ピエール・ガニエール(ANAインターコンチネンタルホテル東京)★★
短い来日期間にシェフのお料理が目当てでお店にうかがってきました。パリでは決してサルに出てこないシェフですが、日本ではご自分のPRも兼ねてかとてもよくサルに出てきて、記念撮影などに応じていらっしゃいました。
今回は氏のお写真をとりませんでしたが、食後のほんのわずかな時間シェフとおしゃべりできて幸せでした。
店内の入口は意表をつくような造りになっていて、脇の小穴から大きな世界に入っていくイメージです。入口にはガニエールシェフの肖像が掲げられていました。
店内はL字型になっていて、今回は奥側のテーブルをいただきました。窓から見える景色は、新橋、愛宕山、お台場方面で、目の前に見えたのは六本木ヒルズではなく愛宕グリーンヒルズ、奥には遠くお台場のテレビ局社屋が見えていました。36階はさすがに高く遠くまで見晴るかすことができますね。
お料理はお昼のコースを無難に選択しました。お魚とお肉二種類のメインが楽しめるコースになります。
こちらでは気を利かせてメニューを頂けるのですが、来日されたシェフが前菜の内容をすっかり一新されたとのことで、記載メニューとは異なったお料理が出てきました。今一番の食材から彼のインスピレーションで作る皿を出して頂けるのですから、それはむしろ歓迎すべきこと。むしろ、そうでなくてはと思います。

右下から時計回りに、紫芋のお料理、ツブ貝とムール貝のマリネ、カンパリのシャーベットの皿、菜の花のピューレになります。
今回印象に残ったのは紫芋と合わせたシャンティー(ホイップした生クリームですね)に山椒がしのばせてあったこと。それから季節が始まっている菜の花のピューレでしょうか。これまでのメニューと共通する食材もあったりして、一部メニューの記載が参考になりました。
前菜の美しさや美味しさ、切れを見て、やはり彼のお料理は活きていると感じます。ただ習ったことを再生産してそれを開陳するのではなく、今使える食材を自分の料理に仕上げていく。その美的な感覚、美味しさの追求について共感できる数少ない三つ星シェフと個人的には思っています。
菜の花の置き方にしても、赤と黒の蕪の薄切りを散らす様にしても、もやしの中心だけを切り取ってジュレと和える出し方にしても、自然の造形や色を活かしながら自分のお料理に仕上げるのが彼の美徳だと改めて感じました。
パリで出されるお料理とは質感がまた違うのですが、それはそれとしてもやはり彼のお料理が好きですね。
お魚料理の手長海老はしっかり火入れしている感じもありますが、おそらくこれが一番美味しい火加減なのでしょう、とても甘味を感じ、気持ちよく歯切れ良く美味しく頂けました。

お肉料理の白金豚の焼き加減はレアでした。わざとこの火入れをしているのでしょう。お昼のメインでもこの美しさ。葉をうまく使って、彩りが豊かです。さらに味はしっかりしていて、とにかく美味しい。さすがです。
ガニエール氏くらいの天才になると、彼のいない支店での料理のパフォーマンスが落ちるのは致し方ないでしょう。その代わり、パリ本店のお料理は圧倒的です。あくまで個人的な嗜好ですが。
ただ東京店の難点を挙げると、サービスの弱さに尽きるのではないでしょうか。フランス人のマキシムさんという方が日本語できちんとサービスをされていて、それはとても気持ちがいいのですが、あまりに人手が少なすぎて孤軍奮闘という感が否めません。
サービスに一切非はないのですが、お皿をもってきたあとの一瞬の間、水をついだときの一瞬の間、それを大切にしていなので、余裕がない印象でした。その間に客は何かしら質問をしたり、ちょっとした会話を楽しんで、リラックスして場に馴染み、さらに食事を楽しめるというもの。
マキシムさんはブラス本店と日本店にいらしたとのことです。彼はもちろんそんなことは承知で、毎度「お楽しみください」とか言ってくださる。でも、もしかしたらフランスのガストロノミーを体験されたことがない方がこのサービスを受けると、うっとおしい、面倒くさいと感じられるのかも知れないと逆に思ったりもして複雑な心境でした。
サルが広めでくつろげる反面、眺望を楽しむ面もあるので、どうしても客もくつろぎすぎる面もあり、緊張感がなくなる傾向があるのかもとも思いました。
この日は、一人お酒に酔って大声でしゃべっている客がいてとても不愉快な思いをしました。フランスではそんな場面に遭遇したことがありません。みな自分の酒量をわきまえてお酒を楽しみ、和やかに会話している感じです。
サービスがせめてあと2倍の人数がいれば、各卓ごとによりケアができて、そういった客の出現もおさえられるだろうにとも思うのでした。

