レストラン訪問記:西宮市(甲陽園駅)「子孫」(★★★)
2016年を最後に久しく出ていない兵庫版で三つ星評価の同店ですが、機会があって伺ってきました。お一人様での予約は受けていませんので、二人以上で予定を組む必要があります。
三つ星ともなると期待は高まるもので、寒くなったこの季節に、最初の方に、みぞれにして温かいお椀を出してくれたり、最後の甘味についても温かいお汁粉風のものを出してくれて、心配りが感じられ、そこはさすがと思いました。
ただ、最初の温かい汁物から始まって、総じて良い質のお料理を出していただけた一方で、三つ星に期待する感動や驚きは残念ながらありませんでした。
お昼の一番軽いミニ会席での利用ということだから仕方ないのかなと思ったりもしますが、ランチコースでも素晴らしい料理を出す三つ星はありますので、それを言い訳にはできないでしょう。
最初の白湯というか青紫蘇香煎が出てきて、ついで食前酒という流れでしたが、その後のお料理の数とのバランスからすると、二つもいらないのではと思ってしまいました。風流を解しない客、ということなのかもしれませんが、食前酒だけで良いでしょう。さらにいうと、食前酒は季節の香りを入れるとか、季節柄、燗して提供するとか、の工夫が欲しいところでした。
また、白子豆腐に続いて、お椀にセイコ蟹の真丈と、似たような料理方法のものが出てきて、それもつまらなく、料理人のセンスとしてどうなのだろうと思います。
味が良ければそれでもまだ救われますが、素材を加工するのであれば、素材がもつ良さ(味)以上のものを出さなければ、結局のところ料理人の自己満足に過ぎないと思います。今回の二つの寄せ物は、正直素材の味を引き立てているわけでもなく、単にその食材を使ったというレベルにとどまっていて、正直とびきり美味しいとまでは思えませんでしたし、感動などからはほど遠いかったです。
また八寸がいくつか出てきて、自分たちで取るスタイルでしたが、もう少し種類や量が欲しいところでした。中に、鯛の幽庵焼きがありましたが、今一つ美味しさが感じにくかったです。定番ではないくせ球で、どや、というつもりだったかもしれませんが、幽庵焼きに向く魚、向かない魚があるからこそ、鯛ではない例えば鰆など他の魚の幽庵焼きが有名なのだと思います。高級な魚だから良いだろうという安易な発想で作られた料理のように思えてしまって、こちらでもセンスに疑問を感じました。ただ、八寸の他のお料理はいずれも美味しかったです。

個室から見えるお庭
それから、サービスも気になる点がありました。この日の食事は個室での食事でしたが、渡したコートを預かったり、掛けたりしてくれるのかと思いきや、外側を向けたままたたんで個室の畳の上に普通に放置していきました。これはどうなのかと正直サービスの在り方に疑問を感じざるを得ませんでした。
サービスで良かったのは、最後に店主と奥さんのお見送りがあったことでしょうか。また、お座敷では上げ下げが大変そうでしたが、仲居さん達は丁寧によくやってくださっていたようにも思いました。
お店の真価を知るならミニではないコースで行くべきなのだろうと学びましたが、京都の懐石のレベルなどを思う時、果たしてここに再訪する時間はあるのだろうかと、否定的に思わずにはいられませんでした。
また人に誘われるなどの何かの機会に尋ねた際には当ブログで是非報告させていただきたいと思います。
(いただいたもの)
お昼のミニ会席8800+サービス料20%(個室のため)

青紫蘇香煎と卓上のしつらえ

おしるし(食前酒:わたや(宮城県)特別純米)と先付け:鱈の白子豆腐


お椀:せこ蟹真丈 なめ茸 吹雪仕立て


お造り:スマガツオ アボカド 汲み上げ湯葉のとろろ掛け



しらすとうずらの玉子の温泉玉子 こんにゃくそば

菊菜と大徳寺麩 干しぶどう 胡麻和え

鯖寿司と鯛の幽庵焼きに干し柿
八寸:(左上から時計回りに)しらすとうずらの玉子の温泉玉子 こんにゃくそば、菊菜と大徳寺麩 干しぶどう 胡麻和え、鯖寿司と鯛の幽庵焼きに干し柿


