レストラン訪問記:十日町市(松之山温泉)「酒の宿 玉城屋旅館」(★)〜夕食〜
ミシュラン新潟2020特別版に一つ星として掲載される以前に、どこかでフレンチを提供する温泉旅館として紹介されているのを見かけたことがありました。凌雲閣の存在によって松之山温泉を記憶していたことと、温泉旅館でフレンチという珍しさもあいまって、名前は知らなかったもののその存在が記憶に残っていました。
昨年ミシュラン新潟が発刊になって、そのセレクションの中にこちらを見つけて、星をとるほど評価されているのかと、やはり気になりました。
松之山温泉といえば、先ほど書いたように、きのこと登録有形文化財になっている建築物で有名な凌雲閣で記憶していたはずですが、今回初訪問の松之山温泉で最初に御縁を結ぶことになったのはこの玉城屋さんでした。
宿泊施設を備えた星付きレストランはフランスや日本にも当然ありますが、純和風の温泉旅館でフランス料理を提供する星付き店はおそらくここだけでしょう。そういうオンリーワンの魅力がここにはあります。

旅館外観
数年前に代替わりがあって、新しいコンセプトの下で旅館が再始動して、おそらくそのタイミングで改装などが行われたものと思われます。旅館自体は大きくはないのですが、新しいテーストで改装されていて、とても気持ち良く過ごせました。

サル(食堂)前のラウンジ
最寄り駅から車で約20分ほどかかる山の中にある松之山温泉という立地と、日本三大薬湯の一つとして数えられるほどの温泉が、そこに滞在する者を、自然と一体化させることで、日常の生活から切り離してくれて、心からくつろがせてくれます。
宿に着いたのは16時前で、18時の夕食開始までは、部屋でのんびり裏山の木々を眺めつつ松之山温泉の美味しい空気を吸って、その後、おもむろにお風呂を楽しみました。温泉がついている部屋が多いこともあって、大浴場は比較的空いているのではと思いつつ訪ねると案の定で、一人のんびり貸切りで楽しめました。
温泉は硫黄ではない温泉成分の独特の香りがしていて、すぐに慣れましたが、館内全体にもその香りが満ちていました。薬湯といわれるくらいなのでもちろん有り難みを感じます。
夕食の時間は、18時からあるいは20時からで、基本的には予約時に希望を聞いてくれますが、希望が集中した場合には先着順での決定となるようでした。この日は18時で希望を出していて、希望通りの時間に食事を始めることができました。
夕食も朝食も、部屋着として旅館が用意してくれている浴衣ないし作務衣で食事をすることが許されていることから、温泉入浴後のくつろいだ気分のままで美味美食を楽しむことができます。

ダイニングの様子
ダイニングも新しく整えたのでしょう、木を使った調度類が多いおかげでほっとする温かい雰囲気がある一方で、明るい照明とダイニングの壁一面に備え付けられたワイングラスやお酒を収納するガラス棚、ワインカーブのおかげか、モダンで、快適な空間が出来上がっていて、入った瞬間から、くつろぐことができました。
こちらは酒の宿と銘打っていることもあり、ソムリエでもある現当主が、日本酒、ワインを夕食で提供するフランス料理に合わせたマリアージュを提案するところもまたこの宿の魅力の一つとなっています。ただ、両店で内容が違うのだとは思いますが、通常の量のワインペアリングは前日夜に食事をした三条市の「Uozen」に比べてかなり高いように感じました。
夕食における酒類提供を円滑にするという趣旨から、チェックイン時にワイン又は日本酒のペアリングをあらかじめ選択することが推奨されていて、私はワインの少量ペアリングをお願いしてありました。
また、チェックイン時のみオーダーが可能という、甘口のスパークリング日本酒に興味がひかれたのでこちらもお願いしてありました。炭酸を強化する必要があって一手間がかかることから、あらかじめ準備する時間のために、注文時間が限定されているとのことでした。

醸す森(kamosu mori) 純米吟醸 生酒 発泡酒
御当主と酒屋さんとのコラボで作られたお酒とのことで、自然な飲み口の甘口日本酒で、とても美味しくて、これを注文して良かったと思いました。また次回も訪れる機会があったら注文したいです。
さて、日本酒を終えてからいよいよワインペアリングのシャンパンと共にお食事が始まっていきます。

