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レストラン訪問記:伊賀市(島ヶ原駅)「レチュード」(★)


読者様のお気に入りのお店に、このたび初めて伊賀国一宮の旅の文脈の中で訪れることができました。一つ星は、ミシュラン愛知・岐阜・三重2019特別版の評価になります。今回記事が相当長いので読んでくださる方は是非お覚悟ください。

人気店であると認識していましたので、予約受付開始日にお電話をして席をお願いしてありました。安定の一人旅でしたが、気持ち良く予約を受けてくださいました。平日のお昼だったため、比較的予約が入りやすかったかもしれません。


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伊賀国一宮敢国神社

お店に伺う前に伊賀国一宮敢国神社参拝をし、その後、御墓山古墳まで歩いて見学していたために結構長時間歩いていました。歩いた分、美食がさらに美味しくなると思い、楽しみに店に伺いました。敢国神社は小さい境内でしたが、否応なく癒やしの境地に置かれる文句なしのパワースポットでした。きれいな紋の蝶が群れて蜜を吸う光景にであうことができました。

さて、お店へは今回島ヶ原駅から歩いて伺いました。駅からお店までの道のりはいくつもあるようですが、どの道を通っても徒歩5分強といったところです。今回は大きな道は工事で通れないかもしれないとの丁寧な御案内を事前にマダムからお電話で頂いていました。そのようなわけで今回は線路沿いを行き、店の脇に出る道で店に着きました。

これまでエントランスを読者様の写真で見ていたのですが、実際に着いてみると小さい印象でした。写真で見る時に、両脇にさらに菜園が広がっているイメージを勝手に抱いていたからでした。


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お店の外観

建物に向かうと前からこちらに気付いていたと思われるマダムが笑顔で迎えてくださいました。名前を告げるまでもなく何者であるかが伝わっていました。お客さんが多くないでしょうからさもありなんと納得です。

広めのサルしかないと思っていたのですが、入って右手に個室があり、この日は個室に通していただきました。特別扱いしていただいているのかなといぶかりましたが、お一人様の場合には個室が多いとのことでした。本当かな?私にとっては気楽に過ごせる分、とても有り難いのは間違いないのですが。

ただ最初扉を全開放していたところ、不躾に中をのぞき込むお客さんがいて辟易しました。個室はサルからトイレへの途中にあるため、トイレに行く人の目につくのは分かるし、私のことが視界に入っても、また何なら目が合っても、さっと通り過ぎてくれれば気になりませんが、その人はトイレを出てサルに帰る際にわざわざ振り返って個室の中を覗き込んできたので良い気分ではありませんでした。そんなわけで、それ以来、扉を半分以上閉めてもらっていました。私が必要以上に神経質ではなかったことを、マダムに御理解いただきたいと思ってあえて書かせていただきました。

今回はかなり前置きが長いですが、基本的に気に入ったお店についてはじっくりと、あったことや感想を書きたいタイプです。熱心な、あるいは賢明な読者様はすでにお気づきかもしれませんが、個人的に評価していないお店についてはあっさりと文章だけで本文を綴る一方で、評価するお店については本文中に写真を多くちりばめつつ、そこで感想を述べるというスタイルをとっています。

さて、個室ですが、一人にしてはとても広い場所で、快適でした。最大6名くらいは入るのでしょう。親密な会にはもってこいの場所ですね。


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テーブルセッティングとこの日のメニュー

個室に入ると、テーブルセッティングがされていますが、そこにその日のメニュー内容が印刷された紙が用意されていて、日付も打ってあります。こうした準備はお店としては結構な手間だと思うのですが、客からすると、次はどんな料理が出てくるのかとメニューを見ながらわくわくする時間がもてる分、とても有り難いものです。だから、客ごとにオーダーメイドで用意されていると思われるこのメニュー表のサービスは素晴らしいサービスだと思います。大変でしょうが、今後も是非続けていただきたいと思います。今回の私宛のメニュー表も大切に持ち帰ってきました。


