レストラン訪問記:外苑前「アビス」(★)《12/24追記あり》
久しぶりにレストランに行ってきました。二年前にミシュラン東京に初掲載となって最新版でも一つ星を維持された「アビス」というお店です。外苑前駅から西麻布方面に少し歩いた住宅街の一角にあります。

初掲載当時、星付き店ではどのようにメニューを決めていくのかというプロセスを実際のお客さんへの料理提供を素材にして見せるテレビ番組があり、お客さんごとに、食材の好みや、お酒等々5つの基準によって提供するお料理を即興で変更する様子などが描かれていて、ずっと気になっていたお店でした。
たいていのお店は一つのコースがおまかせで決まっていて、せいぜいメインをいくつかの選択肢の中から選べるくらいだと思いますし、運営上、経営上それが普通だとも思うのですが、そうしたきめ細やかな対応ができるところにシェフとしての力量を感じたものでした。
そんなわけでこの日も配られるメニューにはお料理内容の記載はありませんでした。おそらく大体出すお料理は決まっているのでしょうし、お客さんごとにすべてが違うお料理ということはないのでしょうが、それでも必要に応じて微修正が施されたりといったことはあったのではないかと思います。
シェフはまだ30代前半とお若い目黒浩太郎氏ですが、以前見かけたテレビで上述したようにお料理に対するひたむきな姿勢が垣間見られて好印象でした。
マルセイユの三つ星「プティ・ニース」で修業され、帰国後は「カンテサンス」にも勤務されていたようです。
店名はフランス語で「深海」の意味ですが、魚介をメインに提供されるというコンセプトで営業されていて、日本各地いくつかの漁場から直接お魚を仕入れていらっしゃいます。
この日も北海道(いくら、バフンウニ、真鱈の白子)、大分(寒ブリ)、鹿児島(天然真鯛)と各地から届いたお魚が提供されていました。
気候的にも寒くなってきてお魚が美味しい季節になってきたので楽しみに訪問しましたが、期待以上の出会いがあってお値段以上の満足感が得られました。
盛りつけも美しく、お皿ごとに個性が感じられて、コースの流れにも緩急があって、後から振り返ってとなるほどと思ったりしました。冷たいお料理から温かいお料理へ、温かいデザートから冷たいデザートへ、また一口のアミューズ、前菜から少しずつ量の多い前菜、メインへ、など色々な流れがありました。
また調理方法も、メインの魚料理がありきたりの焼き魚ではなく比較的珍しいポシェ(低温での湯引き)だったり、あるいはデザートでは果物(洋梨)をベニェにしたりと、多彩でシェフの技を楽しむのに十分なコースでした。
お食事には焼きたてとおぼしき全粒粉のパンが提供されますが、おともにはバターではなくオリーブオイルが添えられます。温かいうちにいただくパンはそのままでもとても美味しかったです。
この日はアルコールを飲めない日だったのですが、最初に渡されるメニューを見るとグラスワイン5種程の揃えがあるようで、ボトルもミシュランによれば興味深いワインの揃えとのことですから色々あるのでしょう。
またはやりのワインペアリングもあり、4杯で比較的お値頃に提供されていました。ハーフペアリングとして少量で4杯のペアリングがあるのも良心的かもしれません。もちろんお値段は量に応じてさらに控え目な設定になっています。
ワインは魚料理専門店ということもあって白が中心になっているのでしょうが、拝見したテレビではお客さんがフルボディの赤ワインを注文されているシーンもあったので、赤も色々あるのでしょう。
放送では、当初柑橘系のソースを使った真鯛のお料理を予定していたシェフでしたが、フルボディの赤を頼まれたそのお客さんの注文に応じてお料理を変更されて、肉のエキスを使ったソースを使用してカサゴを提供するという展開がありました。料理人の方からすると当たり前のことかも知れませんが、メニュー決定の瞬間を垣間見られてとても興味深い一コマでした。
サービスはメートルドテルとソムリエのお二人でこなされていて、私のテーブル担当のソムリエ氏のサービスは少しむらがあるようにも感じましたが、お料理の説明は懇切丁寧で、その点はとてもよかったです。
うかがった日は平日のランチタイムでしたが結構な人の入りがあって盛況でした。最近はお昼の情報番組「ひるおび」にシェフが出られたりもしているようで、その影響も多少あるようです。
お肉料理がどうしても欲しい方にとっては選択肢に入らない店かもしれませんが、お魚だけでも大丈夫ということであればお勧めしたいと思います。
個人的にも、色々な引き出しがあってセンスを感じるシェフなのでこれからも定期的にうかがえたらと思いました。
(いただいたもの)
ランチコース