テーブルセッティング
卓上に、メインとなる食材をだけ並べたその日のメニューが、置かれていて、次はどんなものが出てくるのか知ることができて、楽しかったです。
とはいえ、書かれた食材が必ずしも各料理のメイン食材というわけではないと途中から気付きました。あえてそうしているのかもしれませんが、食材を一つだけを記すなら、まさに料理の要である食材のみを記した方が親切に思うのですが、いかがでしょう。
ここのメニュー表は、記載された食材を見ただけでどんなお料理か想像できるものではなかったので、コースの流れに期待してわくわくすることができず、その点は残念でした。

シャンパンスナック(右下から反時計回りに):
美雪鱒
キウイフルーツ
赤いか
赤いかと名指しされているモレは、最初に口にしてしまいましたが、トマトの濃厚なチリコンカンのような味付けでこの順序は不正解でした。美雪鱒は食べ応えがあります。お刺身なので、お昼は海鮮丼でなくて良かったと思いました。キウイフルーツとは、チーズ、鳥レバーペーストと十日町産キウイフルーツのジャムを合わせたグジェールで、とろっとしていて濃厚で美味しいです。これを最後にして良かったです。
ペアリングは、シャンパーニュから始まります。昨日のUozenで結構飲み過ぎた印象もあり、また通常のペアリングコースが「Uozen」と比べてやや高めだったこともあり、この日は少量のペアリングでお願いしました。こちらだと、お値段はほぼ半額で、二口、三口くらいの量しかありませんが、翌日の体調のことなどを考えるとこれくらいの量で丁度良かったです。
ペアリングワインのボトルも写真を撮りましたが、他のお客さんが映り込んでしまったりしていたので、割愛させていただきます。何が出てきたか分かるように参照情報と感想を最後に載せておきます。

甘龍南瓜
南蛮海老の真丈入りの南瓜のポタージュスープでした。色々と入れたり、添えたりするのが今風ですね。個人的には、過剰な装飾はあまり好きではなく、肝心のスープの味がしっかりしていて欲しいです。その点、こちらのスープの味は少し薄めに感じて残念でした。同じ南瓜のスープでしたら、先日高知で頂いた「Primavolta」で出たものの方が濃くて好みでした。
この皿の後にパンが供されたことをみると、ここまでがアミューズの扱いだったのでしょうか。
パンは松之山温泉を生地に練り込んだ温泉パンで、まさにハイジの白パンで、上品でした。とはいえ、「Uozen」のパンの方が美味しさがありました。また、バター、オリーブオイルがないのが残念でした。山の中とはいえ、ガストロノミーを志しているならば当たり前のようにバターを出して欲しいところです。


無花果
優しい脂に包まれた柏崎産「かやかり」(ひげそり鯛)のマリネと、佐渡産黒無花果の甘味が良く合う感じで気持ちが良いです。そうめん南瓜も入っていて、見た目も爽やかで美しく、良いお料理でした。


アオリイカ
これは洋皿に入れられていますが、はっきり言って、秋の味覚が詰まった和食の煮物です。お皿は温めておらず、熱々ではなく温かいお料理です。
椎茸も舞茸も栽培ものでしたが美味でした。椎茸は、八色しいたけというブランド椎茸でした。また、最近は舞茸を天然、栽培に限らず食べる機会が何度かあり、田舎の良さを感じていました。アオリイカは、この前日に「鍋茶屋 光琳」でお刺身の美味しさを改めてかみしめましたが、火が入っていてもやはり美味しい食材です。
秋の恵み、里芋、銀杏もあって幸せです。和食ですが、好きなお料理でした。


あけび
あけびに津南ポークの豚挽肉を詰めたお料理です。さつまいものピュレがしかれ、ソースは豚のジュとあけびの実のソースでした。シャキシャキした食感があり、尋ねると上に載せられたピーナツ片のようでした。
このお料理のあけびは苦かったです。良く言えば、大人の味ということでしょうか。また、あけびはその果肉部分だけを使用していて、あけびの個性である中のトロトロがなく、残念でした。わがままを言うと、その部分も活かして、素敵な美味しい一品に仕上げて欲しかったです。そういったことがあったので、メニュー表で見てもっていた期待が裏切られた形になりました。



