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料理店訪問記:桜井(奈良県)「味の風にしむら」(★)

ミシュランで見かけて二年ほど前に一度うかがったことがある奈良県桜井市の割烹店に再訪することができました。
ランチでのパフォーマンスの良さに驚き、これは是非夜にもと思い続けてはや二年が経ちようやく今回の訪問となりました。

当時いただいた菊乃井さんの鯛のお造りよりもこちらでいただいたものの方が味が上だった記憶があり、星の数やしつらいで味が決まるわけではないという当たり前のことを再認識したものでした。

今回の訪問も前回とほぼ同じ季節、同じ旬(つまり一週間もずれていない日付)での訪問のため、このお店の定番である柿の胡麻味噌和え、蓮根饅頭に再び出会うことが出来ました。

一通り夜のコースをいただいて感じたのは、店主の西村さんの美味しいものを常に追いかけている姿勢と、丁寧なお仕事ぶり、客へのおもてなしの心といった、料理店としては至極まっとうなものばかりでした。客一人一人との相性等はもちろんあるでしょうが、とても素敵な季節の味に巡り合えるお店であること請け合いです。天然の鰻、天然のすっぽんなどが出ることも季節によってはあるようです。

さて、今回いただいたお料理の中からいくつかピックアップしてご紹介してみたいと思います。

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まずはお椀ですが、吸い地の香り、味の良さはもちろんのこと、お椀の鱧の骨切りのなんとも丁寧なこと、紫ずきん(黒枝豆)を使ったとおぼしき枝豆豆腐は吉野葛のおかげでとても滑らかな舌触りとのどごしで心地よいです。

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お造りでは明石の鯛も二種類(朝締めたもの、二日熟成したもの)出して頂きましたが、この日の主役は自分からすると鰆だったかなと思いました。こちらも明石産とのことで、湯霜にしてあってさらに薬味が一切れごとに丁寧に盛られています。食べ手に最大限配慮したやさしい心遣いがなんともうれしいですね。食べ手は薬味ごとつまんで、塩又は醤油につけて口に運ぶだけです。

そして鰆の美味しさは、口の中にまったり、ねっとりと絡むようで独特の脂身、旨味にありますね。この季節美味しくなる魚とのことで、この滞在中に「祇園にしかわ」さんでも鰆を頂きましたが、「にしかわ」さんでは椀種になっていて、自分としてはお造りの鰆が圧倒的に好みでした。

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焼き物はこの季節よく見かけるカマスがでしたが、一夜干しにした上で胡麻をまぶし脂分を足す工夫をされいてるとのことで、地味でさりげないですが独自性が見られます。自分で食したことはありませんが、パリの三つ星店「ランブロワジ」の手長海老と胡麻をまぶしたチュイルのスペシャリテを思い出したりして、パコーシェフももしかしたら同じ発想で胡麻を使ったのかななどと勝手なことを考えたりしていました。

煮物はなんとも贅沢にふっくらと炊いた明石の鯛のカブトです。シンプルな味付けにほのかな柑橘類の香りで食欲がそそられます。本当にたっぷり入れていただいて、大満足です。

お酒もそうですが、こちらは惜しみなくたっぷりと出してくださるのでその気っぷの良さがまた魅力的ですね。お酒は変わらずとても抑えた値段で提供されています。「黒龍(福井) 龍」など純米大吟醸がリストオンしているのが二年前と比べての変化だったようです。そういえば、このお酒は「にしかわ」さんにもリストオンしていましたが、「にしむら」さんの値付けの方がはるかにやさしかったです。

〆のご飯は松茸ご飯と白米とちりめん山椒の二種類をいただきました。

松茸は残念ながら日本のものではありませんが、価格設定を考えるとそうなるでしょう。ちりめん山椒はここのものが一番口に合うようで、どぎつさは一切なくさらさらと淡泊でありながら、ちりめんの美味しさが存分に楽しめます。製品化してもいいくらいではと思うほどです。まあ、手作りをお店で頂くから美味しいのかも知れませんが。