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卓上のお花

席に着いてしばらくするとマダムがまた来てくれて、飲物のオーダーの時間です。酒類提供ができない時期でしたので、ワインペアリングやシャンパーニュなどはなしで、ソフトドリンクから色々と選ぶことになります。

正直ソフトドリンクを頼むイメージが店に伺う前にはなかったのでお水で通すのかなと思っていたので、こちらのドリンクの揃えに驚きました。もっと揃えているところはあるかもしれませんが、おそらくシェフやマダムがテイスティングされて、お料理や世界観と合うもので、お客さんが喜ぶものを幅広く用意するという意識で揃えられたと思われるこだわりのラインナップのように感じました。


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ソフトドリンクのラインナップ

このように、きれいにボトルを並べて説明してくださいました。この写真の右の二本以外はボトル売りの、シャルドネやメルローなどのセパージュごとに違う種類のジュースとして作られている「アラン・ミリヤalain milliat)」というフランス産のぶどうジュースです。右の二本はコーラ、ジンジャエールですね。他に、和歌山産の梅を使った飲物を炭酸で割って氷を入れた梅サワーやストレートの黄桃ジュースなどもありました。

料理とジュースのペアリングというのもそれなりに行われるようになっているのはなんとなく知っていましたが、個人的にはジュースの甘味が料理とは今一つ調和しないのではないかなと思っていましたので、これまで積極的に試そうとは思えませんでした。

ただ、今回は飲むとしたら水かジュースなので、色々と組み立てを考えて、結局、最初はさっぱりするために梅サワーをもらいつつ、alain milliatのぶどうジュースの一種類試して、最後桃のデセールに桃のジュースを合わせようと思い、その旨マダムに伝えました。しかし後で、桃だと思っていたのは私の読み間違いで、デセールは梨を使ったものでした。それとは関係なく、結局思った以上にぶどうジュースをゆっくり飲んでいたので、桃のジュースは飲むことがありませんでした。マダムの御配慮に感謝でした。


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梅サワー

梅サワーはこちらが注文をすることなく氷が入っていました。これがデフォルトなのでしょう。確かに、居酒屋さんなどでは大量の氷が入っています。不思議と氷なしのイメージだったので、その時は面食らいましたが、そちらの方が普通と後から思い直しました。個人的には冷えてさえいてくれれば満足でした。味はもちろん本物の梅の風味がしっかりして、爽やかな炭酸が長いこと歩いてきた身にしみて美味しく、癒されました。

おしぼりはまさに指先をきれいにするための小さいものが用意されていて、マダムがクロモジを煮出した汁をかけて大きくしてくれたものを使用しました。


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グジェール

お食事の始めはシャンパンスナックにあたるグジェールからです。こちらは写真では何度も拝見したことがあるものでした。ブロッコリーが入っているとのことで、中にはベーコンクリームが入っていて濃厚な味で美味でした。思った以上に食べ応えがあり、これからの食事への期待が高まります。


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バターナッツカボチャのポタージュ

次に出てきたのが、こちらのお店ではアミューズの位置づけになっているスープでした。季節的には少し早い印象ではありましたが、バターナッツカボチャのスープでした。味はなめらかで、中央の泡もきれいで良いです。スープの質も高いです。カボチャの香りは控え目ですが、スープの下に玉ねぎのムースが忍ばせられていて、その二層で滑らかさが足されてより食べやすくなっています。泡の上の砕いたコーヒー豆が食感、味覚ともにアクセントを加えてくれて良かったです。量も少なすぎず、また多すぎず、そのあたりのセンスも素晴らしいです。


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ぶどうジュース(alain milliatのシャルドネ)

スープを食べ終えたタイミングでサワーが終わりになり、ぶどうジュース(alain milliatのシャルドネ)になりました。色を見ていただいてお分かりいただけるように、シャルドネジュースはきれいな琥珀色で、味としても蜂蜜のテーストがあるとのことでしたが果たしてその通りでした。こちらは自分からお願いして氷を入れてもらいました。濃厚な分、氷を入れるくらいで丁度良かったです。自然な甘味の飲物で、食事ともそれなりに合っていて、最後まで美味しく楽しめました。