甘鯛
写真でもお分かりいただけるかと思いますが、きれいな鱗焼きです。調理が上手で美しく、美味しいです。新米のチーズリゾットもまさに新潟の旬で気分が良いですし、こちらも良いお味です。ソースはスープドポワソンでした。
ここでも「Uozen」の魚でも使われていたミズの実が出てきました。数珠状の植物です。両方のお魚とも高いレベルのお料理ですが、お魚の質や火入れなど含めて比べみると、ソースの出来に関わらず、「Uozen」のメインのお魚の方が圧倒的に上でした。ソースについても、より手が込んで、純粋に美味しかった「Uozen」が上でした。


あがの姫牛
メインのお肉は、チェックイン時に豚肉にするか、牛肉にするかを尋ねられます。ただ、牛肉を選択すると追加料金がかかります。あがの姫牛は国産牛とのことでした。お昼にとんかつを食べていたので、豚を避けて牛にしたという消極的な選択でした。
牛肉は燻製香が食欲をそそって良いです。ある意味ソーセージと同じ香りですね。肉も柔らかくて焼き加減抜群で美味しいのですが、肉自体が冷めているので、そこは大減点でしょう。また、お皿を温めてもいなくて、メインの肉料理でお皿を全く温めないことで失うものが色々とあるはずです。美味しさだけでなく、お客さんからの評価、ということです。少なくとも、ここをちゃんとしないと一つ星を越えていくことはまずできないのでは、とあくまで私の一意見にすぎませんが思っていました。

ずいき
アヴァンデセールとして出された一品です。芋茎(ずいき)のコンポートに梨、 サルナシのジュレ、杏仁豆腐のムースが添えられています。見た目も色気はないですが、さっぱりして良いですね。


巨峰
果実にラムレーズンのアイスクリームを添えただけなので華はありませんが、美味しいです。ほうじ茶の泡のキューブ、クランブルが入っています。チュイルがスパイシーな香りで、多種のスパイスを用いたチュイルとのことでした。

食後のお茶:神目箒茶(かみめぼうきちゃ)(ホーリーバジル)
小菓子(左から時計回りに):
枝豆のマカロン チョコクリーム入り
イチジクのパウンドケーキ
ふきチョコ
食後のお茶は、コーヒーでも紅茶でもなく、乾燥の和製ハーブティー・神目箒茶(かみめぼうきちゃ)でした。もちろん、いつものごとくハーブティーの有無を尋ねて、このお茶に行き着きました。花のような香りがしていましたが、独特の味で、好みは分かれるかもしれません。旅館で茶葉が売られているもので、きれいなリーフレットも頂いてきました。小菓子については普通に美味しく、特にコメントはありません。
お料理の全体の感想ですが、盛り付けはきれいで、美味しさもありますが、前日の「Uozen」で感じたような目を剥くような驚き、喜びはありませんでした。また、随所で不満を述べたように、全てにおいて満点のレストランというわけでもありません。
それでも、山中の鄙びた温泉街の温泉旅館で提供される洗練されたフランス料理(とたまの和食)というのは他ではなかなか見られない取り合わせで、これはこれでとても大きな強みがあるお店だと思います。
朝に仕事をされている大女将によると、春がお勧めの季節とのことでしたので、次回は春の新しい命が芽吹く時に訪れたいと思い、旅館を後にしました。
(いただいたもの)
玉城屋旅館の夕食
パン(バター、オリーブオイルなし)
美雪鱒
キウイフルーツ
赤いか
(グラスシャンパーニュ:ピノ・シュヴォシェ(Pinot-Chevauchet) N.M.)
甘龍南瓜
無花果
(グラス白ワイン:アルフォンス・メロ(Alphonse Mellot)(フランス) La Moussière サンセール 2018)
アオリイカ
(グラス白ワイン:醸す森(kamosu mori)(日本) 新潟県産シャルドネ 2018新潟のシャルドネ2018→樽熟成とのことで、香り良く気持ちいいです。)
あけび
(グラス赤ワイン:ドメーヌ・シュヴィヨン(Domaine Chevillon)(フランス) ニュイ・サン・ジョルジュ ヴィエイユヴィーニュ 2015→この赤の苦味がアケビの苦みを受け止める感じでした。)
甘鯛
(グラス白ワイン:オ・ピエ・ドゥ・モン・ショーヴ(フランス) シャサーニュ・モンラシェ 2015→熟した林檎の風味がしますね。甘鯛の濃いソースといい相性でした。)
あがの姫牛(追加料金あり)
(グラス赤ワイン:セ Salento Primitivo IGT 2018→果実味がありつつ濃厚で好みでした。)
ずいき
巨峰
食後のお茶と小菓子
(以上の記載は、パン、食後のお茶と小菓子及び括弧内の記載以外、頂いたメニュー表を転載したものです。)
昨年ミシュラン新潟が発刊になって、そのセレクションの中にこちらを見つけて、星をとるほど評価されているのかと、やはり気になりました。
松之山温泉といえば、先ほど書いたように、きのこと登録有形文化財になっている建築物で有名な凌雲閣で記憶していたはずですが、今回初訪問の松之山温泉で最初に御縁を結ぶことになったのはこの玉城屋さんでした。
宿泊施設を備えた星付きレストランはフランスや日本にも当然ありますが、純和風の温泉旅館でフランス料理を提供する星付き店はおそらくここだけでしょう。そういうオンリーワンの魅力がここにはあります。

