrat
pomme de terre délicatesse confite
鮟鱇のロースト カモミール風味
キャベツと仏手柑のコンソメスープ
やさしくコンフィしたじゃがいも
FROMAGE FRAIS ET AFFINÉS
各種チーズ
プレデセール
LA POMME, LE GERANIUM ROSAT ET LA BAIE DES BATAKS
déclinaison de pomme et crémeux au géranium rosat
glace royale à la baie des Bataks
林檎、ニオイテンジクアオイ、バタクの実
林檎尽くし ニオイテンジクアオイの香るクリーム
バタクの実のアイシング
MIGNARDISES
小菓子
INFUSION
フレッシュハーブティー(ミント)
飲物(お酒はいずれもグラスで)
食前酒:
Apéritif Maison
「ピック」特製食前酒
白ワイン:
Condrieu domaine BOTT 2018
コンドリユー ドメーヌ・ボット 2018年
白ワイン(甘口):
Condrieu « Candice » S. Montez 2016
コンドリユー “カンディス” エス・モンテズ 2016年
水(Vittel)
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