レストラン訪問記:奈良市「而今」(未掲載)
奈良では一応評判が良さそうな和食店にランチ訪問してきました。とはいえ、短い期間にあれよあれよという間にどんどん値上げがされていき、さらにはランチコースが廃止となった上、ランチ営業も週1と激減して、どんどん敷居が高くなっていった印象のお店で、現在ランチで食事する際も、ディナーと同じ内容の食事を食べることになりますので、他店でいうランチコースは存在していません。

お店の外観
店作りや内装、メニュー構成などうまい具合にまとまっていて、季節の美味しい定番料理をきれいに盛り付けて出してくれている印象で、総合的には満足度は高く、奈良で接待をしようとするならばまず選んで間違いのない場所かなと思いました。
反面、食材にも調理方法にも、料理自体にも店主の個性がほとんど感じられず、悪くいえば、正直つまらないお店なのかな、少し過剰に持ち上げられているかなという印象をもちました。口コミサイトで評価があるからといって、それだけで勝負した気になっている、自分はすごいと思っているなら残念過ぎます。
最近カウンターだけなのに京都の老舗料亭並みの値段を平気でとるようなお店が大増殖している印象ですが、そこで提供されているお料理にどれだけ料理人のきらめきが感じられるか疑問です。
こちらのお店もそれなりのお金を取りますから、それに応じた食材が出てくるのはある意味当たり前のことで、すごい、と驚くには当たらないと思います。それは客が出しているお金に見合った食材を出しているというだけで、それだけでは何もすごくないです。高い値段でいいものが出てくるのは当たり前です。その料理をありがたがっているのは客としてもお人好しすぎるでしょう。その高級食材は客が出しているお金の賜物でしかありません。
高い食材に頼れる分勘が鈍っているとしたら、料理人としては三流でしょう。ここのシェフのお料理にも、正直、才能の煌めき、驚き、感動はほとんどありませんでした。
例えば、最後のピラフは、海老の香りが勝ちすぎてピラフの美味しさなどが全く感じられませんでした。明らかに食材選びに失敗しているという好例でした。先日記事にした天ぷら屋「天徳」のかき揚げで同じ海老が入っていましたが、こちらは海老が主役なので香りが立っていて素材を活かせていた、という対照的な評価になります。
むしろ料金が控え目であり、制約がある中で工夫して、美味しさを追求しているお店の方が店主の志を感じますし、お店としても、客の懐を当てにして高級食材を張り込む、ある意味見栄だけの店よりは遙かにレベルが高いと思わざるをえません。
そう考えると、京都「なかひがし」さんや新潟(三条市)「Uozen」さんの、地元食材へのこだわりや、美味しさを追求したオリジナルなお料理の数々は素晴らしいと改めて思うわけです。
料理に満足しながら悪口を書くのもなんなのですが、あまり面白みを感じないお料理でしたし、それ以外にもちょっとした粗相があって、志が感じられないなと思ってしまってためにどうしても辛口になってしまいます。払うお金が高くなればなるほど、客が求める水準は上がります。そのあたりは、お店をされている方は心得ておいて欲しいところです。
まず入店時に、案内の方が「ご予約のじょるじゅ様です!」、などと叫ぶのですが、辞めて欲しいです。個人情報はどちらかといえば隠していくべき御時世になっています。
また、グラスシャンパンがあるとメニューにあるので、注文したところ、ありませんとの返事、あるいはこちらは口コミサイト上の記載なので店に責任はないかもしれませんが、クレジットカード使用可とありながら使えなかったことがありました。小さなことでしょうが、客にいちいちストレスをかけている時点で、三流店と認定されます。
また、先ほど値段のことを書きましたが、1年くらいの極めて短期間の間にコースの料金が3倍くらいになっていて、途中二度ほど値上げがあったり、ランチコース廃止があったりしたようでした。店主は何をしたいのか。口コミサイトを見て、これなら高くしてもいけると思ったのかも知れませんが、初心を見失っているようにしか思えません。そんなことより、料理人として研鑽して、もっとオリジナルな自分の個性が出たお料理を出せるように精進すべきだったのではないでしょうか。短期間の、何度もの値上げは極めて印象が良くないです。
また、これは放埒な客にも責任がありますが、振る舞い酒を仕事中に飲むのは辞めて欲しかった。常連からの杯で断れないかもしれないですが、その常連以外に対しても料理を提供する責任がある以上は、明らかに仕事の質が落ちるようなことは辞めて欲しいのがその常連以外の全ての客の思いでしょう。飲むなら知らないところで飲んで欲しい。しかしそれでは常連が自分が格好つけているところを周りの客に見せつけられなくて不機嫌になるでしょうから、そうして仕方なくカウンター内で、お礼なんか言いながら飲むことになるのですが、これはとてもとても不愉快でした。
最後に、数少ない良かったお料理を挙げると、海老しんじょうを四角にして揚げて白味噌に入れるのはお椀の味のコクが増して、工夫感じられて良いと思えた唯一のところでした。
また、店員さんはキビキビお仕事していてそれは良いですね。
生からすみ、マナガツオ、フグ白子、松葉蟹など、先日の「すしうえだ」で食べたものが出されていて、旬の高級食材について比べながら学べたのも楽しい体験ではありました。
かなり批判的に書きましたが、それでも高級食材でひとまずは美味しいお料理を提供してくれていますので、最初に書いたように、奈良で人を接待するとなったらまず最初に候補に挙がるお店ではありましょう。ただ、逆に言うと、それ以外の文脈ではもはや再訪する価値はないお店かなと私は思っています。
(いただいたもの)
コース16500+サービス料5%
生ビール 一番絞り中800
(→普通の泡でした。とびきりのなめらかさはない点で、店のレベルが低い方向へ評価されてしまいます。もっときれいな泡を提供しているお店はいくらもあります。)