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真鯛の燻製

鯛の身は生でありながら、軽い燻製にしてあり、安易にカルパチョという命名をしないところにシェフのこだわりを感じました。鯛の身を口に含んだ時に鼻に抜ける燻製の香りが良いです。とはいえ、これは甘味と酸味の競演が主眼のお皿だったのではないかと思いました。

日本では角のない、まろやかな味が好まれる分、酸味を前面に押し出すお料理はあまり受けないのはないかと思うのですが、それを気にせずに柑橘の酸味や甘味をしっかりとお皿に載せていくことができるのは、シェフのフランスでの経験がなせる技なのかと思いました。甘味もありつつも、酸味が強いみかんのソースがかなり主張していました。


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パン(そば粉入り)

また、パンはこのお料理が出るタイミングで提供されました。二種類あるようでしたが、最初はそば粉入りのカンパーニュで、次は普通のバゲットのようでした。バターやオリーブオイルといったものの提供や用意はありません。


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枝豆のリゾット

しっかりとチーズが感じられて、アルデンテで、リゾットとして普通に美味しいです。見た目も美しいです。その一方で、胡椒とチーズの香りがやや勝ちすぎていて、繊細な枝豆の甘さやうまみ、こくなどを感じにくかったのは残念でした。ただ、一すくいするたびにチーズせんべいがスプーンに収まるようにするなど、工夫や食べ手への配慮がしっかりしてある点は良いです。


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本日のお魚料理(ほうぼうのポワレ)

シェフは魚の調理が上手いです。お魚自体の新鮮さもあり、適切な火入れも相まって、とても美味しい料理に仕上がっていました。ほうぼうは火を入れるとこわばるように硬くなる身質が特徴だと思うのですが、美味しく食べられる具合に火が入っていて、火入れについて不快に感じさせる要素がありませんでした。旬の野菜類もまたそれぞれにいいお味を出していて、特に苦みを感じさせるお野菜も採用されているのが良かったです。さらに、ソースの色合いがきれいで、全体の統一感もあり、食べていて見た目に楽しく、美味しく、より健康になれる感じでした。


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伊賀牛もも肉のロースト

その身の多くが赤身でありながら適度にサシがあり、食べ応えがあって普通にとても美味しかったです。きのこもごぼうもそれぞれ別々に美味しく調理されています。黒ニンニクのソースは甘辛で、焼肉のタレ(の役割)ですね。白ニンニクをキタアカリ(じゃがいも)のピュレに入れるのも好きでした。


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白鳳梨のスープ

優しい甘味で美味しいし、好きな果物である旬の梨が主役で嬉しかったです。しかし、色々な味を盛り込んでいるため少し味が混線している感じもしていました。それぞれのパーツの質の高さは文句のつけようがないです。また、ガラス皿だからなおさら目立ったのでしょうが、複数の指紋が付いていたのは少し残念でした。マダムは手袋をされていたのでシェフが仕上げる際についたものでしょう。

食後のお茶は高槻市のコーヒー問屋さんに特注してブレンドしてもらっているコーヒーか、近くの月ヶ瀬の和紅茶からの選択でした。新茶のイメージから和紅茶にしたのですが、新茶のシーズンは過ぎていたようで、夏のお茶が提供されていました。


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紅茶と小菓子

食後のお茶菓子はマダムのお手製とのことを帰り際に教えていただき、ちょっと驚きました。そんなキャリアがあったのかなとか、謙遜してでしょうが、(料理に比して)質が落ちるというようなことを言われていて、そんなこと自ら言わなくても良いのにと思ったりしていました。

手作りとは意外な感じがしたのですが、手作り菓子が食後の穏やかな時間に人の温かさを運んでくれるのではないでしょうか。ただお菓子は一度に沢山作らざるをえず、どうしても作り置きになってしまうのかなとは思っていました。