たとえばこの写真、パリの「グランヴェフー」(★★★=訪問当時)ですが、行かれた方はおわかりのように豪奢なサルですが、とても小さい。そんな中にこれだけのびしっと決めたサービスの方がお互いぶつかることもなくてきぱき動いて仕事をされているのです。
人件費その他を考えるときっとあれが限界なのでしょうが、日本の星付きレストランが「他のお店より高くて美味しい」レベルの認識しかされない現実…そんな現実があればこそ、酒に酔って大声を上げるみっともない客も平気で現れてしまう。やはりさみしいです。
その分敷居低めで、素敵なお料理をお値打ちに楽しめているのかもしれませんが、星付店を担われている方々には気に留めていただきたいなあと思うのでした。その点、「ナリサワ」さんはフランスのガストロノミーを提供しようとされている稀有なお店だとやはり一目置いています。
次回訪問は…ガニエール氏の次回来日予定の8月下旬になりましょうか。
(いただいたもの)
メニューアピナック
小前菜5皿:
・ 紫芋と山椒風味のシャンティー
・ 菜の花のピューレ、ラディッシュと黒大根の薄切り
・ グレープフルーツロゼ/柚子/カンパリのソルベと“コロンビーノ”オリーブオイルのアイスクリームと共に
・ ツブ貝とムール貝のポロ葱入りマリネ
・ シャラン産鴨腿肉のコンフィ、林檎とカルヴァドスのジュレ
お魚:フォワグラのガトー仕立てとブロッコリーを覆った手長海老、ソーテルヌを効かせた甲殻類のクリームと冬野菜
(グラス白ワイン(追加料金で):2012年 ジュランソンセック コアペ)
お肉:セージ香る白金豚ロース、そば粉のクレープ、ミニトマトのポワレと茄子のタルティーヌと共に
(グラス赤ワイン(追加料金で):2011年 アルザス ピノノワールレゼルブ トリンバック)
ピエール・ガニエール特選デザート
・ ロールケーキ、赤パプリカのチャツネ、蜜柑/サフランのシャーベット
・ 抹茶のパットダマンド、ほうじ茶のクリーム
・ ショコラガニエール(とろけるチョコレート、アイスにブルーベリーを添えて)
お茶:ハーブティー(ミント)
小菓子:パットドフリュイ、ガナッシュチョコ
(小前菜の一部以外はいただいたメニュー表記に基本的にしたがっています。)
今回は氏のお写真をとりませんでしたが、食後のほんのわずかな時間シェフとおしゃべりできて幸せでした。
店内の入口は意表をつくような造りになっていて、脇の小穴から大きな世界に入っていくイメージです。入口にはガニエールシェフの肖像が掲げられていました。
店内はL字型になっていて、今回は奥側のテーブルをいただきました。窓から見える景色は、新橋、愛宕山、お台場方面で、目の前に見えたのは六本木ヒルズではなく愛宕グリーンヒルズ、奥には遠くお台場のテレビ局社屋が見えていました。36階はさすがに高く遠くまで見晴るかすことができますね。
お料理はお昼のコースを無難に選択しました。お魚とお肉二種類のメインが楽しめるコースになります。
こちらでは気を利かせてメニューを頂けるのですが、来日されたシェフが前菜の内容をすっかり一新されたとのことで、記載メニューとは異なったお料理が出てきました。今一番の食材から彼のインスピレーションで作る皿を出して頂けるのですから、それはむしろ歓迎すべきこと。むしろ、そうでなくてはと思います。

右下から時計回りに、紫芋のお料理、ツブ貝とムール貝のマリネ、カンパリのシャーベットの皿、菜の花のピューレになります。
今回印象に残ったのは紫芋と合わせたシャンティー(ホイップした生クリームですね)に山椒がしのばせてあったこと。それから季節が始まっている菜の花のピューレでしょうか。これまでのメニューと共通する食材もあったりして、一部メニューの記載が参考になりました。
前菜の美しさや美味しさ、切れを見て、やはり彼のお料理は活きていると感じます。ただ習ったことを再生産してそれを開陳するのではなく、今使える食材を自分の料理に仕上げていく。その美的な感覚、美味しさの追求について共感できる数少ない三つ星シェフと個人的には思っています。
菜の花の置き方にしても、赤と黒の蕪の薄切りを散らす様にしても、もやしの中心だけを切り取ってジュレと和える出し方にしても、自然の造形や色を活かしながら自分のお料理に仕上げるのが彼の美徳だと改めて感じました。
パリで出されるお料理とは質感がまた違うのですが、それはそれとしてもやはり彼のお料理が好きですね。
お魚料理の手長海老はしっかり火入れしている感じもありますが、おそらくこれが一番美味しい火加減なのでしょう、とても甘味を感じ、気持ちよく歯切れ良く美味しく頂けました。