食前酒から:柚子酒

先付け:鳥取松葉蟹 京都筍 長芋 木の芽 菜の花
(→蟹が甘くて香りが濃厚です。単純に美味いです。冬と春の出会いものでした。)


お椀:白味噌椀 花びらもち仕立て 揚げ海老真薯
(お酒)而今 特別純米 1合1500



お造り:フグぶつ はりいかと北海道産うに 鰤
(→はりいかのねっとり感が素晴らしいです。うにはなくても良いかと思いました。予算消化の構成でしょうか。ふぐは食感を楽しむものですね。至って普通です。鰤も美味しいですが普通です。)


お凌ぎ:鯖寿司 炙り
(→自分で巻いて食べます。ほとんど酢で締めていません。脂の旨味が爆発しました。素晴らしい美味しさです。日本酒が親友ですね。人生最高の鯖寿司でした。)

八寸
さごし昆布巻き(→昆布の香りが強いです。やや塩が濃いめでした。)
田作り(→香りが良いです。)
なまこ(→これもふぐ同様歯応え楽しむものでした。)
鴨(→作り立てでふんわりしています。淡白だがお肉が香って美味しいです。)
黒豆(→ふんわり優しい炊き加減で甘いです。)
柿(→チーズが良い香りのアクセントですが、ありきたりかもしれません。)
炙りの生からすみ(→ねっとり濃厚に炙りの香りで素晴らしい酒の肴でした。焼き生たらこに通じます。贅沢です。)
(お酒)八仙 純米芳醇超辛 半合800程度?
(→辛口!而今より香りが落ちますが、食中酒としてはこれで充分でした。)

焼き物:マナガツオ幽庵焼き
(→上品な脂が乗っていて、幽庵の具合も良くて美味です。繊細な美味しさでした。)


椀物:蕪蒸し 愛媛産(又は長崎産)白甘鯛 ふぐ白子
(→焼いたふぐ白子がクリーミーで美味です。「すしうえだ」よりこちらの方が美味しさ引き出している感じがしました。とにかく繊細な餡で、白甘鯛の繊細な蕪蒸し美味しくいただけました。)

お食事:明石かわつえびの海老ピラフ 香の物 味噌汁
(→本文にも書きましたが、海老の香りがやや濃すぎました。ピラフにするには個性がやや強いかも。こういうバランスの悪い料理を一つでも出されると、味のセンスがないと感じてしまいます。おかわりありましたが、海老は入っていませんでした。)