「にしかわ」さんでもちりめん山椒いただきましたが、少し調味料の強さが勝っているようで、にしむらさんの方がより自然な感じがして好みでした。

そして、この日お椀の鱧の美しさ、鰆の旨味、カマスへの一工夫という技に加え、最後の最後の甘味でまた主の技やこだわりを見ることができて感嘆していました。

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そう、頂いたのは和製モンブランともいうべき小さな生菓子で、とっても細やかな仕事がされているのが素人目に見てもわかります。和食店では甘味はどちらかというと軽く扱われているお店も多い感じがしますが、こちらは最後にさらに力を入れている感じが伝わってきて大変好印象です。

お話を聞くと、ご主人が和菓子など作られるのがとてもお好きとのことでした。和菓子店で買う生菓子といっても作ってから数時間のタイムラグがあることを想定して作られているはずですが、ここでは目の前でせいぜい数分内に食べる前提で作られているので、より細やかに美味しいものが提供できるのでしょう。まさに割烹の醍醐味ですね。

最後に定番のおうす(お昼にも出していただいた記憶が…)をいただき、楽しい食事の時間は終わりとなりました。

今回頂いたのは、二つある夜のコースのうち上のコースでしたが、都会で同じくらいのお店に行ったときよりもやはりリーズナブルにお出しして頂いている印象です。

主の西村さんは美味しいものが大好きなようで、色々なお店に行かれて日々研究に余念がないものとお見受けしました。美味しそうなお店の話を沢山してくださいました。

お仕事があるので関西を離れる機会はあまりなさそうですが、関東にいらっしゃる際には一緒に特上のお寿司を食べにいく話になったりもしました。いつかそんなことも本当に実現できたらうれしいなと思います。

奈良市からさらに近鉄で30分以上かかる場所ですので、なかなかアクセスが不便かも知れませんが、伊勢参りの後や大阪からも行ける場所なので、実は意外と便利なところかもしれません。一度ランチでうかがわれることをお勧めしたいです。近場には、日本三文殊の一つ安倍文殊院や、聖林寺の十一面観音像、長谷寺など実は観光資源も豊富に揃っています。

今度お店の場所を隣の駅に移転されてなかなか素敵な店舗になるようで、また新しいお店にも是非伺いたいと思うのでした。


(いただいたもの)

夜のコース(上)

1. 先付け:柿の胡麻味噌和え
2. お椀:鱧と枝豆豆腐
3. お造り:明石産真鯛二種(朝締めのもの/二日熟成したもの)、明石産鰆の湯霜作り
4. 焼き物:カマス 胡麻まぶし
5. 炊いた物:明石産真鯛カブト
6. お口直し:青森産もずく とろろと大根すりおろし
7. 揚げ物:蓮根饅頭
8. お食事:松茸ご飯/ご飯とちりめん山椒、お味噌汁、香の物
9. 甘味:和製モンブラン?(栗の生菓子)
10. おうす(お抹茶)

(料理名はお店で書かれているものではなく、自己流の表記になります。)

お酒
三諸杉(奈良) ひやおろし 超辛口純米 1合
醴泉(岐阜) 特別純米 半合
松の司(滋賀) 大吟醸 2011 Classic お猪口1杯(味見で)


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Author:VV George VV

La marque "***", "**","*"
signifie des étoiles de
Michelin au moment de la
visite.

長期フランス滞在中、さる”グランドメゾン”(高級料亭)での午餐を契機に”ガストロノミー・フランセーズ”(フランス流美食)に開眼。
爾来、真の美食を求めて東奔西走の日々。

インスタグラム始めました!→https://www.instagram.com/george_gastro/

* お店の名前脇の★はミシュランガイドでの星による評価(訪問時のもの)に対応しています。

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