レストラン訪問記:和歌山市「オテル・ド・ヨシノ」(★)

レストランが入る和歌山ビッグ愛
レストラン訪問記は現在、和歌山市内の割烹店「八百亀」で終わっていますが、和歌山訪問が和食一店で終わるわけもなく、三社ある紀伊国一宮を訪れる道すがら、帰り際にこちらでフランス料理を頂いてきました。今年発刊の特別版では一つ星がついています。
以前から、ブログ読者様等を通じて高名は伺っていましたが、なかなか行く機会に恵まれず、ようやく今回初めての訪問となりました。

レストランのある12階からの眺め(和歌山城を望む)
サービスはフランクで気持ち良く、お料理はクラシックでありながら重さは感じさせず、とても美味しいお料理でした。
ここは、店名通り吉野建シェフのお料理を提供することを謳っているお店ではありますが、エグゼクティブシェフの手島シェフにかなりの権限があるように感じましたので、実質は吉野氏の看板で、手島シェフの個性的が感じられるお料理が味わえるお店だと思いました。
お店と同業(飲食業)のお客さんが多い印象だったお客さん方も、それ(手島シェフのお料理)目当てで来店されているように勝手に感じていました。

お店の入口

サルへの通路(左手が和歌山市街。ミシュランの星獲得を祝う胡蝶蘭が並びます。)

(食後の)サルの様子
いずれにしても、サンパな(感じの良い)サービスも、軽やかな美味しいお料理も、手島シェフの力量によるところが大きいでしょう。
ただ、サービスで一番残念だったのは、お客さんの最初の食前酒やその後のお酒選びをソムリエが最初から統一して対応していない点でした。
フランスだと、ミシュランで星がつくくらいのお店になれば、必ずソムリエがそこを最初から仕切ってくれるので、安心して質問をしつつ、お酒を選んで、これから始まる料理といいタイミングでお酒を提供していただけたものでした。日本でもそうしたオペレーションのお店が多くなっているとは思いますが、こちらはそうではありませんでした。
最初に、ソムリエではないサービスの方が食前酒を聞きに来て、その後ペアリングが希望だった、とその方に伝えると、ソムリエに相談に行って、ソムリエがグラスワインからお勧めを選択して提供するという形になって、後手後手のばたばたした対応と感じられました。それがなんとも残念で、料理を万全の態勢で楽しむということにはならず、そこはがっかりでした。
そもそも、最初の段階で、グラスで飲むか、あるいはペアリングがとしてはこういう形でやっていて、それがいくらかなど、それについて説明する資質があり、客からの質問や要望にその場で応えられるスタッフがそこを受け持たないと、結局しわ寄せが客に行くことになってしまいます。
結論から言うと、ここではペアリングという形での飲料の提供はありません。再度の予約の際に話したのがたまたまソムリエの方で、料理内容が毎日変わることから、そのような提供は難しいと話されていたので間違いありません。
つまりこちらでは、ペアリングはなく、グラスワインとして提供している白、赤とも各二種類ずつほどでしょうか、そこから、ソムリエがこの皿にはこれというのを選んで提供するだけです。
お勘定がグラスワインを単純に積算した形になっていたので、それに気付いた次第でした。そういうやり方であることも含めて説明し、ソムリエがそれをお勧めする理由を説明した上で、何なら客の希望で、別の方のグラスワインをお願いすることを可能にするなどのコミュニケーションの余地を残して欲しかったです。
星をとるということは、そういうサービスも含むものだと勝手に思っていますので、是非次回訪問時までにオペレーションの再構築をお願いしたいと思いました。
色々と文句のような書き方をしましたが、ここのソムリエの方はとても感じが良くて、後半は話す機会が増えて、色々なお話が伺えて楽しかったです。

卓上の様子
さて、ようやくお料理の紹介です。食事はここの定番であるグジェールから始まります。シャンパン用の軽いおつまみですね。

グジェール
(→チーズ濃いめで普通に美味しいです。温めて提供されます。)
シャンパン ボランジェ
(→おそらく封切りでした。強めの泡が心地よいです。)

