レストラン訪問記:神戸市(三宮駅)「La Tachi(ラ・ターチ)」(未掲載)
今回、神戸三宮に伺い、カウンター主体のフランス料理店を訪ねてきました。

小さくて、少しイレギュラーな三角形の形をしたサルですが、白を基調とした内装で、窓はそう大きくはないものの外の光がしっかり入ってくる造りで、とても落ち着いた雰囲気です。
正面のオープンキッチンではシェフと助手の若い女性がきびきび動いていて、ライブ感が溢れる感じでもありました。
主にサービスを担当されるのはマダムでしょうか、落ち着いた接客で安定感がありました。また、シェフもカウンターに座った一人一人にきちんと目を見て挨拶をされていて、こういうことを大切にする方はいい仕事をするよなと最初から好感触でした。
サービス料として5%が加算されますが、それに見合うお仕事をきちんとされていると感じましたので、むしろ安く感じたくらいでした。具体的には、一組一組に提供したお料理の説明をきちんとされていたことや、パン皿が空いている状態の時に、客にあえて尋ねたりせずにこれまで通り温めた新鮮なパンをさりげなく提供してくれたことはとても良かったです。

また、カトラリーも最近流行りの右側にまとめて置くタイプでしたが、料理ごとに使用するものをちゃんと取り替えていて、そんなところからも、きちんと客や料理のことを考えてくれているのが伝わってきました。
手抜きのために、これうちのスタイルですからなどといって、客が食事をする楽しみについて全く考えもしないで、10皿もの料理で同じカトラリーを使わせる広島の某店とは大違いです。
お料理は予約時点で希望したおまかせコースで、着席してすぐにスタートしていきます。このお店の定番のつきだしからのスタートでした。

岡山産完全無農薬のニンジンのピュレと弓削牧場のフロマージュフレです。フロマージュフレはいわゆるフロマージュブランでしょう。しっかり酸味を感じました。
ニンジンは甘くて酸味のあるフロマージュフレと良いバランスです。最後はフロマージュが多くて酸味をより感じましたので、次回は食べる際に工夫したいと思います。
続いてのアミューズは、一口タルトでした。食用花を使っていて見た目にいかにも美しい一品でした。


予想外に甘い一品でしたが、ハーブ類の複雑な香りが楽しめて面白かったです。ただ、意外性があって楽しいのは良いのですが、料理が始まっているのだから塩味がした方がよりしっくりいったとは感じていました。
それ以下に続いたお料理も、それぞれのお皿が丁寧に調理されていて、どれも良かったです。中でも一番心に残ったのはやはり、魚介類を使ったサラダでした。


これはシェフの出身である御影の一つ星店「ジュエンヌ」のスペシャリテでもあるようです。
それぞれにきちんと調理された美味しいお野菜が、同じくちゃんとした火入れがされ、味付けされた帆立貝やたこ、剣先烏賊と共にきれいに並べられています。
大皿なので結構なボリュームがあり、インパクトも大きいです。ただ、お皿の4分の1におおよその食材が載る形なので、この4分の3のサイズくらいで量的には丁度良いかなと思ったりもしました。
メインは、お魚で、この日は真魚鰹のローストでした。


最初にこの料理が出てきた時には、日本料理かと思わずつぶやいていました。お魚が小さい点は少し寂しかったですが、上等な魚である真魚鰹を頂けて有り難かったです。
火入れが良く、繊細な身質がちゃんと活かされており、美味しく食べられました。皮にも脂がしっかりあり、美味しさに貢献していました。
このこのソースは、ナマコの卵巣であるこのこの自然の旨みに乗ってしまっている点で手抜きの面がありますが、複雑な旨みがあるので、全体として料理としてはひとまず完成していて、美味しくて文句はありません。
デセールに入る前に締めの一品として炭水化物のお皿を出すのがここの決まりのようです。この日はカレーライスでした。

