Ryugin** (Tokyo) 龍吟(六本木)★★
ミシュラン東京版が打ち出した「新日本料理」なるジャンルに興味をもちつつ、世界的にも有名店となった和食店へ。
以前、ここの主の山本さんと、彼の同門の奥田さん(銀座「小十」(★★★)の主)との鰻対決をテレビで拝見し、料理に対するひたむきな姿勢に感じるところがあって、いつか是非うかがいたいと思っていました。
素材や料理の質へのこだわりゆえでしょうか、価格設定もまた超一流のお店ゆえ、なかなかうかがう機会もありませんでしたが、ひょんなことからうかがうことができました。
折しも天然鰻が捕れる季節で、この日も期待通り天然大鰻がメニューに載っていました。
奇しくも小十でも鰻をいただき、両方の天然鰻を楽しんだわけですが、軍配は小十に上がるでしょうか。
焼き方は龍吟がとても上手で、皮目がぱりっとしていますが、小十の方が鰻本来のうまみを存分に楽しめたような気がしました。
それから、やはりこちらも「天然」の鮎。ちょうど季節に入っていますね。
天然の鮎を炭火で焼きたてとくれば、美味しくないはずもなく…。たったの二尾でしたが、堪能いたしました。
こちらのこだわりが三つあるとのことで、16センチ未満の鮎を、活きたまま、炭火で焼き上げるとのこと。大きさはこれくらいがちょうどすべてをまるごと食べられる限度だからとのこと。
鮎が泳ぐように配されたプレゼンテーションもまた素敵。写真で見るととても地味な色合いですが、口の中では色々な味が楽しめ、多彩でした。
この二つはとても美味しくいただき、大満足。鰻は琵琶湖の天然もの、鮎は長野のもの。
一方で、期待はずれな面もちらほらと見え、結果的には少し残念な食事だったかもしれません。
全体のコースの流れは和食を意識していて、食材も当然吟味されていると思うのですが、どうも一つ一つのお料理がミニチュアのように思えて、存分に味を楽しむ、という感じではないのです。この違和感はなんでしょう。京都の懐石ではまず感じられないような感覚でした。
また、お料理のピントもぼやけているようで、一番出汁も今ひとつ、朝締めという鱧も味がしません。
この日、山本さんは厨房にいらっしゃらなかったのかな、とも思いました。
おでんを夏に出す意味も…結局その意図も読み取れないまま、手を抜いているのかな?と思いつつ、違和感だけが残りました。
それから、この日は三人席で、折悪しく私が一人だけの方に座ったのですが、二つのテーブルを合わせて作った我々のテーブルのちょうど継ぎ目に私の食べるお料理が置かれる形となり、かなりの段差があったために、皿が傾いた状態で置かれるようになっていました。これはいただけない。
そして、それにまったく気づかないサービス陣、平気で傾いた皿を置いていく神経が理解できませんでした。
3人というイレギュラーな人数でも快適な食事ができるように対処することの方が、卓上の配光に気を遣ったり、イタリア製の椅子を揃えることよりも、ずっとずっと大切なことかと思いますが、いかがでしょう。
また、こうしたお店では店員さんとのやりとりも、一つの楽しみであり、色々と教えてもらうことがとても有益だと思っています。
欧州の一流店では、皿のプレゼンテーション、説明、こちらの質問、回答などひとしきり済んで、食事にかかるといったそれぞれの「間」をも楽しめる環境がありました。
しかし、ここでは一応料理の説明はあるものの、置いたらそそくさとどこかに去ってしまうという風で、こちらが話そうとしてももういない、というとても悲しい状況が一度や二度のことではありませんでした。
店が小さく(あるいは詰め込みすぎで)落ち着いた環境たり得ないというのもあるかも知れませんが、サービス陣の意識が相当に低いと思わずにはいられませんでした。お店の評価に甘んじて客への心配りができなくなる有名店の弊害が見受けられたこと、本当に残念でした。
物事の表面だけを取り繕っていても、本物とはいえないですよね。メニューにやたら書かれた能書きも、かえって有害のような気がしました。自分のアピールを必死にしているように見えてしまいます。
高い値段を出すことだけに意味を見いだす人にはとてもありがたいお店かも知れませんが、和食を純粋に楽しみたいと思われる方なら、避けた方がよいお店かもしれないとすら思いました。
ワインリストが立派な一方で、日本酒はいかにも高そうな黒龍の特別酒(二左右衛門や石田屋など)や十四代などの他、数種類を置くのみと偏りが見られます。このあたりもスノッブな感じがしますね。
