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レストラン訪問記:祇園「味ふくしま」(★)

定期的に京都に訪れるようになってからしばらく経ちました。懐かしい思い出も沢山ありつつ、新しいスポットができていたり、見知らぬ史蹟などにも思いがけず出くわしたりするので、京都はいつ行っても飽きることがありません。

京都のカジュアルな料理店にももちろん興味があるのですが、限られた機会ということもあり、よほど観光に時間が取られるというような場合でない限りはやはり和食店に足が向きます。

今年の花の季節から、「京料理藤本」、「祇園かじ正」、「悠々」とミシュラン一つ星で5000円未満で懐石のコースが(まがりなりにも)頂けるお店で食べてきました。

もう一軒、西陣にある「ふじ義」さんが上記設定でコースを提供されているようだったので、電話したところ、二名様から受付とのことで断念しました。コスト計算などあるでしょうが、一人でも客がありがたいはずの時代にあって潔ぎ良すぎるなあとかえって感心しました。京都には星の数ほど和食店がありますから、こちらとは今は少なくとも御縁がなかったものと納得しました。

そのようなわけで今回、5000円未満でランチコースを設定している最後の一つ星店としてこちら「味ふくしま」さんで食事を頂いてきました。こちらはランチはこの一つのコースしか用意されていません。


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某グルメサイトで比較的高めの点が出ていることから少々警戒していったのですが、そんな評価とは関係なく、真面目な料理人の方が誠実にお仕事をして、良いものを提供されているお店でした。祇園の花街の中という素敵な立地にあり、しつらえも良く、とてもくつろぐことができ、美味しい食事とあいまって大満足しました。

警戒対象には、たびたびこのコロナ禍で傍若無人にマスクをせずに大声でしゃべり続ける客の存在というものも含まれていたのですが、この日は平日だったこともあってか小さめのカウンターは他に客はおらず貸切り状態で、それも杞憂に終わりました。


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午前中に寺社参拝は終えていて、午後には寺社に伺う予定がなかったため、久しぶりにビールをお伴にお料理を頂きました。


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お酒は各種美味しそうなものが並んでいました。「風の森」、「松の司」など好みです。一合のお値段を伺いましたが、とてもリーズナブルな値付けでした。


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卓上には簡素な折敷が置かれていました。清潔なおしぼりも気持ちが良いです。


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先付け:毛蟹 ゆば そうめんかぼちゃ

先付けは、湯葉、そうめんカボチャ、毛蟹を和えた一品で、繊細な一品です。それでいて、広島の某フレンチ店と違って、味もしっかり分かり、かつ量もあって満足できました。

湯葉の優しいこくとわさびの辛味、花紫蘇の爽やかな香りが絶妙なバランスで、似た食感の毛蟹やそうめんカボチャと良く絡んでとても美味しく頂けました。


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お椀:鱚と叩きオクラ

懐石の華であるお椀は鱚(店の人も産地不明)と叩きオクラでした。お出汁はやや淡泊な印象でしたが、しつこさがない分とても気持ち良く頂けました。鰹の香りが立っていたように思います。ただ、お椀が少し地味だったのと、お椀の上の方が少しだけ欠けていたのが残念でした。客が少ない(あるいは一人な)のだから、欠けのないお椀を使うこともできただろうにとの思いでした。


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お造り⑴:淡路産鱧の炙り 梅肉 二倍酢

続いてお造りが二種出ます。最初に出てきたのが、旬の鱧で、梅雨が進むにつれて脂が乗ってきているとのことでした。淡泊な鱧ですが、焼き霜にすることで味が少しでも濃縮されるため、より繊細な脂を楽しめました。定番の二種のたれがありましたが、個人的にはさっぱりした二倍酢が好きでした。梅肉がよりポピュラーかもしれませんが、梅肉は香りが強くてそちらが勝ってしまう印象です。


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お造り⑵:瀬戸内産めいたがれいの大間産うにまき 塩 醤油

夏が旬の淡泊なカレイで雲丹を巻いた一品でした。分かりやすいお味で濃厚な雲丹が白身の美味しさを増していました。白身には塩を合わせるのが好きですが、雲丹の濃厚さがあることから、ここで御用意くださったように醤油で頂くのが正解だったように思います。