写真だけ見るとつまらないという感想になるかもしれませんが、神戸牛のコンソメや地元神戸のトマトを使ったりしていて、とても上質な味わいの欧風カレーでした。具が入っていない分、お出汁の美味しさを存分に味わえる一品に仕上がっていました。
お米(神戸市西区産ミルキークイーン)は炊飯器で炊いたものを適当に盛りつけたものではなく、おそらくお鍋でちゃんと時間などを計算して炊きあげたもので、米の性質上もやや粘りがある炊きあがりでしたが、粒の立ち方が炊飯器で炊いたものとは明らかに違いました。
デセールは、小さな一品が時をおいて三品出るという少し変わった形でした。ただ、雑な三種盛りよりははるかにシェフの思いがこもっている感じがして好ましかったです。

まずは、「今年収穫された天然はちみつとヴェルヴェーヌのアイスクリーム スペイン産エクストラヴァージンオリーブオイルがけ」でした。
なめらかでほんのり香るヴェルヴェーヌのアイスクリームはとても美味しくて、一口でファンになりました。手作りのアイスクリームは本当に上質だと改めて思いました。
続く一品は、南高梅のデセールで、季節の梅を堪能する一品でした。種があることをちゃんと客に注意喚起していて、改めてきちんとしたサービスに感心していました。

甘くも、少しだけ酸味がある旬の梅がいい具合にデセールになっていました。先ほどは神戸産フロマージュフレでしたが、こちらではフランス産フロマージュブラン使用でした。
最後のお菓子は、抹茶のクーランと説明を受けました。「ミシェル・ブラス」オリジナルで今や世界的にポピュラーになったデセール、フォンダンショコラの元になったとの説明がサービスの方からあり、シェフの出自が気になりました。
ちなみにサービスの方が言われたのは「フォンダンショコラの元になった」というところだけで、「ミシェル・ブラス」云々は私がここで書き加えた情報になります。

後で、マダムに聞いたところ、シェフはブラスでの修業経験があるという訳ではなかったようでした。
お味は、とろけた抹茶風味のチョコレートが入った焼き菓子で、形態はブラスのフォンダンショコラとは違いましたが、これ自体でお菓子としてとても美味しかったです。
食後のお茶としてハーブティーをお願いしたところ、無農薬バジル科トゥルシーのハーブティーを用意してくれました。

ハーブティーはその時々によって違うようでしたが、トゥルシーが多いとのことでした。
フレッシュではないものの、ちゃんとした味わいのあるハーブティーを淹れて下さって最後まで楽しむことができました。
シェフを始めとしておもてなしの心が感じられましたし、料理も丁寧な調理がされていて、感心しました。今回いただいたのは三種類あるランチコースのうち一番皿数が少ないものでしたが、提供されるお料理の質やサービスの的確さを考えるとかなりお値打ちな感じがあり、また再訪したいと思わせてくれました。
ただ残念だったのは、店内が比較的狭いにも関わらず、全ての席を埋めるように客を入れていたことでした。
アクリル板を設置しているとはいえ、狭い店内の全席に客を入れるのは、この御時世にあっては社会的な理解は得られないのではないでしょうか。実際この日も後半に入店した複数名の客が普通に談笑していました。お気持ちは分かりますが、今の状況だとマスクなしで話している人達はどうしても気になりますね。経営的にはそうしないとやっていられない状況というのは理解できますが。
そのようなわけで、この日は平日なのに満席で、店の人気ぶりから、以上のような点が皮肉にも気になった次第でした。
以上のような理由から、次回訪問はコロナ禍が去った後の方が良いかなと思っています。
(いただいたもの)
ランチコース
アミューズ⑴:岡山産完全無農薬のニンジンのピュレと弓削牧場のフロマージュフレ
アミューズ⑵:花と野草のタルト
前菜:有機野菜のサラダ 宮城産帆立貝 明石産小ダコ 長崎産剣先烏賊
魚料理:真魚鰹のロースト このこ(ナマコの子)のソース ウイキョウとセルフィーユのスプラウト 丹波篠山産完全無農薬赤玉葱
締めの一品:カレーライス(神戸牛のコンソメと神戸市西区産トマト使用。米は同区産ミルキークイーン)
デセール三種:
・今年収穫された天然はちみつとヴェルヴェーヌのアイスクリーム スペイン産エクストラヴァージンオリーブオイルがけ
・南高梅のコンポート フロマージュブラン 南高梅のフリーズドライ 梅のコンフィチュール 青じそのスプラウト
・抹茶のクーラン
食後のお茶:無農薬バジル科トゥルシーのハーブティー
小菓子:なし