それでも、この日いただいた最初の二つの日本酒はどちらも自分好みで、美味しくいただけましたのでよかったです。
陸奥八仙は以前無濾過生原酒を飲んだことがあったためとても重いお酒のイメージでしたが、夏の吟醸はボトルも涼しげな、さわやかで飲みやすい美味しいお酒でした。雪の茅舎は香りがとても華やかなお酒で八仙との違いがくっきりしていて、とても楽しめました。
また、最後にいただいた熊本のシャルドネ。初耳でしたが、樽の効いた好みの味でした。お酒については、最初のヴィンテージシャンパンから始まってとてもいい体験をさせてもらいました。
功罪論じましたが、次回の訪問はあるとしてもおそらく相当先になるでしょう。
東京ではミシュランの権威もさほどではありませんが、ミシュランの二ツ星は少し行き過ぎの感が否めません。日本料理を食したことのない外国人なら、日本料理ってこんなものかと納得してしまうのかもしれませんが。
(いただいたもの)
初鮎月の御献立
・”焼きとうもろこし”の温かな茶碗蒸し仕立て~生のままの”ゴールドラッシュ”を散らして
・北海道産”生うに”と干海老出汁のジュレ~”白ズイキ”と”焼茄子”のさわやかなお浸しを添えて
・引き立て一番出汁への想い~朝〆”鱧”の葛叩き椀~”賀茂茄子揚”をくるんで青柚子と茗荷を散らして
・お造り~・鳴門産”真鰈”・萩の瀬付き鰺・アオリイカ
・シェフ山本 夏のスペシャリテ~”泳がし鮎”の炭火焼 涼しげな演出と共に~”すいか”を使った 龍吟名物”紅蓼酢”を添えて
・ほっと一息~”おでん!?”~日本料理の進化と可能性に優しさを求めて…
(たまご、煮たこ、あわび、とうがん、がんも、牛すじ、だいこん、かにしんじょ)
・シェフ山本 夏のスペシャリテ~全国各地より送られてくる”天然大鰻”の炭火焼
・黒毛和牛”フィレ肉”のパン粉揚げ~温度玉子と共に~本日のご飯 海老の赤出汁 (さらにおそばも)
・龍吟スペシャリテ~-196℃の”桃あめ”と+99℃の”桃のアメ炊き”
・龍吟名物”六本木プリン”
・薄茶
お酒:
・グラスシャンパン:アンリオ1998
・日本酒:陸奥八仙夏の吟醸(生)
・日本酒:雪の茅舎生
・日本酒:春鹿純米
・グラスワイン(白):シャルドネ(熊本)
以前、ここの主の山本さんと、彼の同門の奥田さん(銀座「小十」(★★★)の主)との鰻対決をテレビで拝見し、料理に対するひたむきな姿勢に感じるところがあって、いつか是非うかがいたいと思っていました。
素材や料理の質へのこだわりゆえでしょうか、価格設定もまた超一流のお店ゆえ、なかなかうかがう機会もありませんでしたが、ひょんなことからうかがうことができました。
折しも天然鰻が捕れる季節で、この日も期待通り天然大鰻がメニューに載っていました。
奇しくも小十でも鰻をいただき、両方の天然鰻を楽しんだわけですが、軍配は小十に上がるでしょうか。
焼き方は龍吟がとても上手で、皮目がぱりっとしていますが、小十の方が鰻本来のうまみを存分に楽しめたような気がしました。
それから、やはりこちらも「天然」の鮎。ちょうど季節に入っていますね。
天然の鮎を炭火で焼きたてとくれば、美味しくないはずもなく…。たったの二尾でしたが、堪能いたしました。
こちらのこだわりが三つあるとのことで、16センチ未満の鮎を、活きたまま、炭火で焼き上げるとのこと。大きさはこれくらいがちょうどすべてをまるごと食べられる限度だからとのこと。
鮎が泳ぐように配されたプレゼンテーションもまた素敵。写真で見るととても地味な色合いですが、口の中では色々な味が楽しめ、多彩でした。
この二つはとても美味しくいただき、大満足。鰻は琵琶湖の天然もの、鮎は長野のもの。
一方で、期待はずれな面もちらほらと見え、結果的には少し残念な食事だったかもしれません。
全体のコースの流れは和食を意識していて、食材も当然吟味されていると思うのですが、どうも一つ一つのお料理がミニチュアのように思えて、存分に味を楽しむ、という感じではないのです。この違和感はなんでしょう。京都の懐石ではまず感じられないような感覚でした。
また、お料理のピントもぼやけているようで、一番出汁も今ひとつ、朝締めという鱧も味がしません。
この日、山本さんは厨房にいらっしゃらなかったのかな、とも思いました。
おでんを夏に出す意味も…結局その意図も読み取れないまま、手を抜いているのかな?と思いつつ、違和感だけが残りました。
