Pyramide (Vienne) ★★
しばらく日本に戻ることになり、せっかくなので久々のガストロノミーを楽しみにお出かけしてきました。
晴天の空の下、ローヌの渓谷を横目に見ながら鉄道で山下り、そうまずはリヨンを目指します。
グルメな文脈でジュネーブからフランスに出る場合、主に二つのルートがあります。
ジュネーブから南東の方角、山の方に行くルート(サヴォワ地方)と南西の方角から山を下ってリヨンを中心とするローヌ・アルプ地方に出るルートです。
前者は夏の避暑リゾートとしても発達しているシャモニー、スキーリゾートのムジェーブや湖が気持ちのよいアヌシーなどがあり、二つ星、三つ星がごろごろとあるような環境で、地味ながら地元のワインも美味しく、またチーズがとびきりの場所であります。
後者はいわずとしれた美食の町リヨンを中心に郊外にも三つ星のボキューズを筆頭に二つ星クラスが何軒もあるような立地で、フランス有数のグルメ地帯になります。ワインはこの日行ったヴィエンヌあたりからコートゥデュローヌがローヌ側沿いに延々続いているという恵まれた環境です。
さて、前置きが長くなりましたが、この日いったレストランはリヨンではなく、その南方にあるヴィエンヌのピラミッドというお店でした。
かつてかの有名なフェルナン・ポワンがオーナーシェフとして腕を鳴らし、長年三つ星に輝いていたお店です。彼が亡くなってはや五十年が過ぎています。
現在は、パトリック・アンリルー氏がシェフを務め、彼の下でお店の評価は二つ星となっています。
彼は皇居近くのパレスホテルの料理顧問もされているとのことで、年に四回は日本に来られるとのこと。次は日本のコンクールの審査員をするとかで11月上旬に来日とのことでした。
さて、お店はホテルも併設されていて、とてもゴージャスな空間でくつろげます。お店の方の雰囲気もとてもおおらかでやさしく、お客を気持ちよくするサービスを心得ているのがよくわかりました。
今日の食事はテラスにて。ここ数日嵐のせいで晴れていてもテラスでの食事はできなかったようですが、この日は曇り一つない快晴で、自身にとっても久々のテラスでの食事を堪能できました。
こちらは飲み物付きのお昼のコースがとてもお値打ちで、多くの方はそれを頼んでいらっしゃるようでした。私もそちらを選択。他のコースが今ひとつ魅力的には感じず、さりとてアラカルトとなるとさすがにお値段が違ってきますので。
前菜、メイン、デザート各一品をそれぞれ三つほどの選択肢から選べるようになっています。飲み物は、ミネラルウォーター、食後のカフェ、ワイン(一人につきハーフボトル一本分)がコースについてきます。
ワインは地元のコートゥデュローヌ地方のワインの揃えがよく、特にコンドリユーとコートロッティの揃えは圧巻です。
お昼のコースにはさすがにそのクラスのワインはついていませんが(笑)、それでもこの日いただいたハーフのギガルのコートゥデュローヌ(赤)は美味しかったです。日本でもヤマヤなどで買えるくらいメジャーなドメーヌですが、地元だと何故かさらに美味しく感じるものですね。
お昼のコースについているワインの種類はけっこう多く、白七種、ロゼ二種、赤十一種(!)もあります(ハーフがあるもの、フルボトルだけのものなど色々)。
人数が例えば四人ならフルボトル二本分飲めるので、白・赤それぞれ一本ずつを飲んでもいいですし、白・ロゼをハーフにして、残りは赤のフルボトル、など色々な構成が可能になっていますので大勢でいくとさらに楽しめるでしょう。
アペリティフはコースと別会計ですが、クレマンドゥブルゴーニュにオレンジなどの果実を醸したアルコール(オールデュプレ)を加えた、自家製のものをお願いしました。とてもさっぱりしてよかったです。
さらにはコンドリユーと同じセパージュ(ヴィオニエ)からつくる白をグラスで一杯いただき地元のお酒を楽しみました。ヴィオニエのアロマはいつ飲んでも上品で好みです。
肝心のお料理はアミューズのサーモンのムースや前菜として出していただいた鱈、そしてパンなど、やや塩気がきついものが気になりました。
また、プレゼンの仕方が少し古色蒼然とした雰囲気で、新しいアイデアには走っていない感じです。賛否両論あるでしょうが、少し古くさい感じが否めませんでした。
さらにはお料理に繊細さが少し足りない気がして、それも少し残念でした。
そんな中、とても美味しくいただけたのはメインの鴨。