お肉料理の白金豚の焼き加減はレアでした。わざとこの火入れをしているのでしょう。お昼のメインでもこの美しさ。葉をうまく使って、彩りが豊かです。さらに味はしっかりしていて、とにかく美味しい。さすがです。
ガニエール氏くらいの天才になると、彼のいない支店での料理のパフォーマンスが落ちるのは致し方ないでしょう。その代わり、パリ本店のお料理は圧倒的です。あくまで個人的な嗜好ですが。
ただ東京店の難点を挙げると、サービスの弱さに尽きるのではないでしょうか。フランス人のマキシムさんという方が日本語できちんとサービスをされていて、それはとても気持ちがいいのですが、あまりに人手が少なすぎて孤軍奮闘という感が否めません。
サービスに一切非はないのですが、お皿をもってきたあとの一瞬の間、水をついだときの一瞬の間、それを大切にしていなので、余裕がない印象でした。その間に客は何かしら質問をしたり、ちょっとした会話を楽しんで、リラックスして場に馴染み、さらに食事を楽しめるというもの。
マキシムさんはブラス本店と日本店にいらしたとのことです。彼はもちろんそんなことは承知で、毎度「お楽しみください」とか言ってくださる。でも、もしかしたらフランスのガストロノミーを体験されたことがない方がこのサービスを受けると、うっとおしい、面倒くさいと感じられるのかも知れないと逆に思ったりもして複雑な心境でした。
サルが広めでくつろげる反面、眺望を楽しむ面もあるので、どうしても客もくつろぎすぎる面もあり、緊張感がなくなる傾向があるのかもとも思いました。
この日は、一人お酒に酔って大声でしゃべっている客がいてとても不愉快な思いをしました。フランスではそんな場面に遭遇したことがありません。みな自分の酒量をわきまえてお酒を楽しみ、和やかに会話している感じです。
サービスがせめてあと2倍の人数がいれば、各卓ごとによりケアができて、そういった客の出現もおさえられるだろうにとも思うのでした。

たとえばこの写真、パリの「グランヴェフー」(★★★=訪問当時)ですが、行かれた方はおわかりのように豪奢なサルですが、とても小さい。そんな中にこれだけのびしっと決めたサービスの方がお互いぶつかることもなくてきぱき動いて仕事をされているのです。
人件費その他を考えるときっとあれが限界なのでしょうが、日本の星付きレストランが「他のお店より高くて美味しい」レベルの認識しかされない現実…そんな現実があればこそ、酒に酔って大声を上げるみっともない客も平気で現れてしまう。やはりさみしいです。
その分敷居低めで、素敵なお料理をお値打ちに楽しめているのかもしれませんが、星付店を担われている方々には気に留めていただきたいなあと思うのでした。その点、「ナリサワ」さんはフランスのガストロノミーを提供しようとされている稀有なお店だとやはり一目置いています。
次回訪問は…ガニエール氏の次回来日予定の8月下旬になりましょうか。
(いただいたもの)
メニューアピナック
小前菜5皿:
・ 紫芋と山椒風味のシャンティー
・ 菜の花のピューレ、ラディッシュと黒大根の薄切り
・ グレープフルーツロゼ/柚子/カンパリのソルベと“コロンビーノ”オリーブオイルのアイスクリームと共に
・ ツブ貝とムール貝のポロ葱入りマリネ
・ シャラン産鴨腿肉のコンフィ、林檎とカルヴァドスのジュレ
お魚:フォワグラのガトー仕立てとブロッコリーを覆った手長海老、ソーテルヌを効かせた甲殻類のクリームと冬野菜
(グラス白ワイン(追加料金で):2012年 ジュランソンセック コアペ)
お肉:セージ香る白金豚ロース、そば粉のクレープ、ミニトマトのポワレと茄子のタルティーヌと共に
(グラス赤ワイン(追加料金で):2011年 アルザス ピノノワールレゼルブ トリンバック)
ピエール・ガニエール特選デザート
・ ロールケーキ、赤パプリカのチャツネ、蜜柑/サフランのシャーベット
・ 抹茶のパットダマンド、ほうじ茶のクリーム
・ ショコラガニエール(とろけるチョコレート、アイスにブルーベリーを添えて)
お茶:ハーブティー(ミント)
小菓子:パットドフリュイ、ガナッシュチョコ
(小前菜の一部以外はいただいたメニュー表記に基本的にしたがっています。)
ピエール・ガニェール (フレンチ / 六本木一丁目駅、溜池山王駅、赤坂駅)
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ジャンル : グルメ