煮物:ぶり大根
(→美しい、にごりのないぶり大根です。ぶり大根を聞いていて、上の皿を開けた瞬間に、頭の中に思い描いているものとの違いが大きく、驚きがありました。美しく、素っ気ない外観に見えますが、しかし味はしっかり洗練された上品ながらも、しっかりとぶり大根のお味で、間違いなく人生一のぶり大根でした。)

お食事1:埋(うず)み豆腐 香の物
(→師走に禅寺の僧侶が食べるものとのことでした。忙しい中、さっと食べられるように、豆腐の上に御飯、お味噌汁を掛けて食べるようになっています。)

お食事2:ちりめん山椒御飯 香の物

デザート1:フルーツ ワインシャーベットがけ
(→何もないより美味しいのですが、生とコンポートが混在していて、舌が混乱するという意味で、素直に美味しいと味わえない面がありました。何も考えずに食材をただ盛り合わせる、食材を加工する、そういう動きをしている時点で三つ星評価に相当するのかと疑問を感じてしまいます。)


デザート2:お汁粉
(→ひえや粟といった雑穀の入ったと思われる歯ごたえの良いお餅がとても美味しいです。また里芋が栗の役割を担うようにして入れられていて、こっくりとした身が体に沁み、とても良い存在感を放っていました。小豆は甘さ控え目に炊かれていて、こちらも抜群に美味しかったです。)

食後のお茶:抹茶
飲み物
・生ビール880+サービス料20%
(→素晴らしく美しい泡でした。)
・日本酒:而今 純米吟醸 グラス1320+サービス料20%
(→やはり華やかさ、フルーティさが素敵なお酒です。先週に続いて而今が飲めるとはなんとも幸せでした。)
三つ星ともなると期待は高まるもので、寒くなったこの季節に、最初の方に、みぞれにして温かいお椀を出してくれたり、最後の甘味についても温かいお汁粉風のものを出してくれて、心配りが感じられ、そこはさすがと思いました。
ただ、最初の温かい汁物から始まって、総じて良い質のお料理を出していただけた一方で、三つ星に期待する感動や驚きは残念ながらありませんでした。
お昼の一番軽いミニ会席での利用ということだから仕方ないのかなと思ったりもしますが、ランチコースでも素晴らしい料理を出す三つ星はありますので、それを言い訳にはできないでしょう。
最初の白湯というか青紫蘇香煎が出てきて、ついで食前酒という流れでしたが、その後のお料理の数とのバランスからすると、二つもいらないのではと思ってしまいました。風流を解しない客、ということなのかもしれませんが、食前酒だけで良いでしょう。さらにいうと、食前酒は季節の香りを入れるとか、季節柄、燗して提供するとか、の工夫が欲しいところでした。
また、白子豆腐に続いて、お椀にセイコ蟹の真丈と、似たような料理方法のものが出てきて、それもつまらなく、料理人のセンスとしてどうなのだろうと思います。
味が良ければそれでもまだ救われますが、素材を加工するのであれば、素材がもつ良さ(味)以上のものを出さなければ、結局のところ料理人の自己満足に過ぎないと思います。今回の二つの寄せ物は、正直素材の味を引き立てているわけでもなく、単にその食材を使ったというレベルにとどまっていて、正直とびきり美味しいとまでは思えませんでしたし、感動などからはほど遠いかったです。
また八寸がいくつか出てきて、自分たちで取るスタイルでしたが、もう少し種類や量が欲しいところでした。中に、鯛の幽庵焼きがありましたが、今一つ美味しさが感じにくかったです。定番ではないくせ球で、どや、というつもりだったかもしれませんが、幽庵焼きに向く魚、向かない魚があるからこそ、鯛ではない例えば鰆など他の魚の幽庵焼きが有名なのだと思います。高級な魚だから良いだろうという安易な発想で作られた料理のように思えてしまって、こちらでもセンスに疑問を感じました。ただ、八寸の他のお料理はいずれも美味しかったです。