水菓子:蜜柑ゼリー 苺
(→シンプルに見えて、実は手が込んでいて、そこは良いですね。苺のへたへの処理も、食べ手のことを考えてくれていて良かったです。)

お抹茶とお汁粉

お店の外観
店作りや内装、メニュー構成などうまい具合にまとまっていて、季節の美味しい定番料理をきれいに盛り付けて出してくれている印象で、総合的には満足度は高く、奈良で接待をしようとするならばまず選んで間違いのない場所かなと思いました。
反面、食材にも調理方法にも、料理自体にも店主の個性がほとんど感じられず、悪くいえば、正直つまらないお店なのかな、少し過剰に持ち上げられているかなという印象をもちました。口コミサイトで評価があるからといって、それだけで勝負した気になっている、自分はすごいと思っているなら残念過ぎます。
最近カウンターだけなのに京都の老舗料亭並みの値段を平気でとるようなお店が大増殖している印象ですが、そこで提供されているお料理にどれだけ料理人のきらめきが感じられるか疑問です。
こちらのお店もそれなりのお金を取りますから、それに応じた食材が出てくるのはある意味当たり前のことで、すごい、と驚くには当たらないと思います。それは客が出しているお金に見合った食材を出しているというだけで、それだけでは何もすごくないです。高い値段でいいものが出てくるのは当たり前です。その料理をありがたがっているのは客としてもお人好しすぎるでしょう。その高級食材は客が出しているお金の賜物でしかありません。
高い食材に頼れる分勘が鈍っているとしたら、料理人としては三流でしょう。ここのシェフのお料理にも、正直、才能の煌めき、驚き、感動はほとんどありませんでした。
例えば、最後のピラフは、海老の香りが勝ちすぎてピラフの美味しさなどが全く感じられませんでした。明らかに食材選びに失敗しているという好例でした。先日記事にした天ぷら屋「天徳」のかき揚げで同じ海老が入っていましたが、こちらは海老が主役なので香りが立っていて素材を活かせていた、という対照的な評価になります。
むしろ料金が控え目であり、制約がある中で工夫して、美味しさを追求しているお店の方が店主の志を感じますし、お店としても、客の懐を当てにして高級食材を張り込む、ある意味見栄だけの店よりは遙かにレベルが高いと思わざるをえません。
そう考えると、京都「なかひがし」さんや新潟(三条市)「Uozen」さんの、地元食材へのこだわりや、美味しさを追求したオリジナルなお料理の数々は素晴らしいと改めて思うわけです。
料理に満足しながら悪口を書くのもなんなのですが、あまり面白みを感じないお料理でしたし、それ以外にもちょっとした粗相があって、志が感じられないなと思ってしまってためにどうしても辛口になってしまいます。払うお金が高くなればなるほど、客が求める水準は上がります。そのあたりは、お店をされている方は心得ておいて欲しいところです。
まず入店時に、案内の方が「ご予約のじょるじゅ様です!」、などと叫ぶのですが、辞めて欲しいです。個人情報はどちらかといえば隠していくべき御時世になっています。
また、グラスシャンパンがあるとメニューにあるので、注文したところ、ありませんとの返事、あるいはこちらは口コミサイト上の記載なので店に責任はないかもしれませんが、クレジットカード使用可とありながら使えなかったことがありました。小さなことでしょうが、客にいちいちストレスをかけている時点で、三流店と認定されます。
また、先ほど値段のことを書きましたが、1年くらいの極めて短期間の間にコースの料金が3倍くらいになっていて、途中二度ほど値上げがあったり、ランチコース廃止があったりしたようでした。店主は何をしたいのか。口コミサイトを見て、これなら高くしてもいけると思ったのかも知れませんが、初心を見失っているようにしか思えません。そんなことより、料理人として研鑽して、もっとオリジナルな自分の個性が出たお料理を出せるように精進すべきだったのではないでしょうか。短期間の、何度もの値上げは極めて印象が良くないです。
また、これは放埒な客にも責任がありますが、振る舞い酒を仕事中に飲むのは辞めて欲しかった。常連からの杯で断れないかもしれないですが、その常連以外に対しても料理を提供する責任がある以上は、明らかに仕事の質が落ちるようなことは辞めて欲しいのがその常連以外の全ての客の思いでしょう。飲むなら知らないところで飲んで欲しい。しかしそれでは常連が自分が格好つけているところを周りの客に見せつけられなくて不機嫌になるでしょうから、そうして仕方なくカウンター内で、お礼なんか言いながら飲むことになるのですが、これはとてもとても不愉快でした。
最後に、数少ない良かったお料理を挙げると、海老しんじょうを四角にして揚げて白味噌に入れるのはお椀の味のコクが増して、工夫感じられて良いと思えた唯一のところでした。
また、店員さんはキビキビお仕事していてそれは良いですね。
生からすみ、マナガツオ、フグ白子、松葉蟹など、先日の「すしうえだ」で食べたものが出されていて、旬の高級食材について比べながら学べたのも楽しい体験ではありました。
かなり批判的に書きましたが、それでも高級食材でひとまずは美味しいお料理を提供してくれていますので、最初に書いたように、奈良で人を接待するとなったらまず最初に候補に挙がるお店ではありましょう。ただ、逆に言うと、それ以外の文脈ではもはや再訪する価値はないお店かなと私は思っています。
(いただいたもの)
コース16500+サービス料5%
生ビール 一番絞り中800
(→普通の泡でした。とびきりのなめらかさはない点で、店のレベルが低い方向へ評価されてしまいます。もっときれいな泡を提供しているお店はいくらもあります。)