マダムについては、以前読者様から頂いたお写真に写っていたことがあり、イメージとしては天然なほんわかした方だったのですが、実際にお目にかかってみるといたずらっぽく笑うチャーミングな方で、ほんの少しイメージと違っていました。

もとは別のお仕事(美容関係)と読者様から伺っていましたが、適切に押さえるべきところをしっかり押さえつつ、客人に対する配慮が感じられる温かみのあるサービスをされていて、最初から最後まで安心して過ごせました。

お料理については、上で詳細にコメントしましたが、全体的にとても良かったです。しばらく遡りますが、浅草の「オマージュ」や広島の「ルカドゥ」、奈良の「アヴォートルサンテ」などと共に私のお気に入りリストにリストオンしました。

ただ、シェフがさらに上を目指すとしたら、よりシェフの個性が発揮されたお料理、伊賀の食や食文化あるいはその他文化の料理への反映、コース全体の流れのめりはりなどを意識されていくとと良いのかなと素人ながら勝手に思っていました。

コースはこれまでにシェフが習得された技術を遺憾なく発揮されて旬の食材に向き合っていて、それだけで素晴らしいのですが、昔習った技術の再現に留まっている面もあるのかなと感じました。美しいお皿で、美味しい料理で、何の文句があるのかといわれれば、反論もあまりしたくないのですが、一皿一皿にシェフならではの輝きや工夫、思いがけない展開のようなものが見えてくると、さらにすごいことになっていくのかなと感じました。今は型を作って、安定させているところかもしれませんね。

またスープやデセールで感じたのですが、多彩な食材が使われているゆえに、味覚がどこに向かえば良いのか分からなくなることがあったように思いました。それぞれの食材が出す味は抜群でも、全体として何を示したいのかちょっとぼやけてくる感じがありました。

また、めりはりについて書いたのは、最初のグジェールから次のスープの流れで、グジェールの中身とスープの下のムースとで同じようなクリーム系の味が続くのが少しくどいと感じる人もいるかもしれないと思ったからでした。

苦言を呈した形になり恐縮ですが、これもお店やシェフに対する大きな期待のゆえと感じていただければと嬉しく思います。

このお値段で、これだけの質と量のお料理を出せるお店はそうそうないと思いますので、これからも自信を持って良いお料理を提供し続けていただきたいです。

次回はもう少し季節が進んだ頃に、是非ジビエを食べに伺いたいと思っています。


(いただいたもの)

ランチコース(魚・肉両方を楽しめるコース)

グジェール
小さなシュー生地にベーコンとブロッコリーのクリームを詰めて

バターナッツカボチャのポタージュ
玉ねぎのムース ピスタチオオイル

真鯛の燻製
みかんのソース ズイキのマリネ ツルムラサキ

枝豆のリゾット
キャベツの軽いソース サフラン風味

本日のお魚料理
ホウボウのポワレ 白ワインソース

伊賀牛もも肉のロースト
イチジクのキャラメリゼ 黒ニンニクのソース

白鳳梨のスープ
レモンのブランマンジェ スダチのジュレ ベルベーヌのアイス

紅茶
月ヶ瀬・岩田さんの有機紅茶

お茶菓子(カボチャのマドレーヌとファーブルトン)


* 以上のメニュー表記は、お茶菓子の括弧内の記載以外はすべてお店で頂いたメニュー表の記載を忠実に転載したものです。口頭で説明されたために記載されていない情報が多数あります。



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Author:VV George VV

La marque "***", "**","*"
signifie des étoiles de
Michelin au moment de la
visite.

長期フランス滞在中、さる”グランドメゾン”(高級料亭)での午餐を契機に”ガストロノミー・フランセーズ”(フランス流美食)に開眼。
爾来、真の美食を求めて東奔西走の日々。

インスタグラム始めました!→https://www.instagram.com/george_gastro/

* お店の名前脇の★はミシュランガイドでの星による評価(訪問時のもの)に対応しています。

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