FC2ブログ

レストラン訪問記:高山市(飛騨高山駅)「洲さき」(★★)

飛騨国一宮は観光地として賑わう高山市街にはなく、飛騨高山駅からローカル線で一駅いった飛騨一宮駅が最寄り駅の水無神社です。今回の旅の一番の目的は飛騨国一宮の御朱印でしたが、もう一つの目的が岐阜の鮎を頂くことでした。

前日には岐阜市内の中華料理店で鮎の春巻きを頂いて、この日は高山市内の料亭にて、昨日と同じくお昼に、岐阜の天然鮎を頂いてきました。

飛騨高山は当初城下町として成立しつつも、江戸時代初期から天領となって幕府の代官所が置かれた場所で、古い町並みと自然が調和した風情ある町でした。


IMG_005181s5181.jpg

その代官所、高山陣屋のほど近くにあるのが、江戸時代後期創業のまさに老舗といえる料亭「洲さき」です。お店のパンフレットを見て、司馬遼太郎氏が30年以上前にここで食事されたことを知りました。


IMG_05182s5182.jpg

歴史的建造物が建ち並ぶ絶好のロケーションにあって、そこにお店があるのかすらもわからないくらいに町並みと一体化しています。目立った看板もメニュー表も掲げられておらず、そこを目的として訪れる客しかその存在に気付くことはないくらいにひっそりとそこに佇んでいました。


IMG_3036s3036.jpg

のれんも夏の仕立てでしょうか。涼しげな生地が使われていました。


IMG_3134s3134.jpg

のれんをくぐると広い土間があって、ここは江戸時代のままとのことでした。上を見上げると天井がとても高くて、昔の造りであることがよく感じられます。

土間を越えた先で靴を脱いで客室に案内していただきます。


IMG_03037s3037.jpg

お一人様ですが、きちんと個室を用意して下さるのが料亭です。


IMG_3130s3130.jpg

IMG_03039s3039.jpg

広い庭には面していないものの、坪庭が脇にあって、かすかな光を運んでくれています。コロナ感染対策のためでしょうか、最初から最後までずっと戸を開放したままにしていたために、他の部屋のお客さんの話し声が聞こえてきました。それでも、一番奥の部屋でしたので、とても落ち着いて、くつろぎながら食事を最後まで楽しむことができました。


IMG_3079s3079.jpg

床の間の方に簡素に活けてあるお花もまた高山の自然を切り取ったものでしょう。ひなびた美しさが感じられます。


IMG_03042s3042.jpg

立派な漆塗りのテーブルを始め、しつらえられた調度類も大変立派なものでした。

部屋に通されてしばらくして飲物の注文を聞きに来てくれました。飛騨の地酒各種にビール、焼酎、ワインと一通り揃っているのはさすがです。日本酒の揃いが特に良く、製造者、銘柄、酒度、量、値段などもきちんと明記してあって、そういう点も印象が良かったです。

メニュー構成を伺うと、お造りなどはないようでしたし、暑い中を歩いてきたので、生ビールを頂くことにしました。やや小さめのグラスでの提供ですが、ものすごくきれいな泡で、感動しました。今時美味しいビールを提供されるお店はそれなりにありますが、それでもこうした格式のあるお店で美味しいビールが提供されると、こちらの期待に応えてくれているように感じてほっとします。


IMG_03054s3054.jpg

お食事のはじまりにあたってお猪口一杯のお酒を提供されることがありますが、ここでは冷たい煎茶が一口提供されました。当日は予報に反してとても良く晴れた日で暑くもあり、とても気が利いていて良い趣向だなと思いました。

この日のお食事はこの食前「茶」から始まりましたが、この日のお料理を貫くコンセプトのようなものに後から気付くことになりました。それは、「涼を運ぶ」というものです。

暑い最中なのである意味べたかもしれませんが、料理の端々にそのコンセプトが感じられて、お店の料理のレベルの高さや、店主の料理で客をもてなす心意気のようなものをも感じることができ、私の中でお店に対する評価が嫌が応にも上がりました。


IMG_03055s3055.jpg

さて、食前茶の後に、お酒と八寸がいい具合に揃ってお料理が始まりました。

どれも丁寧な調理が施されていて、美味しく、お酒が進む一品ばかりでした。個人的には茶巾茄子や鰻もどきが気に入りました。鰻が捕れる季節ですから鰻を出してくれても良いでしょうが、これはこれでかなり再現率が高い、良い出来でした。