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炊き合わせ:大阪産丸茄子の揚げ煮 さやえんどう

個人的にはこちらが一番好きなお料理でした。旬の大阪の丸茄子を丁寧に揚げ浸しにしていますが、家庭料理を超越した繊細な味付けで、一口一口が尊い、そんな美味でした。


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おしのぎ:青瓜の寿司

季節の青瓜の浅漬けのお寿司でした。頂いて、口の中も、気持ちもまたさっぱりとしました。


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そろそろお食事かな、でもこの値段だったらあと二品は出るかな、等と考えていたら、目の前に蓋がついたこの籠が置かれ、店員さんが、お弁当ですと言って去っていかれました。

一般的な懐石の流れでは、最後に締めのお食事ということになるので、どんなご飯が出るのだろうと考えていましたので、これは予想を裏切られて、ちょっとした良い方の驚きでした。

ただ籠の隙間から、中身がかすかに垣間見え、なにやら色々なお料理が入っていそうなので、これはもしかして宝箱のようなものかと思って蓋を取ってみました。


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お弁当:鱧と胡瓜の酢の物、カマスの幽庵焼き、生麩田楽、蒸し鮑、枝豆、山桃の蜜煮、大根漬けと昆布、新生姜入り俵むすび、出汁巻き、トウモロコシのかき揚げ、アマゴの南蛮漬け、胡瓜で巻いた錦糸巻き

すると、多彩なおつまみがぎっしり詰まった、文字通り贅沢なお弁当になっていて、一気に気持ちが上がりました。

食事の最初に、八寸としておつまみを出すのが懐石の流れでは定番だと思っていましたが、こうした変化球もまた面白いと思います。流れを知っていたら、もう少しビールを残していたかもしれません。それは次回以降に向けての教訓にしましょう。

青紅葉で飾られたお弁当には、左上から、鱧と胡瓜の酢の物、カマスの幽庵焼き、生麩田楽、蒸し鮑、枝豆、山桃の蜜煮、大根漬けと昆布、新生姜入り俵むすび、真ん中の上から、出汁巻き、トウモロコシのかき揚げ、アマゴの南蛮漬け、胡瓜で巻いた錦糸巻き(アマゴの下。写真では見えず。)がぎっしり詰まっています。

いずれも丁寧に調理されていて美味でした。鮑は柔らかくて味も染みていました。焼いたお麩を食べられたのも良かったです。ただ、トウモロコシのかき揚げは、揚げ立てて出してくれていて美味しかったのですが、火入れにむらがあるせいか少し焦げ付いた部分があったりして、最後まで詰め切れていなかったところが見られたのは残念でした。


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水菓子:長崎の枇杷のコンポート 山梨のさくらんぼ

長崎産枇杷のコンポートと山梨産サクランボが食事の最後に提供されました。枇杷のコンポートはとても甘かったです。またサクランボも甘くて美味しかったので満足でした。


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食後は番茶を2杯頂いてお店を出ました。

店主はとても穏やかな方で、おかげでとても落ち着いて心静かに食事を楽しむことができました。最後はお見送りまでしていただいて恐縮でした。

祇園の真ん中という立地と、落ち着く簡素なしつらえ、店主のおもてなしの心と丁寧に調理されたお料理とで、総じて満足し、安心して家族、友人と訪れることができる名店と認識しました。

また機会がありましたら是非再訪したいと思います。


(いただいたもの)

ランチコース

先付け:毛蟹 ゆば そうめんかぼちゃ

お椀:鱚と叩きオクラ

お造り二種:
・淡路産鱧の炙り 梅肉 二倍酢
・瀬戸内産めいたがれいの大間産うにまき 塩 醤油

炊き合わせ:大阪産丸茄子の揚げ煮 さやえんどう

おしのぎ:青瓜の寿司

お弁当:鱧と胡瓜の酢の物、カマスの幽庵焼き、生麩田楽、蒸し鮑、枝豆、山桃の蜜煮、大根漬けと昆布、新生姜入り俵むすび、出汁巻き、トウモロコシのかき揚げ、アマゴの南蛮漬け、胡瓜で巻いた錦糸巻き

水菓子:長崎産枇杷のコンポート 山梨のさくらんぼ





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Author:VV George VV

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signifie des étoiles de
Michelin au moment de la
visite.

長期フランス滞在中、さる”グランドメゾン”(高級料亭)での午餐を契機に”ガストロノミー・フランセーズ”(フランス流美食)に開眼。
爾来、真の美食を求めて東奔西走の日々。

インスタグラム始めました!→https://www.instagram.com/george_gastro/

* お店の名前脇の★はミシュランガイドでの星による評価(訪問時のもの)に対応しています。

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