みのしま産太刀魚 カチョカバロチーズ 銀杏のタルト
(→海と山、温と冷、柔らかいものと硬めのものなど、様々な対比があり面白く、かつ美味しくて気に入りました。和食店ほどの彩りはないものの、秋の実りが感じられる素晴らしい導入でした。)

雉のコンソメ
(→おそらく熱々での提供です。獣の独特な香りがあり、何よりその濃厚さが印象に残ります。)
白ワイン:ジャニエール
(→ペアリングを頼むと、ソムリエのチョイスがこちらでした。飲みたいと思い、最初にお願いしていたワインでしたので合致して良かったです。)



フォアグラとシャラン産鴨のパテアンクルート 鴨のコンソメジュレ レンズ豆のサラダ プルーンのコンフィチュール
(→どっしりとした量と、しっかりした味で抜群です。濃厚な旨味があります。レンズ豆のサラダも、アルデンテで良いですね。今時フランスでも同じようなクラシックなパテはなかなか食べられなくなっているはずです。その意味でも素晴らしい出会いでした。日本で出会える御縁に感謝でした。)


パン:ライ麦パン(細長いもの・丸いもの)
(→パンは全て、温めない提供であるのは残念でした。また、以前読者様から聞いたことがありましたが、バターは脂分がやや少なめなのが残念でした。)


魚料理:和歌山の舌平目 アルベールソース 茄子のチップス 茄子のピューレ シシトウ
(→食材からしてクラシックなお料理です。細かく解れる繊細な舌平目の身とパン粉のまぶしたものがいい味を作り上げています。ソースも本物ですね。付け合わせのなすは、ムースも焼きナスもいずれも美味でした。あえて難を言うとすると、見た目の洗練が感じられないところでしょうか。味は良いですが、茶色い外観はやや美しさに欠けるきらいがあります。また、粉をまぶしているのが良いですが、少しだけむらがあったりして、完璧な調理とはなっていなかったのが残念でした。)

白ワイン:シャブリ プリミエクリュ 2016
(→ブランドテイスティングでは同業者もシャブリとは分からないとのことでした。色が濃いめのせいとのことでした。)


肉料理:和歌山古座川産鹿ロース肉ロース ポワヴラードソース 菊芋 トランペット茸 ジロール茸 ビーツ じゃがいも ベリー
(→蓋付きで登場しました。鹿はフィレ肉かと思いましたが、確認したところ脂身をそぎ落としたロース肉とのことでした。繊細で適度な脂分があり美味です。ソースがごまかしない本物で、濃いめで素晴らしいです。きのこはやや塩が強めでした。菊芋は香ります。わずかなじゃがいもムースにロブションの技を感じられました。)

赤ワイン:AOCサンモン 2010
(→濃厚で良い熟成の素敵なお酒でした。勧めてくれたソムリエ氏に感謝です。)

卓上のお花

アヴァンデセール:海南市黒沢牧場産牛乳のソルベ
(→さっぱりしていて好みでした。)

デセール:無花果尽くし キャラメリゼした無花果 赤ワインと蜂蜜のゼリー 生石高原産山羊乳のアイスクリーム バルサミコソース スパイス香るメレンゲの泡 ローストピスタチオ 凍らせた無花果のスライス
(→山羊のミルクのアイスが良い風味です。無花果尽くしの素敵な一皿でした。)

食後のお茶:ドライハーブティー
(→フレッシュに劣らない香りで良かったです。)

小菓子:カヌレ、パートドフリュイ、ガトーショコラ
(→カヌレはカリカリ感があり良かったです。フランボワーズのパートドフリュイは果実味が濃厚でした。また、ガトーショコラですが、こちらも濃厚で小菓子としては満足以上の品でシャポーでした。)
色々と不満を述べましたが、期待があってこそですので、是非これからも手島シェフの下で、良いお料理を提供していっていただきたいと思います。また近いうちに冬の味覚を楽しみに訪れたいと思っています。
(いただいたもの)
ムニュ セゾン
(→和歌山とフランスの旬の食材を中心に用意するおまかせコースという位置づけです。)
太刀魚のリエット
雉のコンソメ
パテ・アン・クルート
和歌山の舌平目
古座川の鹿
無花果のキャラメリゼ
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