お肉の焼き加減もよかったですし、付け合わせの人参などのお野菜も土の力を感じました。
とはいえ、お料理以上に楽しめたのはチーズでした。

それなりの値段で追加料金を払うことになりますが、とてもレベルが高い揃え方をしているように感じました。地元のものはもちろん、各地方の名産品をそつなく揃えています。
この日はサンマルスラン、ピラミッドという山羊のチーズ(地元)、リヴァロ、ボフォール。どれもとてもフレッシュでいい保存ですが、ボフォールはいつ食べても幸せになれます。
さらにはフロマージュブラン(生チーズ)もあり、デザート感覚でいただいて、フランボワーズのソースをかけてもらいました(写真の奥)。夏らしい一品に大満足でした。
お料理のみのレベルはもしかしたら地方の名店レベル(つまり一つ星)くらいかもしれませんが、お手頃なお昼のコースがあり、気持ちのよい応対、静かで快適なテラスと夏の午餐を楽しむのに条件はしっかり揃っています。ワインやチーズのレベルの高さも相まって、おすすめ出来るお店だとは思います。
シェフのアンリルーさん(なかなかのハンサム)はお昼もご自身で厨房に立っていて、食後には各食卓をあいさつに回っていて大変感じがよいですね。私も握手して、一言二言おしゃべりしました。
パレスホテルとの提携を冒頭で書きましたが、そちらから短期の研修で来られている日本人のサービスの方がいらっしゃって色々とおしゃべりに興じていました。
またそこで、実際にソムリエとして働かれている日本の方もいて、最近の日本人の活躍ぶりに目を見張ったものでした。彼は奥様がフランスの方でビザに問題はないとのこと。さらにはブルゴーニュ、パリと職場をかわりたいとの志をお聞きしました。またどこかでお会い出来るでしょう。
かつては辻静雄さんが何度も訪れたであろうこのグルメの聖地、日本との少なからぬ縁を感じます。近くに寄られた際にはホテルに泊まって地元のワインとともにお食事を楽しまれたらいかがでしょうか。
(この日いただいたもの)
*お昼のコースより(追加と書いてあるものは別途料金がかかります)
アミューズ;四種類

((時計回りに)兎とウイキョウのムース、まぐろのタルタル、メロンのスープ、サーモンのムース)
前菜:鱈(スープドゥポワッソンと)
メイン:鴨の焼き物、蜂蜜風味(かぶと人参添え)
チーズ(追加):サンマルスラン、ピラミッド(地元の山羊のチーズ)、リヴァロ、ボフォール+フロマージュブラン(フランボワーズのソース)
デザート:赤い果実のテリーヌと二種のレモンのシャーベット
食後のお茶:ミントティー(フレッシュ)
ミニャルディーズ
食前酒(追加):自家製カクテル(クレマンドゥブルゴーニュ+オールデュプレ)
グラス白(追加):ヴィオニエのワイン
コースのワイン:ギガルのコートゥデュローヌ(赤)(ハーフボトル)
パン:オリーブのパン、白パン
お水:エヴィアン(500ml)
晴天の空の下、ローヌの渓谷を横目に見ながら鉄道で山下り、そうまずはリヨンを目指します。
グルメな文脈でジュネーブからフランスに出る場合、主に二つのルートがあります。
ジュネーブから南東の方角、山の方に行くルート(サヴォワ地方)と南西の方角から山を下ってリヨンを中心とするローヌ・アルプ地方に出るルートです。
前者は夏の避暑リゾートとしても発達しているシャモニー、スキーリゾートのムジェーブや湖が気持ちのよいアヌシーなどがあり、二つ星、三つ星がごろごろとあるような環境で、地味ながら地元のワインも美味しく、またチーズがとびきりの場所であります。
後者はいわずとしれた美食の町リヨンを中心に郊外にも三つ星のボキューズを筆頭に二つ星クラスが何軒もあるような立地で、フランス有数のグルメ地帯になります。ワインはこの日行ったヴィエンヌあたりからコートゥデュローヌがローヌ側沿いに延々続いているという恵まれた環境です。
さて、前置きが長くなりましたが、この日いったレストランはリヨンではなく、その南方にあるヴィエンヌのピラミッドというお店でした。
かつてかの有名なフェルナン・ポワンがオーナーシェフとして腕を鳴らし、長年三つ星に輝いていたお店です。彼が亡くなってはや五十年が過ぎています。
現在は、パトリック・アンリルー氏がシェフを務め、彼の下でお店の評価は二つ星となっています。
彼は皇居近くのパレスホテルの料理顧問もされているとのことで、年に四回は日本に来られるとのこと。次は日本のコンクールの審査員をするとかで11月上旬に来日とのことでした。
さて、お店はホテルも併設されていて、とてもゴージャスな空間でくつろげます。お店の方の雰囲気もとてもおおらかでやさしく、お客を気持ちよくするサービスを心得ているのがよくわかりました。
今日の食事はテラスにて。ここ数日嵐のせいで晴れていてもテラスでの食事はできなかったようですが、この日は曇り一つない快晴で、自身にとっても久々のテラスでの食事を堪能できました。
こちらは飲み物付きのお昼のコースがとてもお値打ちで、多くの方はそれを頼んでいらっしゃるようでした。私もそちらを選択。他のコースが今ひとつ魅力的には感じず、さりとてアラカルトとなるとさすがにお値段が違ってきますので。
前菜、メイン、デザート各一品をそれぞれ三つほどの選択肢から選べるようになっています。飲み物は、ミネラルウォーター、食後のカフェ、ワイン(一人につきハーフボトル一本分)がコースについてきます。
ワインは地元のコートゥデュローヌ地方のワインの揃えがよく、特にコンドリユーとコートロッティの揃えは圧巻です。
お昼のコースにはさすがにそのクラスのワインはついていませんが(笑)、それでもこの日いただいたハーフのギガルのコートゥデュローヌ(赤)は美味しかったです。日本でもヤマヤなどで買えるくらいメジャーなドメーヌですが、地元だと何故かさらに美味しく感じるものですね。
お昼のコースについているワインの種類はけっこう多く、白七種、ロゼ二種、赤十一種(!)もあります(ハーフがあるもの、フルボトルだけのものなど色々)。
人数が例えば四人ならフルボトル二本分飲めるので、白・赤それぞれ一本ずつを飲んでもいいですし、白・ロゼをハーフにして、残りは赤のフルボトル、など色々な構成が可能になっていますので大勢でいくとさらに楽しめるでしょう。
アペリティフはコースと別会計ですが、クレマンドゥブルゴーニュにオレンジなどの果実を醸したアルコール(オールデュプレ)を加えた、自家製のものをお願いしました。とてもさっぱりしてよかったです。
さらにはコンドリユーと同じセパージュ(ヴィオニエ)からつくる白をグラスで一杯いただき地元のお酒を楽しみました。ヴィオニエのアロマはいつ飲んでも上品で好みです。
肝心のお料理はアミューズのサーモンのムースや前菜として出していただいた鱈、そしてパンなど、やや塩気がきついものが気になりました。
また、プレゼンの仕方が少し古色蒼然とした雰囲気で、新しいアイデアには走っていない感じです。賛否両論あるでしょうが、少し古くさい感じが否めませんでした。
さらにはお料理に繊細さが少し足りない気がして、それも少し残念でした。
そんな中、とても美味しくいただけたのはメインの鴨。