食前酒から:柚子酒

先付け:鳥取松葉蟹 京都筍 長芋 木の芽 菜の花
(→蟹が甘くて香りが濃厚です。単純に美味いです。冬と春の出会いものでした。)


お椀:白味噌椀 花びらもち仕立て 揚げ海老真薯
(お酒)而今 特別純米 1合1500



お造り:フグぶつ はりいかと北海道産うに 鰤
(→はりいかのねっとり感が素晴らしいです。うにはなくても良いかと思いました。予算消化の構成でしょうか。ふぐは食感を楽しむものですね。至って普通です。鰤も美味しいですが普通です。)


お凌ぎ:鯖寿司 炙り
(→自分で巻いて食べます。ほとんど酢で締めていません。脂の旨味が爆発しました。素晴らしい美味しさです。日本酒が親友ですね。人生最高の鯖寿司でした。)

八寸
さごし昆布巻き(→昆布の香りが強いです。やや塩が濃いめでした。)
田作り(→香りが良いです。)
なまこ(→これもふぐ同様歯応え楽しむものでした。)
鴨(→作り立てでふんわりしています。淡白だがお肉が香って美味しいです。)
黒豆(→ふんわり優しい炊き加減で甘いです。)
柿(→チーズが良い香りのアクセントですが、ありきたりかもしれません。)
炙りの生からすみ(→ねっとり濃厚に炙りの香りで素晴らしい酒の肴でした。焼き生たらこに通じます。贅沢です。)
(お酒)八仙 純米芳醇超辛 半合800程度?
(→辛口!而今より香りが落ちますが、食中酒としてはこれで充分でした。)

焼き物:マナガツオ幽庵焼き
(→上品な脂が乗っていて、幽庵の具合も良くて美味です。繊細な美味しさでした。)


椀物:蕪蒸し 愛媛産(又は長崎産)白甘鯛 ふぐ白子
(→焼いたふぐ白子がクリーミーで美味です。「すしうえだ」よりこちらの方が美味しさ引き出している感じがしました。とにかく繊細な餡で、白甘鯛の繊細な蕪蒸し美味しくいただけました。)

お食事:明石かわつえびの海老ピラフ 香の物 味噌汁
(→本文にも書きましたが、海老の香りがやや濃すぎました。ピラフにするには個性がやや強いかも。こういうバランスの悪い料理を一つでも出されると、味のセンスがないと感じてしまいます。おかわりありましたが、海老は入っていませんでした。)

水菓子:蜜柑ゼリー 苺
(→シンプルに見えて、実は手が込んでいて、そこは良いですね。苺のへたへの処理も、食べ手のことを考えてくれていて良かったです。)

お抹茶とお汁粉
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