飾り皿
アミューズ
いくら 甘い根セロリピューレ 温製
アーモンドオイルがけ
(シェフが自ら鮭をさばいていくらを提供されています。温かい一口のアミューズで根セロリのピューレにはやや甘めの味付けが施されています。)

前菜1
小樽産バフンウニ 姫ネギ
海藻のブリニ
(ほんの一口の大きさですが、小さなナイフ、フォークで切り分けて二口で食べる感じでした。うにはもちろん新鮮で、ブリニは思った以上に海藻が香ります。)

前菜2
大分産寒ブリ
ラディッシュ はこべ
ローストヘーゼルナッツ
白のソース:マスカルポーネ だいだいの香り
黒のソース:オリーブ
(味だけではなく、ヴィジュアルも含めてこの日一番に感じ入った一皿でした。ラディッシュの下にローストしたヘーゼルナッツをまとった生の寒ブリの厚めの切り身が置かれています。寒ブリの脂、ヘーゼルナッツのさくっとした食感、酸味、塩気、甘みと複雑な食感と味、香りのハーモニーが大変快かったです。)

前菜3
北海道産真鱈の白子
マッシュルーム
マッシュルームのピューレ
ムカゴの素揚げ エゴマ
自家製北海道天然キノコのパウダーがけ
(少し塩気が足りない感じがしましたが、白子の味を楽しむためには丁度よい加減ということでしょうか。二つに切り分けてほおばるとなかなか量があることに気づきます。白子は新鮮ですし、処理も丁寧なのでさらっと口の中に溶けていきます。むかごは京都でよくいただくイメージでしたが、思わずフレンチで出会えてうれしかったです。エゴマは今ひとつ存在を感じることができませんでした。)

メイン料理
鹿児島産天然真鯛のポシェ
ナスタチューム コリアンダー バジル プティベールなどのハーブ類を使ったスープソース
ブロッコリー
(低温でしっとりとポシェで仕上げた真鯛ですが、よい真鯛が手に入ったとのことでスープのように仕立てたこのお料理を提供することになったようです。一般的にランチはどうしても値段設定上比較的安価なお魚が使われる印象ですが、天然真鯛をメインに出してくれるところにシェフの心意気、良心を感じました。淡泊なイメージがある白身ですが、天然の真鯛はやはり優しい旨みがつまっている気がします。ハーブを使ったソースも柑橘類でしょうか酸味が効いていてお料理にとてもよいアクセントを与えていたように思います。)

デザート1
レルクチュエ(洋梨)のベニェ
プリンのソース カラメルソース
(運ばれた瞬間、何か理解できないサプライズなデザートでした。洋梨の旨みと水分を保たせつつ、超薄衣のベニェにすることで油分を加えてさらに旨みを加えていて、普段あまり体験できない味覚でした。)
デザート2
チョコとチェリーのデザート
チェリーのアイス
チョコのビスキュイ チェリーのジャム
ホイップクリーム
(デザートが二皿も出てくるのは大変うれしいことです。セオリー通り、果物からチョコレートという流れで提供されました。チェリーのアイスは液体窒素を使ったと思われるクラッシュタイプのアイスでした。もちろん美味しくいただきました。こちらにはすべての写真を載せていませんが、インスタグラムには順次すべての写真を載せる予定です。)

チョコレート(真珠に見立てたホワイトチョコ、パイナップル入り)
食後のお飲み物(フレッシュミントティー)
(ホワイトチョコレートを使った真珠型のチョコレートも美味しくいただきました。ミントのハーブティーはフレッシュのもので、色もきちんと出ていて意識が高いと感じました。)