小さくて、少しイレギュラーな三角形の形をしたサルですが、白を基調とした内装で、窓はそう大きくはないものの外の光がしっかり入ってくる造りで、とても落ち着いた雰囲気です。
正面のオープンキッチンではシェフと助手の若い女性がきびきび動いていて、ライブ感が溢れる感じでもありました。
主にサービスを担当されるのはマダムでしょうか、落ち着いた接客で安定感がありました。また、シェフもカウンターに座った一人一人にきちんと目を見て挨拶をされていて、こういうことを大切にする方はいい仕事をするよなと最初から好感触でした。
サービス料として5%が加算されますが、それに見合うお仕事をきちんとされていると感じましたので、むしろ安く感じたくらいでした。具体的には、一組一組に提供したお料理の説明をきちんとされていたことや、パン皿が空いている状態の時に、客にあえて尋ねたりせずにこれまで通り温めた新鮮なパンをさりげなく提供してくれたことはとても良かったです。

また、カトラリーも最近流行りの右側にまとめて置くタイプでしたが、料理ごとに使用するものをちゃんと取り替えていて、そんなところからも、きちんと客や料理のことを考えてくれているのが伝わってきました。
手抜きのために、これうちのスタイルですからなどといって、客が食事をする楽しみについて全く考えもしないで、10皿もの料理で同じカトラリーを使わせる広島の某店とは大違いです。
お料理は予約時点で希望したおまかせコースで、着席してすぐにスタートしていきます。このお店の定番のつきだしからのスタートでした。

岡山産完全無農薬のニンジンのピュレと弓削牧場のフロマージュフレです。フロマージュフレはいわゆるフロマージュブランでしょう。しっかり酸味を感じました。
ニンジンは甘くて酸味のあるフロマージュフレと良いバランスです。最後はフロマージュが多くて酸味をより感じましたので、次回は食べる際に工夫したいと思います。
続いてのアミューズは、一口タルトでした。食用花を使っていて見た目にいかにも美しい一品でした。


予想外に甘い一品でしたが、ハーブ類の複雑な香りが楽しめて面白かったです。ただ、意外性があって楽しいのは良いのですが、料理が始まっているのだから塩味がした方がよりしっくりいったとは感じていました。
それ以下に続いたお料理も、それぞれのお皿が丁寧に調理されていて、どれも良かったです。中でも一番心に残ったのはやはり、魚介類を使ったサラダでした。


これはシェフの出身である御影の一つ星店「ジュエンヌ」のスペシャリテでもあるようです。
それぞれにきちんと調理された美味しいお野菜が、同じくちゃんとした火入れがされ、味付けされた帆立貝やたこ、剣先烏賊と共にきれいに並べられています。
大皿なので結構なボリュームがあり、インパクトも大きいです。ただ、お皿の4分の1におおよその食材が載る形なので、この4分の3のサイズくらいで量的には丁度良いかなと思ったりもしました。
メインは、お魚で、この日は真魚鰹のローストでした。


最初にこの料理が出てきた時には、日本料理かと思わずつぶやいていました。お魚が小さい点は少し寂しかったですが、上等な魚である真魚鰹を頂けて有り難かったです。
火入れが良く、繊細な身質がちゃんと活かされており、美味しく食べられました。皮にも脂がしっかりあり、美味しさに貢献していました。
このこのソースは、ナマコの卵巣であるこのこの自然の旨みに乗ってしまっている点で手抜きの面がありますが、複雑な旨みがあるので、全体として料理としてはひとまず完成していて、美味しくて文句はありません。
デセールに入る前に締めの一品として炭水化物のお皿を出すのがここの決まりのようです。この日はカレーライスでした。

写真だけ見るとつまらないという感想になるかもしれませんが、神戸牛のコンソメや地元神戸のトマトを使ったりしていて、とても上質な味わいの欧風カレーでした。具が入っていない分、お出汁の美味しさを存分に味わえる一品に仕上がっていました。
お米(神戸市西区産ミルキークイーン)は炊飯器で炊いたものを適当に盛りつけたものではなく、おそらくお鍋でちゃんと時間などを計算して炊きあげたもので、米の性質上もやや粘りがある炊きあがりでしたが、粒の立ち方が炊飯器で炊いたものとは明らかに違いました。
デセールは、小さな一品が時をおいて三品出るという少し変わった形でした。ただ、雑な三種盛りよりははるかにシェフの思いがこもっている感じがして好ましかったです。