旅館外観
数年前に代替わりがあって、新しいコンセプトの下で旅館が再始動して、おそらくそのタイミングで改装などが行われたものと思われます。旅館自体は大きくはないのですが、新しいテーストで改装されていて、とても気持ち良く過ごせました。

サル(食堂)前のラウンジ
最寄り駅から車で約20分ほどかかる山の中にある松之山温泉という立地と、日本三大薬湯の一つとして数えられるほどの温泉が、そこに滞在する者を、自然と一体化させることで、日常の生活から切り離してくれて、心からくつろがせてくれます。
宿に着いたのは16時前で、18時の夕食開始までは、部屋でのんびり裏山の木々を眺めつつ松之山温泉の美味しい空気を吸って、その後、おもむろにお風呂を楽しみました。温泉がついている部屋が多いこともあって、大浴場は比較的空いているのではと思いつつ訪ねると案の定で、一人のんびり貸切りで楽しめました。
温泉は硫黄ではない温泉成分の独特の香りがしていて、すぐに慣れましたが、館内全体にもその香りが満ちていました。薬湯といわれるくらいなのでもちろん有り難みを感じます。
夕食の時間は、18時からあるいは20時からで、基本的には予約時に希望を聞いてくれますが、希望が集中した場合には先着順での決定となるようでした。この日は18時で希望を出していて、希望通りの時間に食事を始めることができました。
夕食も朝食も、部屋着として旅館が用意してくれている浴衣ないし作務衣で食事をすることが許されていることから、温泉入浴後のくつろいだ気分のままで美味美食を楽しむことができます。

ダイニングの様子
ダイニングも新しく整えたのでしょう、木を使った調度類が多いおかげでほっとする温かい雰囲気がある一方で、明るい照明とダイニングの壁一面に備え付けられたワイングラスやお酒を収納するガラス棚、ワインカーブのおかげか、モダンで、快適な空間が出来上がっていて、入った瞬間から、くつろぐことができました。
こちらは酒の宿と銘打っていることもあり、ソムリエでもある現当主が、日本酒、ワインを夕食で提供するフランス料理に合わせたマリアージュを提案するところもまたこの宿の魅力の一つとなっています。ただ、両店で内容が違うのだとは思いますが、通常の量のワインペアリングは前日夜に食事をした三条市の「Uozen」に比べてかなり高いように感じました。
夕食における酒類提供を円滑にするという趣旨から、チェックイン時にワイン又は日本酒のペアリングをあらかじめ選択することが推奨されていて、私はワインの少量ペアリングをお願いしてありました。
また、チェックイン時のみオーダーが可能という、甘口のスパークリング日本酒に興味がひかれたのでこちらもお願いしてありました。炭酸を強化する必要があって一手間がかかることから、あらかじめ準備する時間のために、注文時間が限定されているとのことでした。

醸す森(kamosu mori) 純米吟醸 生酒 発泡酒
御当主と酒屋さんとのコラボで作られたお酒とのことで、自然な飲み口の甘口日本酒で、とても美味しくて、これを注文して良かったと思いました。また次回も訪れる機会があったら注文したいです。
さて、日本酒を終えてからいよいよワインペアリングのシャンパンと共にお食事が始まっていきます。

テーブルセッティング
卓上に、メインとなる食材をだけ並べたその日のメニューが、置かれていて、次はどんなものが出てくるのか知ることができて、楽しかったです。
とはいえ、書かれた食材が必ずしも各料理のメイン食材というわけではないと途中から気付きました。あえてそうしているのかもしれませんが、食材を一つだけを記すなら、まさに料理の要である食材のみを記した方が親切に思うのですが、いかがでしょう。
ここのメニュー表は、記載された食材を見ただけでどんなお料理か想像できるものではなかったので、コースの流れに期待してわくわくすることができず、その点は残念でした。