初掲載当時、星付き店ではどのようにメニューを決めていくのかというプロセスを実際のお客さんへの料理提供を素材にして見せるテレビ番組があり、お客さんごとに、食材の好みや、お酒等々5つの基準によって提供するお料理を即興で変更する様子などが描かれていて、ずっと気になっていたお店でした。
たいていのお店は一つのコースがおまかせで決まっていて、せいぜいメインをいくつかの選択肢の中から選べるくらいだと思いますし、運営上、経営上それが普通だとも思うのですが、そうしたきめ細やかな対応ができるところにシェフとしての力量を感じたものでした。
そんなわけでこの日も配られるメニューにはお料理内容の記載はありませんでした。おそらく大体出すお料理は決まっているのでしょうし、お客さんごとにすべてが違うお料理ということはないのでしょうが、それでも必要に応じて微修正が施されたりといったことはあったのではないかと思います。
シェフはまだ30代前半とお若い目黒浩太郎氏ですが、以前見かけたテレビで上述したようにお料理に対するひたむきな姿勢が垣間見られて好印象でした。
マルセイユの三つ星「プティ・ニース」で修業され、帰国後は「カンテサンス」にも勤務されていたようです。
店名はフランス語で「深海」の意味ですが、魚介をメインに提供されるというコンセプトで営業されていて、日本各地いくつかの漁場から直接お魚を仕入れていらっしゃいます。
この日も北海道(いくら、バフンウニ、真鱈の白子)、大分(寒ブリ)、鹿児島(天然真鯛)と各地から届いたお魚が提供されていました。
気候的にも寒くなってきてお魚が美味しい季節になってきたので楽しみに訪問しましたが、期待以上の出会いがあってお値段以上の満足感が得られました。
盛りつけも美しく、お皿ごとに個性が感じられて、コースの流れにも緩急があって、後から振り返ってとなるほどと思ったりしました。冷たいお料理から温かいお料理へ、温かいデザートから冷たいデザートへ、また一口のアミューズ、前菜から少しずつ量の多い前菜、メインへ、など色々な流れがありました。
また調理方法も、メインの魚料理がありきたりの焼き魚ではなく比較的珍しいポシェ(低温での湯引き)だったり、あるいはデザートでは果物(洋梨)をベニェにしたりと、多彩でシェフの技を楽しむのに十分なコースでした。
お食事には焼きたてとおぼしき全粒粉のパンが提供されますが、おともにはバターではなくオリーブオイルが添えられます。温かいうちにいただくパンはそのままでもとても美味しかったです。
この日はアルコールを飲めない日だったのですが、最初に渡されるメニューを見るとグラスワイン5種程の揃えがあるようで、ボトルもミシュランによれば興味深いワインの揃えとのことですから色々あるのでしょう。
またはやりのワインペアリングもあり、4杯で比較的お値頃に提供されていました。ハーフペアリングとして少量で4杯のペアリングがあるのも良心的かもしれません。もちろんお値段は量に応じてさらに控え目な設定になっています。
ワインは魚料理専門店ということもあって白が中心になっているのでしょうが、拝見したテレビではお客さんがフルボディの赤ワインを注文されているシーンもあったので、赤も色々あるのでしょう。
放送では、当初柑橘系のソースを使った真鯛のお料理を予定していたシェフでしたが、フルボディの赤を頼まれたそのお客さんの注文に応じてお料理を変更されて、肉のエキスを使ったソースを使用してカサゴを提供するという展開がありました。料理人の方からすると当たり前のことかも知れませんが、メニュー決定の瞬間を垣間見られてとても興味深い一コマでした。
サービスはメートルドテルとソムリエのお二人でこなされていて、私のテーブル担当のソムリエ氏のサービスは少しむらがあるようにも感じましたが、お料理の説明は懇切丁寧で、その点はとてもよかったです。
うかがった日は平日のランチタイムでしたが結構な人の入りがあって盛況でした。最近はお昼の情報番組「ひるおび」にシェフが出られたりもしているようで、その影響も多少あるようです。
お肉料理がどうしても欲しい方にとっては選択肢に入らない店かもしれませんが、お魚だけでも大丈夫ということであればお勧めしたいと思います。
個人的にも、色々な引き出しがあってセンスを感じるシェフなのでこれからも定期的にうかがえたらと思いました。
(いただいたもの)
ランチコース