それから、この日は三人席で、折悪しく私が一人だけの方に座ったのですが、二つのテーブルを合わせて作った我々のテーブルのちょうど継ぎ目に私の食べるお料理が置かれる形となり、かなりの段差があったために、皿が傾いた状態で置かれるようになっていました。これはいただけない。
そして、それにまったく気づかないサービス陣、平気で傾いた皿を置いていく神経が理解できませんでした。
3人というイレギュラーな人数でも快適な食事ができるように対処することの方が、卓上の配光に気を遣ったり、イタリア製の椅子を揃えることよりも、ずっとずっと大切なことかと思いますが、いかがでしょう。
また、こうしたお店では店員さんとのやりとりも、一つの楽しみであり、色々と教えてもらうことがとても有益だと思っています。
欧州の一流店では、皿のプレゼンテーション、説明、こちらの質問、回答などひとしきり済んで、食事にかかるといったそれぞれの「間」をも楽しめる環境がありました。
しかし、ここでは一応料理の説明はあるものの、置いたらそそくさとどこかに去ってしまうという風で、こちらが話そうとしてももういない、というとても悲しい状況が一度や二度のことではありませんでした。
店が小さく(あるいは詰め込みすぎで)落ち着いた環境たり得ないというのもあるかも知れませんが、サービス陣の意識が相当に低いと思わずにはいられませんでした。お店の評価に甘んじて客への心配りができなくなる有名店の弊害が見受けられたこと、本当に残念でした。
物事の表面だけを取り繕っていても、本物とはいえないですよね。メニューにやたら書かれた能書きも、かえって有害のような気がしました。自分のアピールを必死にしているように見えてしまいます。
高い値段を出すことだけに意味を見いだす人にはとてもありがたいお店かも知れませんが、和食を純粋に楽しみたいと思われる方なら、避けた方がよいお店かもしれないとすら思いました。
ワインリストが立派な一方で、日本酒はいかにも高そうな黒龍の特別酒(二左右衛門や石田屋など)や十四代などの他、数種類を置くのみと偏りが見られます。このあたりもスノッブな感じがしますね。
それでも、この日いただいた最初の二つの日本酒はどちらも自分好みで、美味しくいただけましたのでよかったです。
陸奥八仙は以前無濾過生原酒を飲んだことがあったためとても重いお酒のイメージでしたが、夏の吟醸はボトルも涼しげな、さわやかで飲みやすい美味しいお酒でした。雪の茅舎は香りがとても華やかなお酒で八仙との違いがくっきりしていて、とても楽しめました。
また、最後にいただいた熊本のシャルドネ。初耳でしたが、樽の効いた好みの味でした。お酒については、最初のヴィンテージシャンパンから始まってとてもいい体験をさせてもらいました。
功罪論じましたが、次回の訪問はあるとしてもおそらく相当先になるでしょう。
東京ではミシュランの権威もさほどではありませんが、ミシュランの二ツ星は少し行き過ぎの感が否めません。日本料理を食したことのない外国人なら、日本料理ってこんなものかと納得してしまうのかもしれませんが。
(いただいたもの)
初鮎月の御献立
・”焼きとうもろこし”の温かな茶碗蒸し仕立て~生のままの”ゴールドラッシュ”を散らして
・北海道産”生うに”と干海老出汁のジュレ~”白ズイキ”と”焼茄子”のさわやかなお浸しを添えて
・引き立て一番出汁への想い~朝〆”鱧”の葛叩き椀~”賀茂茄子揚”をくるんで青柚子と茗荷を散らして
・お造り~・鳴門産”真鰈”・萩の瀬付き鰺・アオリイカ
・シェフ山本 夏のスペシャリテ~”泳がし鮎”の炭火焼 涼しげな演出と共に~”すいか”を使った 龍吟名物”紅蓼酢”を添えて
・ほっと一息~”おでん!?”~日本料理の進化と可能性に優しさを求めて…
(たまご、煮たこ、あわび、とうがん、がんも、牛すじ、だいこん、かにしんじょ)
・シェフ山本 夏のスペシャリテ~全国各地より送られてくる”天然大鰻”の炭火焼
・黒毛和牛”フィレ肉”のパン粉揚げ~温度玉子と共に~本日のご飯 海老の赤出汁 (さらにおそばも)
・龍吟スペシャリテ~-196℃の”桃あめ”と+99℃の”桃のアメ炊き”
・龍吟名物”六本木プリン”
・薄茶
お酒:
・グラスシャンパン:アンリオ1998
・日本酒:陸奥八仙夏の吟醸(生)
・日本酒:雪の茅舎生
・日本酒:春鹿純米
・グラスワイン(白):シャルドネ(熊本)
龍吟 (懐石・会席料理 / 六本木駅、乃木坂駅、麻布十番駅)
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