中央のゼリー状のものは寒天で固めたもので、見た目通り甘味でした。こうした和食店でこの色の食べ物はかなりの冒険だと思うのですが、ここにも「涼を運ぶ」コンセプトを見ることができ、気持ち良かったです。


IMG_03071s3071.jpg

IMG_03073s3073.jpg

正直夏でも熱々のお椀が出てくるのが京都では普通だったので意表を突かれました。夏だから珍しくもないのでしょうが、今回提供されたのは冷たいお椀でした。冷製スープがあるのだから、冷たいお椀ももっとポピュラーであってもおかしくないと思いますが、これまでほとんどお目にかかったことがありませんでした。このお料理もまた「涼を運ん」でくれました。

抹茶仕立てで、蓴菜が入っていて、これらもまた涼しげな演出に大いに役に立っています。蓴菜はこういう風に使うものでしょう。半透明の汁の中だからこそ蓴菜の透明感が活きるというものです。

中央の黒いものは本わらび粉を使ったわらび餅で、色からして本物ですね。もちろん無味ですが半透明でつやがあり、お椀の汁と共に涼しさを感じつつ頂きました。全体をゆずの爽やかな香りがしめてくれていました。


IMG_3083s3083.jpg

この日のお料理のメインがこちらでした。高山市内を流れる宮川支流の川上川で捕れた天然の鮎の塩焼きです。これを食べに来たと言っても過言ではなかったので、ありつけて感謝でした。

魚の向きについては「海腹川背」ということで御了解下さい。

懐石だと蓼酢を出すのが一般的ですが、こちらは生の蓼の葉を載せています。ワイルドですね。こういうことができるのは地方の料亭だからこそと思い、むしろ好印象でした。しかし実際味わった蓼の葉はさほど癖があるわけでもありませんでした。

骨までしっかりと炭火で焼かれているため、全部食べることができます。これはすごいです。もっと食べたいくらいでしたが、一匹でも濃厚な内臓の旨みを感じつつ、相性抜群のビールと共に頂くことができ、私にとっては最高のメインで大満足でした。


IMG_3091s3091.jpg

IMG_3097s3097.jpg

揚げ物も、ただの揚げ物ではありません。岩魚を使っていたり、それをあられと揚げたり、茗荷を吉野葛と揚げたりと工夫があり、もちろん美味しさもありました。あられ揚げはおかきの要領で、良い香りがします。また厨房から距離があるはずですが、熱々で提供していただけたのも良かったです。

岩魚は、この日水無神社のいけすで見ていたので、不思議な御縁を感じました。背中の斑点が美しい山にすむ川魚です。夏野菜の唐辛子もまた味が濃厚で美味しかったです。


IMG_3099s3099.jpg

見た目に美しいお料理で、こちらもその色合から「涼を運ん」でくれました。蒸し料理として提供されたと理解しています。山葵がいい仕事をしてくれていました。

これまでの流れからすると少し唐突な印象ではありましたが、見た目良し、味良しでしたので、さほどは気になりませんでした。


IMG_3101s3101.jpg

このあたりでお酒もなくなっていて、食中茶としてほうじ茶が提供されました。


IMG_3105s3105.jpg

IMG_3107s3107.jpg

そして次に、冷たいお蕎麦が提供されましたので、こちらで最後かな、これがお食事代わりかなと思っていたら、これはおしのぎのような位置づけで、お食事の前の最後のお料理でした。とても気前が良いと思いました。

十割ではなく、あくまで冷たくして美味しいのどごしで食べられるように打ってあるお蕎麦で、ここでも涼を感じられました。

また枝豆のかき揚げが入っていて、これももちろん美味しくて気に入りました。単なるかけ蕎麦だったとしても満足したでしょうし、都会ならそちらの方が圧倒的に多いように思います。地方のお店は、その盛りの多さや食材の使い方から、気前が良いというか、優しさがあるように感じることがしばしばありますが、この枝豆のかき揚げはまさにそんなお料理でした。