まずは、「今年収穫された天然はちみつとヴェルヴェーヌのアイスクリーム スペイン産エクストラヴァージンオリーブオイルがけ」でした。
なめらかでほんのり香るヴェルヴェーヌのアイスクリームはとても美味しくて、一口でファンになりました。手作りのアイスクリームは本当に上質だと改めて思いました。
続く一品は、南高梅のデセールで、季節の梅を堪能する一品でした。種があることをちゃんと客に注意喚起していて、改めてきちんとしたサービスに感心していました。

甘くも、少しだけ酸味がある旬の梅がいい具合にデセールになっていました。先ほどは神戸産フロマージュフレでしたが、こちらではフランス産フロマージュブラン使用でした。
最後のお菓子は、抹茶のクーランと説明を受けました。「ミシェル・ブラス」オリジナルで今や世界的にポピュラーになったデセール、フォンダンショコラの元になったとの説明がサービスの方からあり、シェフの出自が気になりました。
ちなみにサービスの方が言われたのは「フォンダンショコラの元になった」というところだけで、「ミシェル・ブラス」云々は私がここで書き加えた情報になります。

後で、マダムに聞いたところ、シェフはブラスでの修業経験があるという訳ではなかったようでした。
お味は、とろけた抹茶風味のチョコレートが入った焼き菓子で、形態はブラスのフォンダンショコラとは違いましたが、これ自体でお菓子としてとても美味しかったです。
食後のお茶としてハーブティーをお願いしたところ、無農薬バジル科トゥルシーのハーブティーを用意してくれました。

ハーブティーはその時々によって違うようでしたが、トゥルシーが多いとのことでした。
フレッシュではないものの、ちゃんとした味わいのあるハーブティーを淹れて下さって最後まで楽しむことができました。
シェフを始めとしておもてなしの心が感じられましたし、料理も丁寧な調理がされていて、感心しました。今回いただいたのは三種類あるランチコースのうち一番皿数が少ないものでしたが、提供されるお料理の質やサービスの的確さを考えるとかなりお値打ちな感じがあり、また再訪したいと思わせてくれました。
ただ残念だったのは、店内が比較的狭いにも関わらず、全ての席を埋めるように客を入れていたことでした。
アクリル板を設置しているとはいえ、狭い店内の全席に客を入れるのは、この御時世にあっては社会的な理解は得られないのではないでしょうか。実際この日も後半に入店した複数名の客が普通に談笑していました。お気持ちは分かりますが、今の状況だとマスクなしで話している人達はどうしても気になりますね。経営的にはそうしないとやっていられない状況というのは理解できますが。
そのようなわけで、この日は平日なのに満席で、店の人気ぶりから、以上のような点が皮肉にも気になった次第でした。
以上のような理由から、次回訪問はコロナ禍が去った後の方が良いかなと思っています。
(いただいたもの)
ランチコース
アミューズ⑴:岡山産完全無農薬のニンジンのピュレと弓削牧場のフロマージュフレ
アミューズ⑵:花と野草のタルト
前菜:有機野菜のサラダ 宮城産帆立貝 明石産小ダコ 長崎産剣先烏賊
魚料理:真魚鰹のロースト このこ(ナマコの子)のソース ウイキョウとセルフィーユのスプラウト 丹波篠山産完全無農薬赤玉葱
締めの一品:カレーライス(神戸牛のコンソメと神戸市西区産トマト使用。米は同区産ミルキークイーン)
デセール三種:
・今年収穫された天然はちみつとヴェルヴェーヌのアイスクリーム スペイン産エクストラヴァージンオリーブオイルがけ
・南高梅のコンポート フロマージュブラン 南高梅のフリーズドライ 梅のコンフィチュール 青じそのスプラウト
・抹茶のクーラン
食後のお茶:無農薬バジル科トゥルシーのハーブティー
小菓子:なし
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