シャンパンスナック(右下から反時計回りに):
美雪鱒
キウイフルーツ
赤いか
赤いかと名指しされているモレは、最初に口にしてしまいましたが、トマトの濃厚なチリコンカンのような味付けでこの順序は不正解でした。美雪鱒は食べ応えがあります。お刺身なので、お昼は海鮮丼でなくて良かったと思いました。キウイフルーツとは、チーズ、鳥レバーペーストと十日町産キウイフルーツのジャムを合わせたグジェールで、とろっとしていて濃厚で美味しいです。これを最後にして良かったです。
ペアリングは、シャンパーニュから始まります。昨日のUozenで結構飲み過ぎた印象もあり、また通常のペアリングコースが「Uozen」と比べてやや高めだったこともあり、この日は少量のペアリングでお願いしました。こちらだと、お値段はほぼ半額で、二口、三口くらいの量しかありませんが、翌日の体調のことなどを考えるとこれくらいの量で丁度良かったです。
ペアリングワインのボトルも写真を撮りましたが、他のお客さんが映り込んでしまったりしていたので、割愛させていただきます。何が出てきたか分かるように参照情報と感想を最後に載せておきます。

甘龍南瓜
南蛮海老の真丈入りの南瓜のポタージュスープでした。色々と入れたり、添えたりするのが今風ですね。個人的には、過剰な装飾はあまり好きではなく、肝心のスープの味がしっかりしていて欲しいです。その点、こちらのスープの味は少し薄めに感じて残念でした。同じ南瓜のスープでしたら、先日高知で頂いた「Primavolta」で出たものの方が濃くて好みでした。
この皿の後にパンが供されたことをみると、ここまでがアミューズの扱いだったのでしょうか。
パンは松之山温泉を生地に練り込んだ温泉パンで、まさにハイジの白パンで、上品でした。とはいえ、「Uozen」のパンの方が美味しさがありました。また、バター、オリーブオイルがないのが残念でした。山の中とはいえ、ガストロノミーを志しているならば当たり前のようにバターを出して欲しいところです。


無花果
優しい脂に包まれた柏崎産「かやかり」(ひげそり鯛)のマリネと、佐渡産黒無花果の甘味が良く合う感じで気持ちが良いです。そうめん南瓜も入っていて、見た目も爽やかで美しく、良いお料理でした。


アオリイカ
これは洋皿に入れられていますが、はっきり言って、秋の味覚が詰まった和食の煮物です。お皿は温めておらず、熱々ではなく温かいお料理です。
椎茸も舞茸も栽培ものでしたが美味でした。椎茸は、八色しいたけというブランド椎茸でした。また、最近は舞茸を天然、栽培に限らず食べる機会が何度かあり、田舎の良さを感じていました。アオリイカは、この前日に「鍋茶屋 光琳」でお刺身の美味しさを改めてかみしめましたが、火が入っていてもやはり美味しい食材です。
秋の恵み、里芋、銀杏もあって幸せです。和食ですが、好きなお料理でした。


あけび
あけびに津南ポークの豚挽肉を詰めたお料理です。さつまいものピュレがしかれ、ソースは豚のジュとあけびの実のソースでした。シャキシャキした食感があり、尋ねると上に載せられたピーナツ片のようでした。
このお料理のあけびは苦かったです。良く言えば、大人の味ということでしょうか。また、あけびはその果肉部分だけを使用していて、あけびの個性である中のトロトロがなく、残念でした。わがままを言うと、その部分も活かして、素敵な美味しい一品に仕上げて欲しかったです。そういったことがあったので、メニュー表で見てもっていた期待が裏切られた形になりました。



甘鯛
写真でもお分かりいただけるかと思いますが、きれいな鱗焼きです。調理が上手で美しく、美味しいです。新米のチーズリゾットもまさに新潟の旬で気分が良いですし、こちらも良いお味です。ソースはスープドポワソンでした。
ここでも「Uozen」の魚でも使われていたミズの実が出てきました。数珠状の植物です。両方のお魚とも高いレベルのお料理ですが、お魚の質や火入れなど含めて比べみると、ソースの出来に関わらず、「Uozen」のメインのお魚の方が圧倒的に上でした。ソースについても、より手が込んで、純粋に美味しかった「Uozen」が上でした。