飾り皿
アミューズ
いくら 甘い根セロリピューレ 温製
アーモンドオイルがけ
(シェフが自ら鮭をさばいていくらを提供されています。温かい一口のアミューズで根セロリのピューレにはやや甘めの味付けが施されています。)

前菜1
小樽産バフンウニ 姫ネギ
海藻のブリニ
(ほんの一口の大きさですが、小さなナイフ、フォークで切り分けて二口で食べる感じでした。うにはもちろん新鮮で、ブリニは思った以上に海藻が香ります。)

前菜2
大分産寒ブリ
ラディッシュ はこべ
ローストヘーゼルナッツ
白のソース:マスカルポーネ だいだいの香り
黒のソース:オリーブ
(味だけではなく、ヴィジュアルも含めてこの日一番に感じ入った一皿でした。ラディッシュの下にローストしたヘーゼルナッツをまとった生の寒ブリの厚めの切り身が置かれています。寒ブリの脂、ヘーゼルナッツのさくっとした食感、酸味、塩気、甘みと複雑な食感と味、香りのハーモニーが大変快かったです。)

前菜3
北海道産真鱈の白子
マッシュルーム
マッシュルームのピューレ
ムカゴの素揚げ エゴマ
自家製北海道天然キノコのパウダーがけ
(少し塩気が足りない感じがしましたが、白子の味を楽しむためには丁度よい加減ということでしょうか。二つに切り分けてほおばるとなかなか量があることに気づきます。白子は新鮮ですし、処理も丁寧なのでさらっと口の中に溶けていきます。むかごは京都でよくいただくイメージでしたが、思わずフレンチで出会えてうれしかったです。エゴマは今ひとつ存在を感じることができませんでした。)

メイン料理
鹿児島産天然真鯛のポシェ
ナスタチューム コリアンダー バジル プティベールなどのハーブ類を使ったスープソース
ブロッコリー
(低温でしっとりとポシェで仕上げた真鯛ですが、よい真鯛が手に入ったとのことでスープのように仕立てたこのお料理を提供することになったようです。一般的にランチはどうしても値段設定上比較的安価なお魚が使われる印象ですが、天然真鯛をメインに出してくれるところにシェフの心意気、良心を感じました。淡泊なイメージがある白身ですが、天然の真鯛はやはり優しい旨みがつまっている気がします。ハーブを使ったソースも柑橘類でしょうか酸味が効いていてお料理にとてもよいアクセントを与えていたように思います。)

デザート1
レルクチュエ(洋梨)のベニェ
プリンのソース カラメルソース
(運ばれた瞬間、何か理解できないサプライズなデザートでした。洋梨の旨みと水分を保たせつつ、超薄衣のベニェにすることで油分を加えてさらに旨みを加えていて、普段あまり体験できない味覚でした。)
デザート2
チョコとチェリーのデザート
チェリーのアイス
チョコのビスキュイ チェリーのジャム
ホイップクリーム
(デザートが二皿も出てくるのは大変うれしいことです。セオリー通り、果物からチョコレートという流れで提供されました。チェリーのアイスは液体窒素を使ったと思われるクラッシュタイプのアイスでした。もちろん美味しくいただきました。こちらにはすべての写真を載せていませんが、インスタグラムには順次すべての写真を載せる予定です。)

チョコレート(真珠に見立てたホワイトチョコ、パイナップル入り)
食後のお飲み物(フレッシュミントティー)
(ホワイトチョコレートを使った真珠型のチョコレートも美味しくいただきました。ミントのハーブティーはフレッシュのもので、色もきちんと出ていて意識が高いと感じました。)
- 関連記事
-
- レストラン訪問記:日比谷(帝国ホテル)「レセゾン」(★)
- レストラン訪問記:外苑前「アビス」(★)《12/24追記あり》
- レストラン訪問記:牛込神楽坂「俺のフレンチ KAGURAZAKA」