お肉の焼き加減もよかったですし、付け合わせの人参などのお野菜も土の力を感じました。
とはいえ、お料理以上に楽しめたのはチーズでした。

それなりの値段で追加料金を払うことになりますが、とてもレベルが高い揃え方をしているように感じました。地元のものはもちろん、各地方の名産品をそつなく揃えています。
この日はサンマルスラン、ピラミッドという山羊のチーズ(地元)、リヴァロ、ボフォール。どれもとてもフレッシュでいい保存ですが、ボフォールはいつ食べても幸せになれます。
さらにはフロマージュブラン(生チーズ)もあり、デザート感覚でいただいて、フランボワーズのソースをかけてもらいました(写真の奥)。夏らしい一品に大満足でした。
お料理のみのレベルはもしかしたら地方の名店レベル(つまり一つ星)くらいかもしれませんが、お手頃なお昼のコースがあり、気持ちのよい応対、静かで快適なテラスと夏の午餐を楽しむのに条件はしっかり揃っています。ワインやチーズのレベルの高さも相まって、おすすめ出来るお店だとは思います。
シェフのアンリルーさん(なかなかのハンサム)はお昼もご自身で厨房に立っていて、食後には各食卓をあいさつに回っていて大変感じがよいですね。私も握手して、一言二言おしゃべりしました。
パレスホテルとの提携を冒頭で書きましたが、そちらから短期の研修で来られている日本人のサービスの方がいらっしゃって色々とおしゃべりに興じていました。
またそこで、実際にソムリエとして働かれている日本の方もいて、最近の日本人の活躍ぶりに目を見張ったものでした。彼は奥様がフランスの方でビザに問題はないとのこと。さらにはブルゴーニュ、パリと職場をかわりたいとの志をお聞きしました。またどこかでお会い出来るでしょう。
かつては辻静雄さんが何度も訪れたであろうこのグルメの聖地、日本との少なからぬ縁を感じます。近くに寄られた際にはホテルに泊まって地元のワインとともにお食事を楽しまれたらいかがでしょうか。
(この日いただいたもの)
*お昼のコースより(追加と書いてあるものは別途料金がかかります)
アミューズ;四種類

((時計回りに)兎とウイキョウのムース、まぐろのタルタル、メロンのスープ、サーモンのムース)
前菜:鱈(スープドゥポワッソンと)
メイン:鴨の焼き物、蜂蜜風味(かぶと人参添え)
チーズ(追加):サンマルスラン、ピラミッド(地元の山羊のチーズ)、リヴァロ、ボフォール+フロマージュブラン(フランボワーズのソース)
デザート:赤い果実のテリーヌと二種のレモンのシャーベット
食後のお茶:ミントティー(フレッシュ)
ミニャルディーズ
食前酒(追加):自家製カクテル(クレマンドゥブルゴーニュ+オールデュプレ)
グラス白(追加):ヴィオニエのワイン
コースのワイン:ギガルのコートゥデュローヌ(赤)(ハーフボトル)
パン:オリーブのパン、白パン
お水:エヴィアン(500ml)
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