あがの姫牛
メインのお肉は、チェックイン時に豚肉にするか、牛肉にするかを尋ねられます。ただ、牛肉を選択すると追加料金がかかります。あがの姫牛は国産牛とのことでした。お昼にとんかつを食べていたので、豚を避けて牛にしたという消極的な選択でした。
牛肉は燻製香が食欲をそそって良いです。ある意味ソーセージと同じ香りですね。肉も柔らかくて焼き加減抜群で美味しいのですが、肉自体が冷めているので、そこは大減点でしょう。また、お皿を温めてもいなくて、メインの肉料理でお皿を全く温めないことで失うものが色々とあるはずです。美味しさだけでなく、お客さんからの評価、ということです。少なくとも、ここをちゃんとしないと一つ星を越えていくことはまずできないのでは、とあくまで私の一意見にすぎませんが思っていました。

ずいき
アヴァンデセールとして出された一品です。芋茎(ずいき)のコンポートに梨、 サルナシのジュレ、杏仁豆腐のムースが添えられています。見た目も色気はないですが、さっぱりして良いですね。


巨峰
果実にラムレーズンのアイスクリームを添えただけなので華はありませんが、美味しいです。ほうじ茶の泡のキューブ、クランブルが入っています。チュイルがスパイシーな香りで、多種のスパイスを用いたチュイルとのことでした。

食後のお茶:神目箒茶(かみめぼうきちゃ)(ホーリーバジル)
小菓子(左から時計回りに):
枝豆のマカロン チョコクリーム入り
イチジクのパウンドケーキ
ふきチョコ
食後のお茶は、コーヒーでも紅茶でもなく、乾燥の和製ハーブティー・神目箒茶(かみめぼうきちゃ)でした。もちろん、いつものごとくハーブティーの有無を尋ねて、このお茶に行き着きました。花のような香りがしていましたが、独特の味で、好みは分かれるかもしれません。旅館で茶葉が売られているもので、きれいなリーフレットも頂いてきました。小菓子については普通に美味しく、特にコメントはありません。
お料理の全体の感想ですが、盛り付けはきれいで、美味しさもありますが、前日の「Uozen」で感じたような目を剥くような驚き、喜びはありませんでした。また、随所で不満を述べたように、全てにおいて満点のレストランというわけでもありません。
それでも、山中の鄙びた温泉街の温泉旅館で提供される洗練されたフランス料理(とたまの和食)というのは他ではなかなか見られない取り合わせで、これはこれでとても大きな強みがあるお店だと思います。
朝に仕事をされている大女将によると、春がお勧めの季節とのことでしたので、次回は春の新しい命が芽吹く時に訪れたいと思い、旅館を後にしました。
(いただいたもの)
玉城屋旅館の夕食
パン(バター、オリーブオイルなし)
美雪鱒
キウイフルーツ
赤いか
(グラスシャンパーニュ:ピノ・シュヴォシェ(Pinot-Chevauchet) N.M.)
甘龍南瓜
無花果
(グラス白ワイン:アルフォンス・メロ(Alphonse Mellot)(フランス) La Moussière サンセール 2018)
アオリイカ
(グラス白ワイン:醸す森(kamosu mori)(日本) 新潟県産シャルドネ 2018新潟のシャルドネ2018→樽熟成とのことで、香り良く気持ちいいです。)
あけび
(グラス赤ワイン:ドメーヌ・シュヴィヨン(Domaine Chevillon)(フランス) ニュイ・サン・ジョルジュ ヴィエイユヴィーニュ 2015→この赤の苦味がアケビの苦みを受け止める感じでした。)
甘鯛
(グラス白ワイン:オ・ピエ・ドゥ・モン・ショーヴ(フランス) シャサーニュ・モンラシェ 2015→熟した林檎の風味がしますね。甘鯛の濃いソースといい相性でした。)
あがの姫牛(追加料金あり)
(グラス赤ワイン:セ Salento Primitivo IGT 2018→果実味がありつつ濃厚で好みでした。)
ずいき
巨峰
食後のお茶と小菓子
(以上の記載は、パン、食後のお茶と小菓子及び括弧内の記載以外、頂いたメニュー表を転載したものです。)
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