IMG_3113s3113.jpg

お食事は白い御飯でしたが、おひつにたっぷりと入れておいてくれました。御飯をおひつに入れて出しておいてくれるのも、また地方ならではの気前の良さかなと思いました。

御飯は米が粒立っていてさすがプロの仕事です。焼き茄子と茗荷の入った田舎風のお味噌汁は合わせ味噌の味に深みがあり、最後に忍ばせてあった辛子が口に入って、当たったと思いました。自家製のお漬け物はいずれもみずみずしくてとても美味しいです。

御飯、お味噌汁、香の物が三位一体となって抜群に美味しくて、かなりな量をお代わりいたしました。量はともかく、ここでお代わりをしない日本人はそうそういないでしょう。


IMG_3115s3115.jpg

IMG_3117s3117.jpg

水菓子は、スイカ、オレンジ、飛騨メロン(赤肉)とのことでした。もちろん美味しいですし、これらも「涼を運ん」でくれました。

水菓子が入ったこのお盆は明治時代の飛騨春慶とのことで貴重なもののようでした。

結構な量を食べたのでお腹が落ち着くのに少し時間がいりましたが、本当に静かな時間が流れているので、ゆったりとできて、その点でもとても良かったです。

サービスもつかず離れずで、気配り、目配りがされていて、丁寧ですし、不愉快に感じた点は一つもありませんでした。

しかし、場所やジャンルが異なるとはいえ、前回カフェのようなところで他の客と一緒の大部屋で食べさせられた「北じま」さんと、こちら「洲さき」さんとで、お酒を抜いたお会計が1000円程度しか違いがないから驚きです。どちらを選ぶかと問われれば、問われる前から答えは明らかでしょう。

今回初めての旅で飛騨高山が大変気に入りましたので、今後もまた飛騨高山を訪れる際には四季折々の美味を堪能するべく、こちらに伺いたいと思いました。また、今回はランチの一番軽いコースでしたが、次回以降はその他のコースもまた色々と楽しんでみたいです。飛騨牛のステーキをメインに据えたコースもあるようで、柔軟な姿勢があって良いですね。

こちらのお店と良い御縁を結ぶことができ、その意味でも思い出深い旅となりました。


(いただいたもの)

飲物:生ビール(エビス) グラス


ランチコース(味暦)

食前茶(冷煎茶)

八寸(左から時計回りに):茶巾茄子寒天寄せ(イワナシ入り)鰻もどき(豆腐と海苔)、冬瓜の笹型サツマイモのレモン煮紅鮭の芋寿司

お椀:冷たいお吸い物(抹茶仕立て) 蓴菜 わらび餅団子 ふり柚子

焼き物:宮川支流川上川(飛騨高山)産天然鮎の塩焼き 蓼の葉 矢生姜の煮物

揚げ物:岩魚のあられ揚げ 茗荷の吉野揚げ 青唐辛子

蒸し物:蒸し鶏 叩きオクラ 山葵

おしのぎ:冷たい蕎麦 枝豆の衣揚げ

お食事:白御飯(飛騨産コシヒカリ)、焼き茄子と茗荷入りお味噌汁(糀味噌と赤味噌の合わせ味噌)、香の物三種(一口茄子の一夜漬け、大根、昆布)

水菓子:スイカオレンジ飛騨メロン(赤肉)




関連記事

テーマ : グルメ情報!!
ジャンル : グルメ

コメントの投稿

非公開コメント

sidetitleプロフィールsidetitle

Author:VV George VV

La marque "***", "**","*"
signifie des étoiles de
Michelin au moment de la
visite.

長期フランス滞在中、さる”グランドメゾン”(高級料亭)での午餐を契機に”ガストロノミー・フランセーズ”(フランス流美食)に開眼。
爾来、真の美食を求めて東奔西走の日々。

インスタグラム始めました!→https://www.instagram.com/george_gastro/

* お店の名前脇の★はミシュランガイドでの星による評価(訪問時のもの)に対応しています。

sidetitleカテゴリsidetitle
sidetitle最新記事sidetitle
sidetitle最新コメントsidetitle
sidetitleランキング参加中sidetitle
クリックお願いいたします!
sidetitleFC2カウンターsidetitle
sidetitleサイト内検索sidetitle
気になるお店、お料理など是非こちらで検索してみて下さい。
sidetitleメールフォームsidetitle
個別のメッセージはこちらまでお願いいたします。

名前:
メール:
件名:
本文: