レストラン訪問記:三条市(東三条駅)「Uozen」(★★)
ミシュラン新潟特別版2020にて二つ星の同店に伺いたくて、今回の新潟美食旅を組みました。つまり、個人的にはこのお店が旅の目的だったわけで、主観的にはミシュラン三つ星の扱いでした。ただあくまで初訪問なので、色々な評判を聞いた上で勝手に期待して伺った次第でした。
一宮旅の途上にありながら、その完結前の旅で、ある意味浮気旅だったのですが、諸般の事情により、このタイミングでの旅行となりました。新潟県三条市には緊急事態宣言も、蔓延等防止措置適用も関係なく、時短要請も行われていないことを確認した上でのお出かけでした。
旅程の関係でこちらにはディナーでの訪問となり、東三条駅に宿を取り、歩いてレストランに向かいました。鍋茶屋光琳の店員が、田んぼの真ん中にあるとお話されていましたが、夜の帳が下りてそれも分からないまま、少し遅れ気味だったので急いで店に向かいました。
まだ時間になっていませんでしたが、アプリで見ると最大10分少々は遅れることが予想され、あらかじめ遅れる旨を電話でお伝えしました。するとサービスの方は、シェフに伺いを立てるためでしょうかいったん保留にして、予約時間に開始となっているので急いで下さいというようなことを言ってきます。
お願いした予約時間に遅れる自分が悪いとは思いつつも、サービス担当としてその対応はどうなのだろうといぶかしく思いました。遅れても連絡などしない客が多いでしょうに、連絡が来たことをひとまずよしとしないのか、それくらいの懐の広さがないのかとちょっと不安になりました。客を無用に急がせることで、客が事故や事件に遭遇する心配などはしないのでしょう。
甘えて言うとすれば、お店の模範解答としては、できるだけお急ぎいただけると助かりますが、どうかお気をつけてお越しください、という言葉になるでしょう。事実、これまで遅れそうになったりして電話をした場合に、そういう言葉を掛けていただいた記憶が何度かありました。
道を急ぎながら、期待して店を訪ねるけれど、今日はいい出会いではないのかなと思っていて、御縁がない場所なら、それはそれでしょうがないとは思うのですが、できるだけ残念な体験は少ない方がいい訳で、そんな場所だったらいやだなと着く前から少し気持ちが萎えていました。

お店の外観
漁をし、猟をするシェフのお料理の内容からすると山の中にあるようなイメージがあったのですが、お店は本当に田園のど真ん中にある立地です。
夜なので分かりませんでしたが、民家も広がっている微妙に開けた場所ではあるので、美しい田園風景といった眺望は望めないのかもしれませんが、外に向いたテーブル席のしつらえからすると、お昼の方が光たっぷりで、より楽しく食事ができるのかもしれません。
さて、民家あるいは旅館のような玄関を入るときりっとしたソムリエの男性が遅着をなじることもなく出迎えてくれました。まだお若い印象ですが、お仕事ぶりもしっかりしていて、安心できました。
現在は昼夜とも二組しか受けていないようで、この日はもう一組飲食店関係の方がお二人で来られていて、このソムリエ男性と予約などを受けてくださったソムリエの女性が交互にほぼ同時に両卓にサービスをされていて、時に応じてサービスする相手を変えるという形で進みました。
二組とも同じ内容のコースのようでしたから、シェフとしては同時に同じものを仕上げる方が二度手間にならずに便宜になるのは分かるのですが、夜については特に同時スタートの縛りはどこにも書かれていないのですから、やはり遅れた客についても予約内容通りの食事を提供することになります。そして、結局遅れてもそうして対応するのであれば、お互いに気持ち悪くならないように、サービスを通じて嫌みなどは言わせずに、遅れる連絡をした客にはやはりむしろ感謝を伝える方が、角が立たなくて良いでしょう。
遅れる方が悪いのは分かっていますが、連絡などしないで何十分も平気で遅れるような客も残念ながらいる訳で、そんな中、10分程度の遅れで連絡することをむしろ評価していただきたかったです。
この日は結局夜道を急いだ甲斐もあり、予約より6分遅れてお店に着くことができました。そして、最初の段階からもう一組のお客さんとほぼ同時にお料理が提供されていましたし、遅れるとの電話を受けたサービスの女性にも、シェフにも特に嫌みを言われることもなかったので、こちらとしてもあまり迷惑をかけなかったと思えて、少しほっとしました。

テーブルセッティングとドリンクメニュー
最初に飲物について聞かれます。この日は、昼に和食をしっかり頂いてきたので、お腹の余裕がさほどない状態ではありましたが、お酒については是非ともペアリングを楽しみたいと思っていて、それは予約の段階でシェフにも伝えてありました。
そんなこともあり、少量のペアリングコースもあったものの、通常の量のペアリングでお願いしました。しかしそこはやはり地方の良さで、シャンパンも含めて8杯というペアリングが大変リーズナブルな設定で、嬉しくなります。

グラスシャンパーニュ:ヴーヴ・オフレイ(Veuve Aufray) N.M.
この日はシャンパン用のつきだしとして4種類のスナックが用意されていました。

シャンパンスナック(左下から時計回りに):青唐辛子のジビエ肉の詰め物、猪のリエット、玉ねぎのマカロン、ジビエドッグ
この左下にあるのが、野菜(青唐辛子)を使ったスナックで、他三種とは明らかに異質でした。

甘長唐辛子(青唐辛子)の薪焼き ジビエ肉の詰め物
甘長唐辛子に、自家製チョリソ、ツキノワグマの脂、ラルドをそれぞれ刻んで詰めて、薪で焼いたものです。
お野菜ということでこれから手をつけましたが、正直今一つでした。青唐辛子の濃く苦い味が勝っていて、質が高いはずの各種詰め物の良さが感じられず、何を食べさせたいのかぼやけてしまっていて、挑戦する気持ちは感じられましたが、シャンパンを合わせるスナックとしては成功していませんでした。

玉ねぎのマカロン 自家製生ハム入り
キャラメルオニオンクリーム入りの玉ねぎのマカロンですが、甘いです。そこにまず驚きました。でも、キャラメルが美味しいように、焦がした玉ねぎの甘い餡は香りが良くて美味しく感じられました。これは当たりで、スナックとして成功しています。フォワグラと甘い物を合わす心にも通じます。

新潟県産猪のリエット ハーブのチュイル ナスタチウム
台がおどろおどろしいですが、猪の頭蓋骨とのことです。というわけで、コルク状に仕上げられたリエットでした。滑らかで猪の良い味わいを感じられて楽しかったです。

ジビエドッグ 黒ニンニクのピュレ
最後に温かいこちらの新潟県産の各種ジビエ肉を入れたホットドッグを頂きました。生地はほんのり甘くて、まさにアメリカンドッグです。温かさがあることもあり、美味しく中のお肉を食べることができ、個人的にはシャンパンスナックの中ではこれが一番良かったです。最後に一番美味しいものを口にしたこともあり、これからのお料理に期待がつながりました。
青唐辛子は今一つでしたが、全体として、シャンパンが進む品々で、工夫もあり、盛り付けに遊び心もありで、とても良いスタートでした。


佐渡産ミンク鯨のタルタル
次なるお料理は、ミンク鯨のタルタルです。昆布締めにして、タルタルにしてあります。まさか、新潟の山近くでミンク鯨と御挨拶することになるとは…意外な出会いにまず驚きと喜びがありました。しかも生とは。上には、白いニラの花とシブレットが散らされていて、とてもきれいないでたちです。
以前、「アルケッチァーノ」でアザラシの生肉を頂いたことがありましたが、フレンチでミンク鯨を食べたのはこれが初めてでした。
下に敷かれたナスタチウムを両手で持って、ハンバーガーよろしく葉ごと口にほおばって食べるように言われます。中の具材が右、左にこぼれないようにしてほおばって、三口くらいで食べ終わる感じでした。
ナスタチウムの葉とお肉を一緒に口に入れることもあり、食感が良いですし、香りが良いのですが、この香りは絡められた油のせいでしょうか。ミンク鯨の肉も生肉が優しい味わいで良かったです。燕産黒米のパフの食感が、生肉を食べるに当たってとてもいいアクセントになっていました。
お肉の質が良いのでしょう、美味しい生肉を頂くことができて、満たされました。

グラス赤ワイン:ドメーヌ・ショオ(新潟県コバヤシワイナリー) Kaze kaoru カベルネソーヴィニョン100%
合わせてもらったのは、新潟県ドメーヌ・ショオ(Domaine Chaud)の赤ワインでした。自然な作りで作られたもので、自家栽培のカベルネソーヴィニョン100%使用の「Kaze kaoru(風薫る)」というワインとのことで、やや低温にしての提供でした。
独特の苦みのようなものが感じられ、ミンク鯨の生の赤い肉とはいい相性だったように感じていました。


牡丹海老のブイヤベース仕立て
こちらのスペシャリテで、多くの方が写真を見たことがあるのではないでしょうか。中は、立派な生の牡丹海老で、緋色の衣はゼリーになっていて、身全体をきれいに覆っています。ゼリーは、海老の殻の香りというか、海老感がすごいです。私の想像としては、ブイヤベースという料理名もあいまって、火入れしたものかなと漠然と思っていたので予想が裏切られました。
ただ、ゼリーと下の身を一緒に切ろうとすると、普通のナイフでは切れにくいので、ここでは大げさかもしれませんがラギオールにすべきだと思いました。
また、冷たいお料理にブイヤベースの名前が相応しいかは、頭が硬いかもしれませんが、議論の余地あるかなと思いました。ただ、変化形としては面白いです。
個人的には、生の海鮮が続いたので、少し飽きがきたように感じ、正直なところ、こちらのスペシャリテはすごく美味しいとまでは思えませんでした。風味や食感などを考えると、より深みを感じさせてくれたミンク鯨のタルタルの方が好みでした。

グラスオレンジワイン:ドメーヌショオ(新潟県コバヤシワイナリー) Jolly Jolly Holiday オレンジワイン デラウェア種
先ほどの、ミンク鯨と合わせた赤ワインと同じドメーヌショーの、デラウェア種を用いたオレンジワインを合わせてもらいました。オレンジワインは最近の流行りのようですが、ブイヤベースのゼリーには皮をつけ込んだこのワインの風味がいい感じに合っていたと思います。
さて、このあたりで、ようやくパンの提供が始まりますが、きちんと温めて提供して下さいます。天然酵母を使った、三条とフランスの小麦を半々で用いているというパンで、小さいのですが香りが高くて美味しいパンで、気に入りました。
佐渡バターが添えられますが、新潟県を形取っていて気が利いています。新潟県産のお塩をかけているとのことでした。


鯵のマリネの生春巻 各種ハーブとコシヒカリのパフ入り
シェフ自ら釣ってきた鰺をマリネにして生春巻にしたもので、お皿に運んでから赤紫蘇とプラムのソースをかけてくれました。
生春巻に忍ばされた多彩なハーブの香りが素晴らしいですし、ソースの赤紫蘇もいいアクセントになっています。マリネが優しいので、スルッと口に入っていきます。
ただ、牡丹海老の段階で生物が続いて食傷気味になっていたので、三皿連続となって、口がちょっと疲れてしまっていました。そのあたりの流れをもう少し工夫してもらえると、客は質の高いシェフの料理を、より美味しく楽しめるかなと思っていました。

グラス白ワイン:Stefan Vetter(ドイツ) シルヴァネール 2016
鰺のマリネには、ドイツのシルヴァネールを使ったワインを合わせてくれました。青リンゴの香りがして、サッパリ、すっきりします。


三条市五十嵐川産天然鮎のフラン 鮎の身入り ツキノワグマのラルド

鮎の一夜干し 鮎の内臓のパテ セロリの新芽
鮎のフランは優しいお味です。生の肉を三連続で味わっていた舌はこの変化を待っていました。普通に旨いです。また、鮎の一夜干しは、当たり前ですが、旨味が凝縮されています。ハーブの香りが良いアクセントになっていました。
ただ、天然鮎の食べ方として、どうしても変化球になってしまうと感じていて、塩焼きより美味しいかというと、どうかなと思ってしまいます。この時期の鮎なので、塩焼きよりは加工した方が美味しく食べられるというのもあったかもしれませんが。

グラス日本酒:加茂鶴 秋田酒こまち 純米大吟醸(精米歩合50%) VINTAGE2018
このお料理にはワインではなく、新潟の地酒(日本酒)が提案されました。こちらは注目されている若い杜氏の造るお酒とのことでした。フルーティーでありつつ力強さもある素晴らしい酒でした。少し甘さも感じられました。


ツキノワグマ薄切り肉のしゃぶしゃぶ 天然本占地 魚沼産蕎麦粉のそばがきキューブ ネギのスプラウトと蕎麦の実 山椒 米のパフ
天然本占地の香りすごく、ジビエのコンソメもたまらなく旨いです。そばがきも香っています。天然茸、肉とコンソメ、その他が一体となって優しい味が出ていて、スルスルと体に吸収されていきます。色々なものから体や心を回復させてくれる力を感じます。香りがすごいですし、お皿全体で挑んでくるすごいお料理で、こんなお料理を出せるのが奇跡に近いと感じていました。

グラス赤ワイン:Julia Bertram(ドイツ) シュペートブルグンダー(ピノノワール) 2016
ドイツの人気女性醸造家が造るシュペートブルグンダー(ピノノワール)がこちらに合わせられました。高知の「balloon」で頂いた、オボンクリマの香り高さにはかなわないですが、美味しく頂きました。黒胡椒のテーストが感じられました。


10日間熟成のマハタの薪焼き 発酵トマトエキスと蕗の薹のピクルス入りクリームソース ハーブオイル 焼き長茄子をしいて ツルムラサキの花 ミズの実
しっかり焼いてあるようですが、それでもしっとりしていて、弾力もあり上品な旨みがある白身魚でした。洗練されたたっぷりのクリームソースと合わせられていて、最高に旨かったです。焼いた柔らかい茄子の香りともしっかりマッチしています。
調理法はともかくとしても、食材からして、フランスでは決して出逢えない、まさにここでしか味わえない最高の美味といえるでしょう。今まで食べたトップ3に入る素晴らしい魚料理で圧倒されました。

グラス白ワイン:ドメーヌ・バターフィールド(フランス) AOCサンロマン (シャルドネ) 2018
熟した青リンゴの香りがあって、その香りが心地良い素敵なワインでした。


新潟県ひよころ鶏園産シャモのシャポン(去勢鶏) シャポンの出汁を使ったクリームソース ヤマドリタケモドキ(セップ茸・ポルチーニ茸) マコモダケ
一口を口に入れた瞬間、美味いという感想がまず漏れました。ソースも込みで、骨ごと焼きの入ったお肉の旨味が半端ないです。焼き目の美味しさがたまらないのです。日本のセップ茸もマコモダケも、旨み抜群のソースと共に美味しく頂きました。

グラス赤ワイン:SUSUCARU(イタリア) IGPシチリア 2017
火山で作られているとのことでした。熟したぶどうのニュアンスと酸があり、フルーティーかつ複雑な風味で美味しかったです。



シェフ狩猟猪骨つき薪焼き 二種のお肉(骨付き肉・ハツ) 猪の赤ワインソース(真ん中の大きな円) スパイスやバルサミコ入り味噌ソース(右下の点) 鉄火味噌(粉状) 新潟県産天然舞茸
既にこの段階でお腹は一杯なのですが、美味しいのでお肉が自然と口に、そして体に入ってしまいます。天然舞茸の香りが良くて、歯応えもあって素晴らしいです。
お肉も二種類あり、それぞれに全く違う部位で猪を堪能できて有り難かったですが、個人的にはハツではない脂身がある方がより好みでした。

グラス赤ワイン:ジョヴァンニ・カノニカ(イタリア) パイヤガッロ(特級キュベ) バローロ 2013
バランスがよく美味しいですが、開栓後結構時間が経っている点が気になりました。
お願いしていたペアリングは以上で終わり、デセールに合わせてまた別のデザートワインのペアリングの提案もあるようでしたが、この日は体調を考えてパスしました。次回は万全の体調で臨んで、こちらもお願いしたいと思います。


ラムネのアイスクリーム シャインマスカットのスライス 野草ジンのクリーム 野草ジンのグラニテ
アイスクリームはヨーグルト感があって優しいお味で気に入りました。ここまでずっとお料理を食べてきたので、冷たくて美味しく感じられました。


ババのティラミス風アレンジ コーヒーリキュール漬け マスカルポーネチーズのクリーム入り コーヒーとホワイトチョコのクリームを絞って 佐渡産小木ビオレ(黒無花果)をルバーブのコンフィチュールとあわせてローストにして 長岡加勢牧場産ガンジー牛乳の無花果の香りをまとわせたアイスクリーム
無花果のローストは温かく、優しい味わいで美味しいです。ババは少し液につけすぎの印象でだぼだぼになっていました。これはこれで良いのかもしれませんし、好みが分かれるかもしれません。ただ、個人的にはもう少し浅く漬かっている方が好きでした。アイスクリームは、良い牛乳を使っているのが分かりますし、色々な香りがしていて良いですね。アイスクリームは大好きなので、最後の着地がとてもよい感じになって満足できました。
これでデセールまでが終わり、いよいよ後は食後のお茶と小菓子を残すのみとなりました。食後のお茶はフレッシュハーブティーの用意があり、そちらをお願いします。小菓子は三種提供されました。


食後のお茶:フレッシュハーブティー(ベルベーヌ、パイナップルミント、オレンジミント三種混合)
小菓子(左下から時計回りに):キャラメル、わらび餅、プリン

三条産ブルーベリーのキャラメル
ブルーベリーを使っていることもあってか、当たり前ですが、酸味を感じます。その分キャラメル感は低めでした。

よもぎ使用のわらび餅 ホワイトチョコレート包み
よもぎ餅はやや苦みがあり、とろけます。周りのホワイトチョコが良いコクを出してくれていました。香りは良いままで邪魔していませんでした。

新潟県ひよころ鶏園の平飼い鶏の玉子の濃厚プリン
プリンはもちろん美味しく、濃厚でした。カラメルがやや苦めにしてありました。
今回、ここで久々に本物のフレッシュハーブティーに出会えて嬉しかったです。そして、そのお味の素晴らしいこと。体が自然に受け付けてくれます。個人的には最高の締めでした。
ここでしか味わえないお料理と、クラシックな基本を忠実に駆使して、ここにしかない旬の食材を余すことなく調理して提供して下さるシェフの心意気のようなものを感じることができ、コースはお値段以上の圧倒的な価値をお客さんに提供してくれていると実感できて、また是非近いうちに伺いたいと思わせてくれました。
現代風の軽いタッチの料理が好みの方も、やはり骨太の本物のフランス料理を出されたら美味しくて黙ってしまうと思います。シェフの料理は基本的に修業時代のソースをきちんと作るお料理を提供するものだと思うのですが、新しいプレゼンテーションなどにも敏感に対応しているように感じられましたので、決して古い料理ではないです。
惜しむらくは、この素晴らしい世界を現在は二組にしか提供していない点です。これだけのレベルのお料理でしたら、少なくとも数人のお弟子さんを雇って、20人程度のお客さんに料理を提供されることで、店も客も幸せだと思うのですがいかがでしょうか。もしかしたら弟子を使うと料理の質が落ちることを懸念された上で、お一人で全てやられているのかなと思ったりもしています。
最初に色々と文句のような愚痴を書いてしまって、シェフやお店の方に悪い印象を与えて、目を付けられたくないので、色々と失礼があったらどうか御容赦ください。
次回、また御縁があってこちらのお料理に再会できることを楽しみにしつつ、日々頑張りたいと思います。
(いただいたもの)
ディナーコース(ジビエが提供される上のコース→現在はこのコースのみになったようです。)
(ワインペアリング(通常量))
シャンパンスナック:青唐辛子のジビエ肉の詰め物、猪のリエット、玉ねぎのマカロン、ジビエドッグ
(グラスシャンパーニュ:ヴーヴ・オフレイ(Veuve Aufray) N.M.)
佐渡産ミンク鯨のタルタル
(グラス赤ワイン:ドメーヌ・ショオ(新潟県コバヤシワイナリー) Kaze kaoru カベルネソーヴィニョン100%)
牡丹海老のブイヤベース仕立て
(グラスオレンジワイン:ドメーヌショオ(新潟県コバヤシワイナリー) Jolly Jolly Holiday オレンジワイン デラウェア種)
鯵のマリネの生春巻 各種ハーブとコシヒカリのパフ入り
(グラス白ワイン:Stefan Vetter(ドイツ) シルヴァネール 2016)
三条市五十嵐川産天然鮎のフラン 鮎の身入り ツキノワグマのラルド
鮎の一夜干し 鮎の内臓のパテ セロリの新芽
(グラス日本酒:加茂鶴 秋田酒こまち 純米大吟醸(精米歩合50%) VINTAGE2018)
ツキノワグマ薄切り肉のしゃぶしゃぶ 天然本占地 魚沼産蕎麦粉のそばがきキューブ ネギのスプラウトと蕎麦の実 山椒 米のパフ
(グラス赤ワイン:Julia Bertram(ドイツ) シュペートブルグンダー(ピノノワール) 2016)
10日間熟成のマハタの薪焼き 発酵トマトエキスと蕗の薹のピクルス入りクリームソース ハーブオイル 焼き長茄子をしいて ツルムラサキの花 ミズの実
(グラス白ワイン:ドメーヌ・バターフィールド(フランス) AOCサンロマン (シャルドネ) 2018)
新潟県ひよころ鶏園産シャモのシャポン(去勢鶏) シャポンの出汁を使ったクリームソース ヤマドリタケモドキ(セップ茸・ポルチーニ茸) マコモダケ
(グラス赤ワイン:SUSUCARU(イタリア) IGPシチリア 2017)
シェフ狩猟の猪骨つき薪焼き 二種のお肉(骨付き肉・ハツ) 猪の赤ワインソース(真ん中の大きな円) スパイスやバルサミコ入り味噌ソース(右下の点) 鉄火味噌(粉状) 新潟県産天然舞茸
(グラス赤ワイン:ジョヴァンニ・カノニカ(イタリア) パイヤガッロ(特級キュベ) バローロ 2013)
アヴァンデセール:ラムネのアイスクリーム シャインマスカットのスライス 野草ジンのクリーム 野草ジンのグラニテ
食後のお茶:フレッシュハーブティー(ベルベーヌ、パイナップルミント、オレンジミント三種混合)
小菓子:三条産ブルーベリーのキャラメル、よもぎ使用のわらび餅 ホワイトチョコレート包み、新潟県ひよころ鶏園の平飼い鶏の玉子の濃厚プリン
一宮旅の途上にありながら、その完結前の旅で、ある意味浮気旅だったのですが、諸般の事情により、このタイミングでの旅行となりました。新潟県三条市には緊急事態宣言も、蔓延等防止措置適用も関係なく、時短要請も行われていないことを確認した上でのお出かけでした。
旅程の関係でこちらにはディナーでの訪問となり、東三条駅に宿を取り、歩いてレストランに向かいました。鍋茶屋光琳の店員が、田んぼの真ん中にあるとお話されていましたが、夜の帳が下りてそれも分からないまま、少し遅れ気味だったので急いで店に向かいました。
まだ時間になっていませんでしたが、アプリで見ると最大10分少々は遅れることが予想され、あらかじめ遅れる旨を電話でお伝えしました。するとサービスの方は、シェフに伺いを立てるためでしょうかいったん保留にして、予約時間に開始となっているので急いで下さいというようなことを言ってきます。
お願いした予約時間に遅れる自分が悪いとは思いつつも、サービス担当としてその対応はどうなのだろうといぶかしく思いました。遅れても連絡などしない客が多いでしょうに、連絡が来たことをひとまずよしとしないのか、それくらいの懐の広さがないのかとちょっと不安になりました。客を無用に急がせることで、客が事故や事件に遭遇する心配などはしないのでしょう。
甘えて言うとすれば、お店の模範解答としては、できるだけお急ぎいただけると助かりますが、どうかお気をつけてお越しください、という言葉になるでしょう。事実、これまで遅れそうになったりして電話をした場合に、そういう言葉を掛けていただいた記憶が何度かありました。
道を急ぎながら、期待して店を訪ねるけれど、今日はいい出会いではないのかなと思っていて、御縁がない場所なら、それはそれでしょうがないとは思うのですが、できるだけ残念な体験は少ない方がいい訳で、そんな場所だったらいやだなと着く前から少し気持ちが萎えていました。

お店の外観
漁をし、猟をするシェフのお料理の内容からすると山の中にあるようなイメージがあったのですが、お店は本当に田園のど真ん中にある立地です。
夜なので分かりませんでしたが、民家も広がっている微妙に開けた場所ではあるので、美しい田園風景といった眺望は望めないのかもしれませんが、外に向いたテーブル席のしつらえからすると、お昼の方が光たっぷりで、より楽しく食事ができるのかもしれません。
さて、民家あるいは旅館のような玄関を入るときりっとしたソムリエの男性が遅着をなじることもなく出迎えてくれました。まだお若い印象ですが、お仕事ぶりもしっかりしていて、安心できました。
現在は昼夜とも二組しか受けていないようで、この日はもう一組飲食店関係の方がお二人で来られていて、このソムリエ男性と予約などを受けてくださったソムリエの女性が交互にほぼ同時に両卓にサービスをされていて、時に応じてサービスする相手を変えるという形で進みました。
二組とも同じ内容のコースのようでしたから、シェフとしては同時に同じものを仕上げる方が二度手間にならずに便宜になるのは分かるのですが、夜については特に同時スタートの縛りはどこにも書かれていないのですから、やはり遅れた客についても予約内容通りの食事を提供することになります。そして、結局遅れてもそうして対応するのであれば、お互いに気持ち悪くならないように、サービスを通じて嫌みなどは言わせずに、遅れる連絡をした客にはやはりむしろ感謝を伝える方が、角が立たなくて良いでしょう。
遅れる方が悪いのは分かっていますが、連絡などしないで何十分も平気で遅れるような客も残念ながらいる訳で、そんな中、10分程度の遅れで連絡することをむしろ評価していただきたかったです。
この日は結局夜道を急いだ甲斐もあり、予約より6分遅れてお店に着くことができました。そして、最初の段階からもう一組のお客さんとほぼ同時にお料理が提供されていましたし、遅れるとの電話を受けたサービスの女性にも、シェフにも特に嫌みを言われることもなかったので、こちらとしてもあまり迷惑をかけなかったと思えて、少しほっとしました。

テーブルセッティングとドリンクメニュー
最初に飲物について聞かれます。この日は、昼に和食をしっかり頂いてきたので、お腹の余裕がさほどない状態ではありましたが、お酒については是非ともペアリングを楽しみたいと思っていて、それは予約の段階でシェフにも伝えてありました。
そんなこともあり、少量のペアリングコースもあったものの、通常の量のペアリングでお願いしました。しかしそこはやはり地方の良さで、シャンパンも含めて8杯というペアリングが大変リーズナブルな設定で、嬉しくなります。

グラスシャンパーニュ:ヴーヴ・オフレイ(Veuve Aufray) N.M.
この日はシャンパン用のつきだしとして4種類のスナックが用意されていました。

シャンパンスナック(左下から時計回りに):青唐辛子のジビエ肉の詰め物、猪のリエット、玉ねぎのマカロン、ジビエドッグ
この左下にあるのが、野菜(青唐辛子)を使ったスナックで、他三種とは明らかに異質でした。

甘長唐辛子(青唐辛子)の薪焼き ジビエ肉の詰め物
甘長唐辛子に、自家製チョリソ、ツキノワグマの脂、ラルドをそれぞれ刻んで詰めて、薪で焼いたものです。
お野菜ということでこれから手をつけましたが、正直今一つでした。青唐辛子の濃く苦い味が勝っていて、質が高いはずの各種詰め物の良さが感じられず、何を食べさせたいのかぼやけてしまっていて、挑戦する気持ちは感じられましたが、シャンパンを合わせるスナックとしては成功していませんでした。

玉ねぎのマカロン 自家製生ハム入り
キャラメルオニオンクリーム入りの玉ねぎのマカロンですが、甘いです。そこにまず驚きました。でも、キャラメルが美味しいように、焦がした玉ねぎの甘い餡は香りが良くて美味しく感じられました。これは当たりで、スナックとして成功しています。フォワグラと甘い物を合わす心にも通じます。

新潟県産猪のリエット ハーブのチュイル ナスタチウム
台がおどろおどろしいですが、猪の頭蓋骨とのことです。というわけで、コルク状に仕上げられたリエットでした。滑らかで猪の良い味わいを感じられて楽しかったです。

ジビエドッグ 黒ニンニクのピュレ
最後に温かいこちらの新潟県産の各種ジビエ肉を入れたホットドッグを頂きました。生地はほんのり甘くて、まさにアメリカンドッグです。温かさがあることもあり、美味しく中のお肉を食べることができ、個人的にはシャンパンスナックの中ではこれが一番良かったです。最後に一番美味しいものを口にしたこともあり、これからのお料理に期待がつながりました。
青唐辛子は今一つでしたが、全体として、シャンパンが進む品々で、工夫もあり、盛り付けに遊び心もありで、とても良いスタートでした。


佐渡産ミンク鯨のタルタル
次なるお料理は、ミンク鯨のタルタルです。昆布締めにして、タルタルにしてあります。まさか、新潟の山近くでミンク鯨と御挨拶することになるとは…意外な出会いにまず驚きと喜びがありました。しかも生とは。上には、白いニラの花とシブレットが散らされていて、とてもきれいないでたちです。
以前、「アルケッチァーノ」でアザラシの生肉を頂いたことがありましたが、フレンチでミンク鯨を食べたのはこれが初めてでした。
下に敷かれたナスタチウムを両手で持って、ハンバーガーよろしく葉ごと口にほおばって食べるように言われます。中の具材が右、左にこぼれないようにしてほおばって、三口くらいで食べ終わる感じでした。
ナスタチウムの葉とお肉を一緒に口に入れることもあり、食感が良いですし、香りが良いのですが、この香りは絡められた油のせいでしょうか。ミンク鯨の肉も生肉が優しい味わいで良かったです。燕産黒米のパフの食感が、生肉を食べるに当たってとてもいいアクセントになっていました。
お肉の質が良いのでしょう、美味しい生肉を頂くことができて、満たされました。

グラス赤ワイン:ドメーヌ・ショオ(新潟県コバヤシワイナリー) Kaze kaoru カベルネソーヴィニョン100%
合わせてもらったのは、新潟県ドメーヌ・ショオ(Domaine Chaud)の赤ワインでした。自然な作りで作られたもので、自家栽培のカベルネソーヴィニョン100%使用の「Kaze kaoru(風薫る)」というワインとのことで、やや低温にしての提供でした。
独特の苦みのようなものが感じられ、ミンク鯨の生の赤い肉とはいい相性だったように感じていました。


牡丹海老のブイヤベース仕立て
こちらのスペシャリテで、多くの方が写真を見たことがあるのではないでしょうか。中は、立派な生の牡丹海老で、緋色の衣はゼリーになっていて、身全体をきれいに覆っています。ゼリーは、海老の殻の香りというか、海老感がすごいです。私の想像としては、ブイヤベースという料理名もあいまって、火入れしたものかなと漠然と思っていたので予想が裏切られました。
ただ、ゼリーと下の身を一緒に切ろうとすると、普通のナイフでは切れにくいので、ここでは大げさかもしれませんがラギオールにすべきだと思いました。
また、冷たいお料理にブイヤベースの名前が相応しいかは、頭が硬いかもしれませんが、議論の余地あるかなと思いました。ただ、変化形としては面白いです。
個人的には、生の海鮮が続いたので、少し飽きがきたように感じ、正直なところ、こちらのスペシャリテはすごく美味しいとまでは思えませんでした。風味や食感などを考えると、より深みを感じさせてくれたミンク鯨のタルタルの方が好みでした。

グラスオレンジワイン:ドメーヌショオ(新潟県コバヤシワイナリー) Jolly Jolly Holiday オレンジワイン デラウェア種
先ほどの、ミンク鯨と合わせた赤ワインと同じドメーヌショーの、デラウェア種を用いたオレンジワインを合わせてもらいました。オレンジワインは最近の流行りのようですが、ブイヤベースのゼリーには皮をつけ込んだこのワインの風味がいい感じに合っていたと思います。
さて、このあたりで、ようやくパンの提供が始まりますが、きちんと温めて提供して下さいます。天然酵母を使った、三条とフランスの小麦を半々で用いているというパンで、小さいのですが香りが高くて美味しいパンで、気に入りました。
佐渡バターが添えられますが、新潟県を形取っていて気が利いています。新潟県産のお塩をかけているとのことでした。


鯵のマリネの生春巻 各種ハーブとコシヒカリのパフ入り
シェフ自ら釣ってきた鰺をマリネにして生春巻にしたもので、お皿に運んでから赤紫蘇とプラムのソースをかけてくれました。
生春巻に忍ばされた多彩なハーブの香りが素晴らしいですし、ソースの赤紫蘇もいいアクセントになっています。マリネが優しいので、スルッと口に入っていきます。
ただ、牡丹海老の段階で生物が続いて食傷気味になっていたので、三皿連続となって、口がちょっと疲れてしまっていました。そのあたりの流れをもう少し工夫してもらえると、客は質の高いシェフの料理を、より美味しく楽しめるかなと思っていました。

グラス白ワイン:Stefan Vetter(ドイツ) シルヴァネール 2016
鰺のマリネには、ドイツのシルヴァネールを使ったワインを合わせてくれました。青リンゴの香りがして、サッパリ、すっきりします。


三条市五十嵐川産天然鮎のフラン 鮎の身入り ツキノワグマのラルド

鮎の一夜干し 鮎の内臓のパテ セロリの新芽
鮎のフランは優しいお味です。生の肉を三連続で味わっていた舌はこの変化を待っていました。普通に旨いです。また、鮎の一夜干しは、当たり前ですが、旨味が凝縮されています。ハーブの香りが良いアクセントになっていました。
ただ、天然鮎の食べ方として、どうしても変化球になってしまうと感じていて、塩焼きより美味しいかというと、どうかなと思ってしまいます。この時期の鮎なので、塩焼きよりは加工した方が美味しく食べられるというのもあったかもしれませんが。

グラス日本酒:加茂鶴 秋田酒こまち 純米大吟醸(精米歩合50%) VINTAGE2018
このお料理にはワインではなく、新潟の地酒(日本酒)が提案されました。こちらは注目されている若い杜氏の造るお酒とのことでした。フルーティーでありつつ力強さもある素晴らしい酒でした。少し甘さも感じられました。


ツキノワグマ薄切り肉のしゃぶしゃぶ 天然本占地 魚沼産蕎麦粉のそばがきキューブ ネギのスプラウトと蕎麦の実 山椒 米のパフ
天然本占地の香りすごく、ジビエのコンソメもたまらなく旨いです。そばがきも香っています。天然茸、肉とコンソメ、その他が一体となって優しい味が出ていて、スルスルと体に吸収されていきます。色々なものから体や心を回復させてくれる力を感じます。香りがすごいですし、お皿全体で挑んでくるすごいお料理で、こんなお料理を出せるのが奇跡に近いと感じていました。

グラス赤ワイン:Julia Bertram(ドイツ) シュペートブルグンダー(ピノノワール) 2016
ドイツの人気女性醸造家が造るシュペートブルグンダー(ピノノワール)がこちらに合わせられました。高知の「balloon」で頂いた、オボンクリマの香り高さにはかなわないですが、美味しく頂きました。黒胡椒のテーストが感じられました。


10日間熟成のマハタの薪焼き 発酵トマトエキスと蕗の薹のピクルス入りクリームソース ハーブオイル 焼き長茄子をしいて ツルムラサキの花 ミズの実
しっかり焼いてあるようですが、それでもしっとりしていて、弾力もあり上品な旨みがある白身魚でした。洗練されたたっぷりのクリームソースと合わせられていて、最高に旨かったです。焼いた柔らかい茄子の香りともしっかりマッチしています。
調理法はともかくとしても、食材からして、フランスでは決して出逢えない、まさにここでしか味わえない最高の美味といえるでしょう。今まで食べたトップ3に入る素晴らしい魚料理で圧倒されました。

グラス白ワイン:ドメーヌ・バターフィールド(フランス) AOCサンロマン (シャルドネ) 2018
熟した青リンゴの香りがあって、その香りが心地良い素敵なワインでした。


新潟県ひよころ鶏園産シャモのシャポン(去勢鶏) シャポンの出汁を使ったクリームソース ヤマドリタケモドキ(セップ茸・ポルチーニ茸) マコモダケ
一口を口に入れた瞬間、美味いという感想がまず漏れました。ソースも込みで、骨ごと焼きの入ったお肉の旨味が半端ないです。焼き目の美味しさがたまらないのです。日本のセップ茸もマコモダケも、旨み抜群のソースと共に美味しく頂きました。

グラス赤ワイン:SUSUCARU(イタリア) IGPシチリア 2017
火山で作られているとのことでした。熟したぶどうのニュアンスと酸があり、フルーティーかつ複雑な風味で美味しかったです。



シェフ狩猟猪骨つき薪焼き 二種のお肉(骨付き肉・ハツ) 猪の赤ワインソース(真ん中の大きな円) スパイスやバルサミコ入り味噌ソース(右下の点) 鉄火味噌(粉状) 新潟県産天然舞茸
既にこの段階でお腹は一杯なのですが、美味しいのでお肉が自然と口に、そして体に入ってしまいます。天然舞茸の香りが良くて、歯応えもあって素晴らしいです。
お肉も二種類あり、それぞれに全く違う部位で猪を堪能できて有り難かったですが、個人的にはハツではない脂身がある方がより好みでした。

グラス赤ワイン:ジョヴァンニ・カノニカ(イタリア) パイヤガッロ(特級キュベ) バローロ 2013
バランスがよく美味しいですが、開栓後結構時間が経っている点が気になりました。
お願いしていたペアリングは以上で終わり、デセールに合わせてまた別のデザートワインのペアリングの提案もあるようでしたが、この日は体調を考えてパスしました。次回は万全の体調で臨んで、こちらもお願いしたいと思います。


ラムネのアイスクリーム シャインマスカットのスライス 野草ジンのクリーム 野草ジンのグラニテ
アイスクリームはヨーグルト感があって優しいお味で気に入りました。ここまでずっとお料理を食べてきたので、冷たくて美味しく感じられました。


ババのティラミス風アレンジ コーヒーリキュール漬け マスカルポーネチーズのクリーム入り コーヒーとホワイトチョコのクリームを絞って 佐渡産小木ビオレ(黒無花果)をルバーブのコンフィチュールとあわせてローストにして 長岡加勢牧場産ガンジー牛乳の無花果の香りをまとわせたアイスクリーム
無花果のローストは温かく、優しい味わいで美味しいです。ババは少し液につけすぎの印象でだぼだぼになっていました。これはこれで良いのかもしれませんし、好みが分かれるかもしれません。ただ、個人的にはもう少し浅く漬かっている方が好きでした。アイスクリームは、良い牛乳を使っているのが分かりますし、色々な香りがしていて良いですね。アイスクリームは大好きなので、最後の着地がとてもよい感じになって満足できました。
これでデセールまでが終わり、いよいよ後は食後のお茶と小菓子を残すのみとなりました。食後のお茶はフレッシュハーブティーの用意があり、そちらをお願いします。小菓子は三種提供されました。


食後のお茶:フレッシュハーブティー(ベルベーヌ、パイナップルミント、オレンジミント三種混合)
小菓子(左下から時計回りに):キャラメル、わらび餅、プリン

三条産ブルーベリーのキャラメル
ブルーベリーを使っていることもあってか、当たり前ですが、酸味を感じます。その分キャラメル感は低めでした。

よもぎ使用のわらび餅 ホワイトチョコレート包み
よもぎ餅はやや苦みがあり、とろけます。周りのホワイトチョコが良いコクを出してくれていました。香りは良いままで邪魔していませんでした。

新潟県ひよころ鶏園の平飼い鶏の玉子の濃厚プリン
プリンはもちろん美味しく、濃厚でした。カラメルがやや苦めにしてありました。
今回、ここで久々に本物のフレッシュハーブティーに出会えて嬉しかったです。そして、そのお味の素晴らしいこと。体が自然に受け付けてくれます。個人的には最高の締めでした。
ここでしか味わえないお料理と、クラシックな基本を忠実に駆使して、ここにしかない旬の食材を余すことなく調理して提供して下さるシェフの心意気のようなものを感じることができ、コースはお値段以上の圧倒的な価値をお客さんに提供してくれていると実感できて、また是非近いうちに伺いたいと思わせてくれました。
現代風の軽いタッチの料理が好みの方も、やはり骨太の本物のフランス料理を出されたら美味しくて黙ってしまうと思います。シェフの料理は基本的に修業時代のソースをきちんと作るお料理を提供するものだと思うのですが、新しいプレゼンテーションなどにも敏感に対応しているように感じられましたので、決して古い料理ではないです。
惜しむらくは、この素晴らしい世界を現在は二組にしか提供していない点です。これだけのレベルのお料理でしたら、少なくとも数人のお弟子さんを雇って、20人程度のお客さんに料理を提供されることで、店も客も幸せだと思うのですがいかがでしょうか。もしかしたら弟子を使うと料理の質が落ちることを懸念された上で、お一人で全てやられているのかなと思ったりもしています。
最初に色々と文句のような愚痴を書いてしまって、シェフやお店の方に悪い印象を与えて、目を付けられたくないので、色々と失礼があったらどうか御容赦ください。
次回、また御縁があってこちらのお料理に再会できることを楽しみにしつつ、日々頑張りたいと思います。
(いただいたもの)
ディナーコース(ジビエが提供される上のコース→現在はこのコースのみになったようです。)
(ワインペアリング(通常量))
シャンパンスナック:青唐辛子のジビエ肉の詰め物、猪のリエット、玉ねぎのマカロン、ジビエドッグ
(グラスシャンパーニュ:ヴーヴ・オフレイ(Veuve Aufray) N.M.)
佐渡産ミンク鯨のタルタル
(グラス赤ワイン:ドメーヌ・ショオ(新潟県コバヤシワイナリー) Kaze kaoru カベルネソーヴィニョン100%)
牡丹海老のブイヤベース仕立て
(グラスオレンジワイン:ドメーヌショオ(新潟県コバヤシワイナリー) Jolly Jolly Holiday オレンジワイン デラウェア種)
鯵のマリネの生春巻 各種ハーブとコシヒカリのパフ入り
(グラス白ワイン:Stefan Vetter(ドイツ) シルヴァネール 2016)
三条市五十嵐川産天然鮎のフラン 鮎の身入り ツキノワグマのラルド
鮎の一夜干し 鮎の内臓のパテ セロリの新芽
(グラス日本酒:加茂鶴 秋田酒こまち 純米大吟醸(精米歩合50%) VINTAGE2018)
ツキノワグマ薄切り肉のしゃぶしゃぶ 天然本占地 魚沼産蕎麦粉のそばがきキューブ ネギのスプラウトと蕎麦の実 山椒 米のパフ
(グラス赤ワイン:Julia Bertram(ドイツ) シュペートブルグンダー(ピノノワール) 2016)
10日間熟成のマハタの薪焼き 発酵トマトエキスと蕗の薹のピクルス入りクリームソース ハーブオイル 焼き長茄子をしいて ツルムラサキの花 ミズの実
(グラス白ワイン:ドメーヌ・バターフィールド(フランス) AOCサンロマン (シャルドネ) 2018)
新潟県ひよころ鶏園産シャモのシャポン(去勢鶏) シャポンの出汁を使ったクリームソース ヤマドリタケモドキ(セップ茸・ポルチーニ茸) マコモダケ
(グラス赤ワイン:SUSUCARU(イタリア) IGPシチリア 2017)
シェフ狩猟の猪骨つき薪焼き 二種のお肉(骨付き肉・ハツ) 猪の赤ワインソース(真ん中の大きな円) スパイスやバルサミコ入り味噌ソース(右下の点) 鉄火味噌(粉状) 新潟県産天然舞茸
(グラス赤ワイン:ジョヴァンニ・カノニカ(イタリア) パイヤガッロ(特級キュベ) バローロ 2013)
アヴァンデセール:ラムネのアイスクリーム シャインマスカットのスライス 野草ジンのクリーム 野草ジンのグラニテ
食後のお茶:フレッシュハーブティー(ベルベーヌ、パイナップルミント、オレンジミント三種混合)
小菓子:三条産ブルーベリーのキャラメル、よもぎ使用のわらび餅 ホワイトチョコレート包み、新潟県ひよころ鶏園の平飼い鶏の玉子の濃厚プリン
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