個室から見えるお庭
それから、サービスも気になる点がありました。この日の食事は個室での食事でしたが、渡したコートを預かったり、掛けたりしてくれるのかと思いきや、外側を向けたままたたんで個室の畳の上に普通に放置していきました。これはどうなのかと正直サービスの在り方に疑問を感じざるを得ませんでした。
サービスで良かったのは、最後に店主と奥さんのお見送りがあったことでしょうか。また、お座敷では上げ下げが大変そうでしたが、仲居さん達は丁寧によくやってくださっていたようにも思いました。
お店の真価を知るならミニではないコースで行くべきなのだろうと学びましたが、京都の懐石のレベルなどを思う時、果たしてここに再訪する時間はあるのだろうかと、否定的に思わずにはいられませんでした。
また人に誘われるなどの何かの機会に尋ねた際には当ブログで是非報告させていただきたいと思います。
(いただいたもの)
お昼のミニ会席8800+サービス料20%(個室のため)

青紫蘇香煎と卓上のしつらえ

おしるし(食前酒:わたや(宮城県)特別純米)と先付け:鱈の白子豆腐


お椀:せこ蟹真丈 なめ茸 吹雪仕立て


お造り:スマガツオ アボカド 汲み上げ湯葉のとろろ掛け



しらすとうずらの玉子の温泉玉子 こんにゃくそば

菊菜と大徳寺麩 干しぶどう 胡麻和え

鯖寿司と鯛の幽庵焼きに干し柿
八寸:(左上から時計回りに)しらすとうずらの玉子の温泉玉子 こんにゃくそば、菊菜と大徳寺麩 干しぶどう 胡麻和え、鯖寿司と鯛の幽庵焼きに干し柿


煮物:ぶり大根
(→美しい、にごりのないぶり大根です。ぶり大根を聞いていて、上の皿を開けた瞬間に、頭の中に思い描いているものとの違いが大きく、驚きがありました。美しく、素っ気ない外観に見えますが、しかし味はしっかり洗練された上品ながらも、しっかりとぶり大根のお味で、間違いなく人生一のぶり大根でした。)

お食事1:埋(うず)み豆腐 香の物
(→師走に禅寺の僧侶が食べるものとのことでした。忙しい中、さっと食べられるように、豆腐の上に御飯、お味噌汁を掛けて食べるようになっています。)

お食事2:ちりめん山椒御飯 香の物

デザート1:フルーツ ワインシャーベットがけ
(→何もないより美味しいのですが、生とコンポートが混在していて、舌が混乱するという意味で、素直に美味しいと味わえない面がありました。何も考えずに食材をただ盛り合わせる、食材を加工する、そういう動きをしている時点で三つ星評価に相当するのかと疑問を感じてしまいます。)


デザート2:お汁粉
(→ひえや粟といった雑穀の入ったと思われる歯ごたえの良いお餅がとても美味しいです。また里芋が栗の役割を担うようにして入れられていて、こっくりとした身が体に沁み、とても良い存在感を放っていました。小豆は甘さ控え目に炊かれていて、こちらも抜群に美味しかったです。)

食後のお茶:抹茶
飲み物
・生ビール880+サービス料20%
(→素晴らしく美しい泡でした。)
・日本酒:而今 純米吟醸 グラス1320+サービス料20%
(→やはり華やかさ、フルーティさが素敵なお酒です。先週に続いて而今が飲めるとはなんとも幸せでした。)
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